日常の一コマ、フォルテメイアの昼
朝、教室に入ると既に何人かが来ている。始業の8時30分までは自由時間なので、クラスメイトと共に談笑する。この辺りは普通の高校とほとんど一緒だな。
強いて言えば、ギリギリ登校する割合が多いって点は他と違うかも? 電車が止まったり道が混んでたりする心配がないから、ギリギリ登校にリスクが少ないのだ。
ところで、この学校(のフォルテ学級)は普通の高校とは違って、大学受験を目標にしていない。よって五教科(国数英理社)は「軽く一通り勉強する」程度だ。授業内容も非常に浅く、その分を能力に関する事に充てている。ましてや、正直人生二度目の俺にとってはかなり余裕だ。流石に暗記科目は勉強し直さないと付いていけないけどな。
と言う感じで、五教科に関しては「レベルが低いという点を除いて他の学校と同じ感じ」だ。
違ってくるのは体育と能力に関する授業だ。能力に関する授業はともかく、体育も少し特殊な形態で行う。
「今日は4組と試合か。4組、サッカー部が多いからなあ」
「って言いつつお前、『俄然やる気が出るぜ』って顔してんじゃん」
この学校の運動場って物凄く広いから、多クラスが合同で授業を行えるのだ。また、試合を中心とした授業を行う事で、クラス内の仲間意識、他クラスに対するライバル心を持つように仕組まれている。
今後、魔法杯などのイベントでは、クラス対抗で戦うイベントがあったりする。その時に備えているのだと俺は考察している。
◆
4時間目が終わると昼休みだ。弁当を事前に用意してこなかった人が、購買に向けて走り去って、それを先生が「廊下を走るな!」と注意する。これが毎日起きている。
俺は弁当、伊藤はコンビニで買ったパンとおにぎりだな。
「毎度のことだが、パンとおにぎりって……。どっちも主食じゃねーか。よくそんなにも食べれるなあ」
「若いうちは沢山食べないと!」
「そうは言うけどさあ」
一方で、佐藤はというと、「バランスフード」というブロック型の非常食のようなものを食べている。地球で言うカ□リー×イトみたいなものだな。
迷宮攻略中や他の魔物の巣で行われる実習訓練の時に食べる事を想定して作られているそれは、味もそれほど悪くない上に栄養満点らしい。実際、俺も食べた時は「え、美味いじゃん」と思った。だけど……。
「「流石に毎日だと飽きないのか?」」
「飽きないぞ? お前らはお米を飽きるか?」
「「いやまあ。飽きないけど」」
「そういう事だよ」
納得しそうになったけど、やっぱり納得できないわ。
そして、満腹になった俺達に待っているのは、午後からの授業。今日は……よりによって古典かよ!
社会人を経験した俺だからこそ思うのだが、古典を読書として読むのは楽しい。例えば枕草子には「姑と仲がいい嫁というのはめったにない」と書かれている。そういうのを読むと「ああ、昔からそうだったんだなあ」とクスっと笑えたりする。
とは言え、人生一週目の彼らにその情緒を求めるのは酷だ。見てみろ、大半がウトウトしているぞ。
まあそもそも、今の学校教育は古典を楽しむ余裕を与えてくれないからなあ。ひたすら古典単語の暗記、文法の丸暗記、品詞分解と逐語訳である。この学校はまだマシだけど、進学校になればなるほど、その傾向が強いように思われる。だって、大学受験を見据えるなら、そういった単純作業をする方が効率的だもん。
閑話休題。
何の話だっけ。そうそう、大半がウトウトしていても、一切気にせず授業を進めるこの先生のメンタルが凄いって話だったな。(違う)
◆
眠気と戦う午後の授業を終えると、待ちに待った放課後……の前に終礼がある。俺達の担任、畑先生はちゃっちゃと終わらせてくれるが、中にはグダグダと長い時間かける先生もいるみたいだ。このクラスで良かった。
放課後の行動は三つに大別される。「ダッシュで帰宅」「クラブ活動に勤しむ」そして「迷宮に行く」である。ただ、一年生のこの時期に迷宮に行く人は少ないので、実質帰宅かクラブの二択だな。
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