日常の一コマ、赤木アドバイザー
今日も迷宮実習があるのだが、俺達のようなボス戦をクリアしてしまったパーティーは、先輩の指導を外れて学生同士での練習となる。
俺は柏木達のパーティーに誘われて、9層で練習している。ちなみに、宮杜さんは七瀬さんと共にクラスの女子と行動するらしい。
「えっと、柏木のパーティーメンバーは佐藤と山崎か。柏木の
「「「そうそう」」」
火属性魔法は火を生み出す能力だ。ファイヤボール的な攻撃を放つ事が出来る。長所は火傷や燃焼の異常状態を付与できる事だな。どちらも継続ダメージを与える事が出来る。短所としては「実体を伴わない」事が挙げられるかな。火に実体はないので、盾を作ることは出来ないし、また物理ダメージを与える事も不可能だ。
土魔法は暁先輩が使っているような能力だ。土の弾丸を発射したり、土でシールドを張ったり、後は落とし穴を作ったりもできる。長所としては応用性がある事が挙げられ、短所としては広範囲の攻撃に向かないという事が挙げられる。
魔剣術は属性が付与された剣を生成する
「全員アタッカー? それとも佐藤はタンクよりなのか?」
「そうだな。俺は基本シールド役を担ってる」
「ベントー第二形態の全体攻撃も、こいつの作った壁で全部防げるんだよ。マジ助かってる」
「なるほど、近接アタッカー、遠距離アタッカー、盾か。良いメンバーだな!」
◆
「で、まずは柏木の相談だったよな。もっと強くなりたいって」
「そうそう。少しずつ上達してる気はするんだけどさ。でも、他の人が使ってる火属性魔法をみて自信無くしてさ。バフありきで練習してみたいなって」
この世界では、「バフをかけて貰いながら練習する事で、上達しやすくなる」という説が唱えられている。そんな設定、ゲームでは無かったはずなので、リアルならではの設定、もしくは迷信と思う。
つまり、バフをかけて貰うと、その人本来の能力以上のパワーが出るだろ? それを見て「俺ってスゲー!」と思い込んで、その思い込みが能力を成長させる、的な。プラセボ効果って言うんだっけ?
「了解。じゃあ、取り敢えずバフをかけるぞ……」
「頼んだ。それ! おお、やっぱりスッゲー強化されるな」
バスケットボール大の炎の塊が発射され、前方に着弾した。
「まだまだやるか?」
「ああ、それ!」
そうして、暫く練習が続いた。
「よし、そろそろバフなしでやってみたい」
「おう、ガンバ! ちょうど、ディスクホッパーがいるし、あいつを的にしようぜ」
「オッケー! 喰らえ!!」
こぶし大の火の弾が発射された。バフがある時に比べると見るからに小さい。
「うーむ。普段とあんまり変わってない。はあ」
「そっか。なんかすまんな。てか、そんなすぐに効果って出る物なのか?」
「いいや?」
「そんなすぐ成長出来るなら」
「この学校、必要ないじゃん」
「だったら、そう気を落とさなくても……」
「それはそうだけど。でも、一気に成長出来たらラッキーだろ?」
「まあそうだけど。うーん。あ、そうだ。もう一回バフなしで使ってみてくれるか?」
「? 別にいいけど」
魔力感知状態になった俺は、数日前に見たあの魔法を再現する。他人の使う能力を分析するあの
(さてと。「アナライズ」……!)
<火属性魔法>
・火種の生成:10%
・温度の上昇:5%
・火の発射:85%
おお! なんか魔法に関する情報が浮かんできた! なるほど、西明先生はこんな風な結果を見ていたのか。
―――――!
突然、ハンマーで殴られたような頭痛が俺を襲った。 なんだ、くも膜下出血か?!
あまりの痛みに目を瞑り、魔力感知状態も切る。うううう。
突然、ふっと痛みが消えた。目を開ける。魔力が見えているので、感知状態が起動しているようだ。だが、さっきまでとは大きく異なる点がある。柏木の操る魔力の「どこが何を担っているか」を把握できるのだ。
なるほど、中心部に見える魔力の渦が「火の生成」を担っていて、その周囲を回る魔力が「温度の上昇」を行っているのか。
これは……。まさか能力が進化した?
いや、むしろ「能力がリンクした」と捉える方が自然かも。つまり、アナライズと魔力感知が一緒になったのが今の俺の能力。そう考えると理解できる。
「なるほどな。なんとなくわかったぞ。どうやったら強くなれるのか」
「マジ?! そんなの分かるのか?」
「なんとなくだけどな。お前、自分の火を
「? どういう意味だ?」
「なんとなくだが、柏木が魔法を使う時、『温度を上げる』よりも『火を発射する』のに必死な感じがしたんだ」
「そうなのか? そんな指摘、された事ないが……」
「そりゃあ、俺はお前に何度もバフをかけたからな。なーんとなく、相手の事が分かるのさ」
と適当なことを言ってみる。
「なるほど。うーむ。よし、やってみよう。バフ無しで使うから、見ててくれ」
「ああ、分かった。(アナライズ)」
<火属性魔法>
・火種の生成:10%
・温度の上昇:25%
・火の発射:65%
今度は頭痛に襲われなかったが、魔力を正確に把握する事が出来ている。アナライズと魔力感知の間に、明確なパスが出来たみたいだ。
さて、柏木の魔法だが、「温度の上昇」に関しては実に5%→25%と実に5倍の魔力が供給されている。その分、火の発射は85%→65%と下がっているが、果たして。
「「「おお!」」」
柏木の発射した弾幕は、大きさは先ほどと変わらなかったが、代わりになんか青っぽい色になっていた。着弾地点では、小規模の爆発が発生した。
「ありがとう、赤木のアドバイスのおかげだ!」
「次、俺のも見てくれるか?」
「俺も頼む。さらなる力を得たいんだ!」
この時の噂がクラス内に広がって、俺は赤木アドバイザーと呼ばれるようになったとさ。
◆
「宮杜さんのも改めて観察してみるよ」
「はい、お願いします」
<水属性魔法>
・水を生成:25%
・水を消去:25%
・水を発射:25%
・水をその場に留める:25%
「……ごめん、よく分からなかった。前に西明先生が言ってたように、相反する能力が干渉してるみたいなんだけど……」
「そ、そうですか。すみません……」
「いや、俺こそごめん」
なんか気まずくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます