粉雪ウナギ
(デッカーー!)
神名部さんが使っていた「隠密」をかけたままボスフィールドに入り、少し歩くと巨大で細長い生き物が雪の上で眠っていた。間違いない、粉雪ウナギである。
(先手必勝! アイスランス!)
氷で出来た槍を高速発射する。槍、というよりも
ズササササー!
ウナギはその巨体をねじって、己の敵を探そうとする。しかし、隠密のおかげで俺が見つかる事は無い。再び背後に回って攻撃を仕掛ける。
3回ほどこれを繰り返すと、いい加減ウナギも学習したのか、俺が魔法を準備している最中にぱっと後ろを振り返った。見つかったか!
「うおっと! 毒攻撃か!」
俺の姿を捉えたウナギが使った攻撃は毒攻撃。毒入りの粘液を飛ばしてくる攻撃である。これは自機狙いの攻撃なので、動いていれば当たらない。
ヒョオオオーー!
「吹雪始めた?! シールド!」
毒攻撃があたらないことを察したのか、次の魔法は全体攻撃魔法だ。雪見だいだい同様、吹雪の風上にシールドを張ってやり過ごす必要がある。ただ、それだけじゃないのが、20層の裏ボス。奴は吹雪に紛れて姿を隠していた。そして、吹雪に気を取られているプレイヤーめがけて攻撃を……!
「ま、ゲーム知識と魔力感知があるからな。よゆーよゆー」
風下から急接近し、俺を丸呑みしようと大口を開けて迫ってきた粉雪ウナギの口内に氷魔法を発射する。
――――!
獲物を食べたと思ったら大量の氷だった件ってな。粉雪ウナギは大量の氷を飲み込んでしまい、その冷たさに悶えている。しかも、雪印のブレスレットの効果が上乗せされるので、今頃口の中がキンキンに冷えているだろう。そんな物を丸呑みしてしまったのだから、そりゃあ頭痛だって起きるよな。いわゆる「アイスクリーム頭痛」って奴だ。
その隙に俺は魔法をガンガン飛ばして奴の体力を削っていく。なお、接近して攻撃すると返り血(毒入り)を被ってしまうから、遠距離攻撃一択だ。
――!!
!!
激昂しているウナギ。だが、理性は残っているのか、ズザッと音を立てながら俺から距離を取った。そして、遠距離からランダムな弾幕を発射した。
「ランダム弾幕って苦手なんだよなあ。ま、このくらいなら大丈夫だけどさ」
規則性が無いから、所謂「
弾幕の応酬が続く。ただ、図体が大きい分俺の攻撃があたりやすいようで。奴のの体には多数の傷がついてきた。
――!
バチ!
バチ!
バチ!
バチバチ!!
「うお! 第二形態になったか」
HPが5割を切ったのだろう、第二形態に移行した。
第二形態では、奴は雷を纏うようになる。さらに、通常攻撃も帯電しており、掠っただけで下手したら致命傷になる。より一層、慎重になる必要があるな。
そして、第二形態では新しいモーションが加わる。それが……。
ズザザザザー!
地中に潜って、下から攻撃するという鰻らしい攻撃だ。
ただ、この攻撃は(俺と相対する上では)悪手だ。というのも、地下に潜ると俺から目を離す事になってしまう為、隠密の影響を受けてしまうのだ。
とは言え、このまま俺が気配を消し続けるのは良くない。このままだと、奴は俺の発見を諦めて闇雲に地中から飛び出してくる。そこが運悪く俺のすぐ傍だったら、俺は感電してしまうだろう。しかし、俺の魔力感知の腕前では、地中深くに潜った敵の気配までは察知できない。
そこで使うのが「囮作戦」、俺は魔法で氷を生成し、それを少し離れた場所に向かって放り投げた。
ずしん。
氷塊が地面を打った。
バチバチ!!
一瞬の間をおいて、粉雪ウナギが地上に現れて氷塊を丸呑みにした。そう、地中に潜っている間、彼らは振動で敵の位置を把握している。だからこうする事で、相手に場所を誤認させることができるのだ。
これは、地上におびき出すだけでなく、攻撃を当てる上でも役に立つ。というのも、事前に「そこに現れるだろう」と分かっているのだから、魔法を準備しておく事が出来るのだ。準備しておいた氷の銛を一気に叩き込んで、体力を削る。
というように、ここまでは順調に進んだが、このままずっと余裕という訳ではない。第二形態では、吹雪攻撃、ランダム弾幕、突進攻撃が混ざった複雑な攻撃パターンが繰りだされ、俺を屠ろうとしてくる。
「いって!!!」
しまった、氷の弾幕が肩に当たってしまった。幸い戦闘に支障が出るほどの怪我では無いが、それでも身体強化魔法では治癒出来ないレベルだ。急いで奴を倒しきって、誰かに治してもらわないといけないな。まだ、純粋な回復魔法は覚えてないから、自分では回復できないんだよなあ。
その後は少し慎重になったおかげもあって、怪我することなく倒しきる事が出来た。ドロップアイテムは……
「『鰻の開き』かあ。ノーマルドロップだけど、普通に嬉しいな」
……ダンジョン産のうなぎを「天然うなぎ」と言っていいのかどうかに関する議論は、物議を醸しそうなのでここでは割愛する。
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