雪見だいだい

 雪見だいだいの第二形態は鏡餅である。プルプルだったボディはカチコチに固まってより強固な体になっているが、その代わり動けないという弱点もある。


 雪見だいだいの第二形態の攻撃パターンは二つ。「吹雪攻撃」と「だいだい攻撃」である。

 吹雪攻撃はフィールド全体を吹雪にする攻撃だ。突風にのって飛んでくる雪や氷を体に受けてしまうとダメージを喰らうので、風上に向かってシールドを張って防御しないといけない。

 だいだい攻撃は奴の頭(だいだい)から、普通サイズのだいだいが猛スピードで飛んでくる魔法である。これは自機狙いなので、動き続ければ当たる心配がない。


 ヒョォオオと風が吹きはじめたら、すぐさま防御する。奴の頭が光始めたら、奴の周囲をぐるぐると走ってだいだいを避ける。その合間に、奴に向かって砲丸をぶつける。それだけでこいつは倒せる。

 初めての裏ボスだしな、対処法を知っていれば簡単に倒す事が出来るのだ。


 あ、ちなみにだが、こいつには切断攻撃や貫通攻撃が効きにくい。よって、衝撃属性のダメージを与える「砲丸攻撃」や「ハンマーで殴る」が良く効くのだ。これは鏡開きをイメージしていると思われる。


 何度か攻撃していると、奴の体のあちこちにひびが入り始める。特に脆くなった部分を思いっきり叩くとクリティカルが出て奴を倒す事が出来るのだ。



 それから10分ほど戦い続けた。俺の集中力が続いてる間に倒してしまいたいのだが……。あ、ヒビが広がった!


「割れろーー!!!」


 無属性魔法の利点はその応用性。俺は魔力を「平タガネ」のような形に練り上げて、ヒビに向かって叩きつけた。


 バキッ!


 バン!!


「おわっとぉ!」


 奴の体が弾け飛ぶ。思わず俺はシールドを張って防御。



 雪見だいだい第一形態と対面してから約15分。俺は雪見だいだいを倒しきったのだった。



 ドロップアイテムを確認しよう。まず、雪見だいだいのドロップアイテムは以下の三種類である。


・雪見だいだい

 N:だいだい

 R:トリモチボール

 SR:雪印のブレスレット


 まずノーマルドロップのだいだいは何の変哲もないだいだいである。

 だいだいはかなり酸っぱく、そのまま食べるのには向かない。料理にかけて香り付けをしたり、お酒に加えてサワーにするなんかの食べ方がある。俺は未成年だからサワーは飲めないし、料理にかけるくらいしか使い道がないか……。いや、炭酸水に入れて飲むって手もあるな。


 次にレアドロップ、トリモチボール。これは敵に投げつけると行動阻害の異常状態を付与する事が出来る便利アイテムだ。色々と使い道があるので、今後の為に集めておきたい。


 最後にスーパーレア。確率5%でドロップする「雪印のブレスレット」。これが非常に強力なアイテムなのだ。効果は「装備者の攻撃に氷結効果を付与する」という物。例えば、俺が無属性攻撃を敵に当てると、敵は無属性ダメージを受けるだけでなく、一定確率で氷結の異常状態を喰らうのだ。

 氷結の異常状態は「移動する度に一定ダメージを喰らう」という変わった異常状態だ。その性質故に、動かない敵には効果が低いが、逆に言うと走りまわる敵には効果抜群だ。


 俺が狙っているのはこの「雪印のブレスレット」だ。さて、出てくれるかな……?!



 奴がいた場所に遺されていたのは……。だいだい。



「次、行ってみよー!」



 雪見だいだいと再戦するには、一層からやり直す必要がある。俺は一層から再びダッシュして雪見だいだいの下にやってきた。


「よう、また会ったな! 今回は手加減せずに戦わせてもらうぜ」


 ポヨヨ?


「先手必勝、ファイヤボール!」


 ポヨヨ?!


 柏木が使っている能力、火属性魔法。魔法実習の授業中に、それを観察させてもらったのだ。ここは裏ボス戦用のフィールドで、人に見られる心配が無いので、使ってもバレる心配がない。

 雪見だいだいの弱点は火属性。火属性の魔法をガンガン打ち込むことで、さっきよりも簡単に倒す事が出来るはずだ。


 結局、第一形態を一分で削り切り、第二形態は5分で倒しきる事に成功した。得られたドロップアイテムは再びだいだい。



 今日はここまでかな。また明日、戦う事にしよう。




 ドロップアイテムは取引所で買い取ってもらえる。実際、ボクサーチキンを乱獲した時、鶏肉以外のドロップアイテムはほぼ全部買い取ってもらったしな。

 なお、メンドリサックが四つ落ちたのだが、それは俺と七瀬さんが一つずつ持って帰った。序盤に手に入る近接武器の中ではそこそこ有用だからな。


 では、このだいだいも買い取ってもらうのか。当初は買い取ってもらおうと考えていたのだが……そんな事をしたら「どこでドロップしたのか」と問い詰められる事間違いなしだ。裏ボスの存在を教えてしまうと、俺専用のスペースがなくなってしまう。そうなると属性魔法を試す場所がなくなり、それは困る。

 やっぱり買い取ってもらうのは無しだな。


 はあ。俺の部屋がだいだいで埋もれる前に雪印のブレスレットを手に入れたいなあ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る