BBQ!
ゴールデンウィーク二日目。両親(叔父叔母)の提案で、近くの海岸へバーベキューしに行く事になった。
ザザーン、ザザーン……
波のリズムに合わせて、海がキラキラと光っている。快晴であたたかな日差しが心地いい。バーベキュー日和だな。
そして、何よりありがたいのは……人が少ない事!
「
「まあ、海水浴には早すぎるからなあ」
「これが夏になると、人だらけになるんだよね……」
遠浅の砂浜であるこの海岸は、海水浴にもってこい。夏になると人が押し寄せる事で有名なのだが、今は5月。ちらほらバーベキューしに来てる人、釣りを楽しむ人、マリンスポーツを楽しむ人がいる程度で、不快感なく楽しめそうだ。
「それにしても海かあ。迷宮内の海って泳げるのかな?」
「迷宮の海って、魔物が沢山いるんでしょ? そんな場所で泳げるの?」
「いや、魔物が居るのは海岸付近なんだよな。で、海の中はどうなってるか知らないんだ」
今後訪れる階層に、海辺をモチーフにしたエリアがある。ゲームでは海へ入ることは出来なかったが、リアルならどうなんだろ?
うーん、そういえば公式設定資料集に「31~40層は海辺エリア、夏になると学生が海水浴する事があります!」みたいな事を書いていたような気がしなくもないから……(←この上なく曖昧な記憶)
この記憶が正しいなら、海水浴を楽しんだりできるのかも? 機会があれば、調べてみようか。
◆
「さーて、これを運ばないとだな……」
肉と魚、ドリンク類、その他保冷しておきたい物が入ったクーラーボックス。実際に持たなくても、重いだろうと予想がつく。
「風兎、いっつも鍛えてるんだろ? 任せるぞ!」
「はーい」
身体強化を使いたい……! けど、学園外で能力を使うのは厳禁だ。ぶっちゃけ身体強化を使ってもバレないとは思うが……。いや、やっぱり駄目だ。
「よっ! ……お、全然いけるな」
「マジか、やっぱり鍛えてる奴は違うなあ……」
「お兄ちゃん、すごーい!」
「これを、母さんのいる所まで運べばいいんだな?」
「ああ。頼む。気を付けろよ?」
「さて、ここからは火起こしだな」
と言いながら、父さんが新聞紙と炭を運んできた。
「火起こしって意外と難しいよね。なかなか火が炭に燃え移らないし……」
「な。適当に炭と新聞紙を入れたら大変なことになったよな……」
新聞紙が燃えるばかりで、炭に引火しない。すると、火力がすぐに下がるから、新聞紙を追加。これを繰り返すと、大量の燃えカスが舞って惨事が起こるんだ。(具体的には肉が新聞紙の味になる)
「風兎もやるんだぞ? 俺と母さんがこっちで焼くから、風兎と穂香は向こうで火起こしから調理までやるんだ」
え、そうなの? なるほど、だからわざわざバーベキューセットを二つ持ってきたのか。
「でも、父さんの方が上手いし……」
「いや、自分達の分は自分達で用意しろって。それにさ、風兎は今後、魔物の巣の探索中にサバイバルをする機会とかあるんじゃないか? そういう時に備えて練習しておいたらどうだ?」
「……確かにそう言われてみたら」
「そうそう。あ、それならいっそ、風兎はライター無しで火起こししてみたらどうだ? こう……シュシュッと!」
「無理無理。摩擦熱で火を起こす奴、見た目以上に難しいからな」
よく「サバイバルと言えば火種作り!」みたいなイメージがあるけど、あれって想像の一千倍は難しいんだよな。そう考えると、昔の人ってすごいよなあ。
「だろうなあ。でも、そこは身体強化的な能力を駆使して『はぁああああ!』ってやったら火起こしも出来るんじゃないか?」
「学外で能力の使用は厳禁だよ! そもそも能力を使ってもいいなら、火魔法が使える人を連れてくる」
「……確かに」
◆
「どう、二人とも? 上手くいったかしら?」
「おう、ばっちりだ!」
「良い感じだよ!」
「どれどれ……いい感じじゃない~! じゃ、二人でバーベキュー、楽しんでね。あ、肉はしっかり焼くように! 間違っても生焼けのまま食べたらだめよ?」
「「はーい!」」
そう言って母さんはそそくさと去って言った。久しぶりに会う俺達二人に気を使ってくれているのだろうか? なんか照れくさいな。
「何から焼く? 肉? 野菜? 魚介類?」
「やっぱり肉から! でもその前に、乾杯しようぜ」
「いいわね! 飲み物はハンターグレープでいい?」
「んー、うん。そうだな」
「じゃあ、はい」
「お、サンキュー」
「……よし。じゃあ、乾杯しよっか」
「「カンパーイ!」」
ふひー。長い時間、火の前で団扇をパタパタ振ってたから、喉乾いてたんだよなあ~。ああ、炭酸が喉を通り過ぎていくこの感じ、最高~!!
「じゃあ、まずは鶏肉。ゴロっとしてるから、中まで火が通るのに時間がかかりそうだし、ちょっと離れた場所でじっくり温めないと」
「だな。鶏肉と言えばカンピロバクター。食中毒だけは勘弁だ」
そして、それに始まり、いろんな種類の肉を順番に焼いていく。タン、ホルモン、サーロイン。豚バラにソーセージ。いただきまーす!
海鮮はホタテにサザエ、エビ、鮎。うまそ~!
「あ、バターと醤油持って来ればよかったな」
「ふふん、ちゃんと用意してるよ~! ホタテと言えばバター醤油だよね~!」
「ナイス!」
玉ねぎ、トウモロコシ、カボチャといった野菜も調理していく。うん、美味い。なんでこう、屋外で食べる物って何でも美味しく感じるんだろ?
◆
そして夕方。帰りの車で父さんが話しかけてきた。
「今日は楽しかったか?」
「最高に楽しかった! いい思い出になったよ。ありがと!」
「私も、すっごく楽しかった!」
「そっかそっか。それなら良かったよ」
こうして、ゴールデンウィーク二日目は終わった。
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