日常の一コマ、フォルテメイアの放課後
放課後になり、俺と他二人のクラスメイトは第Ⅳ訓練場に顔を出し、一人の先輩を待つ。
「「「こんにちは、暁先輩!」」」
「お待たせ! みんな早いね。じゃあ、さっそく練習しようか!」
今日は本来部活は休み。先輩方は各自迷宮攻略に勤しむ予定となっている。そんな中、暁先輩はわざわざ俺達の指導をしてくれることになった。
「わざわざありがとうございます」
「いえいえ! それに、迷宮攻略をサボる良い言い訳になるし!」
俺達に気を使ってかそんな風に言っているが、この人だって自分の成績は重要なはず。迷宮攻略の時間を削ってまで、俺達を指導してくれるのは、この人の面倒見の良さがなせる業だろう。
「先輩自身の迷宮攻略を優先して下さいね。万が一、先輩の成績が下がったりしたら、俺達、どう謝罪したらいいか分からなくなるので」
「大丈夫大丈夫。いざとなったら、赤木君に手伝ってもらえば何とかなる!」
さて、宮杜さんに関しては暁先輩ではどうしようもない。暁先輩が担当するのは七瀬さんの相手である。
「いくよ、これを避けてみて!」
暁先輩が土の弾幕を発射する。俺を相手にした時と違って、一つずつインターバルを空けているので、避けやすいはずだ。
「はい! っ!」
七瀬さんは今、避けタンクを目指している。そして、弾幕役を暁先輩がやってくれているのだ。
暁先輩が忙しい時は、俺が相手になろうと思ったのだが……、無属性魔法って見えないんだよね。それを避けるのは今の七瀬さんには無理だ。二年も経てば、気配で避けれるようになるらしいけど。
「やっぱり、宮杜さんの能力って強いよな。俺がバフをかけても、他の人の魔法はこんなにも大きくなかった。前にも言ったけど、宮杜さんの能力は強すぎるんだと思う」
「強すぎるが故に能力に振り回されてる、と言ってましたよね。すみません、自分ではなんにも分からなくて。あの後も、色々と考えてみたんですけど、よく分からなくって……」
宮杜さんなあ。なんで能力を使いこなせないんだろう?
もう一人の助っ人が、何か見出してくれるといいのだが。
実は今日は、暁先輩以外にも助っ人が来る予定になっている。もうすぐ来てくれるはずなのだが……。あ、来た。
「やあやあ、暁君。遅くなってすまんな」
「西明先生! ありがとうございます!」
「いえいえ。で、そこの女の子が例の?」
「はい。宮杜さんです」
「宮杜と申します! 西明先生、今日はよろしくお願いします!」
「はーい。礼儀正しくていいね。じゃあ、早速だけど見せてもらおうかな? まずはバフなしで」
この先生はフォルテだけど、研究職についている珍しい人物だ。その能力は通称『アナライズ』、能力を解析する能力である。
ただ、俺の魔力感知状態と違って能力の再現とかは出来ない。曰く、「能力の原理的な物」を解析し、能力を伸ばすには何をすべきかのアドバイスをしてくれるんだそう。
「はい! ……!」
「『アナライズ』、ふーむ。なるほど?」
「何か分かりましたか?」
「ちょっともう一回やってくれるかな?」
「はい」
◆
「分かった事を説明しよう。そうだな、簡単に言うと、相反する二つの能力のようなものが見えた」
「相反する」
「二つの」
「能力」
「?」
「息ぴったりだな。ああ、そうだ。水魔法って『水を生成』『水を発射』という二つの能力が混ざったような構成になってるんだ。ただ、君の場合は『水を生成』『水を発射』の他に『水を消去』『水をその場に留める』みたいな能力が混じっていた」
「そんなことが……?」
「ああ。それで、赤木君がバフをかけた時は、不思議と『水を消去』『水をその場に留める』という能力が感知されなかった。だから、魔法が使えるようになったのだろう」
「「「「ほえー」」」」
「おそらく、赤木君が宮杜さんを強化しようとした時、何らかの相互作用が働くんだと思うが、そこまでは解析できないからなあ……」
結局、先生の協力をもってしても、宮杜さんの問題は解決できなかった。
「すまないな、力になれなくて」
「いやいや。見解が聴けただけでも、凄く助かりました!」
「また何かあったら教えてください!」
その後、俺達四人は早い目に練習を切り上げて、フードコート向かった。各々好きな物を注文して、今日の感想などを言い合う。
その後は部屋に戻って、宿題をしたりのんびりしたりする。
あと、忘れちゃいけないのが、穂香に電話する事だな。ついでに
通話の後は、さっさとお風呂に入って就寝する。明日も早いからな。
これが俺のフォルテメイアでの一日である。
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