フォルテメイアでの生活

日常の一コマ、フォルテメイアの朝

 フォルテメイアの入学式から一週間が経とうとしている。「寮生活をしながら学校に通う」というのにまだまだ慣れない学生も見受けられ、朝ごはんを咥えながら教室に駆け込んでくる人や、ギリギリ朝礼に間に合わない人もいる。


 俺が初めて一人暮らしを経験したのは(前世で)大学生の時だった。当時は一限がある教科をなるべく取らないようにして、生活習慣が乱れまくった生活を送っていた。そんな生活を送りつつ徐々に一人暮らしのコツを覚えていき、そして社会人になる頃にはある程度生活リズムを整える事が出来るようになったのだった。

 そういう「一人暮らしに慣れる期間」を与えられていない彼らにとって、一人暮らしをこなしつつ学校に通うというのはハードだと思う。彼らには頑張って貰いたい。


 俺はというと、前世では社会人をやっていたわけだし、一人暮らしには慣れている。また、転生後は料理を勉強したおかげで、自炊もバッチリ出来る。前世の自分よりも明らかに生活の質が向上しているなあと、しみじみと感じる今日この頃だ。


 さて、そんな俺がフォルテメイアでどんな生活を送っているのか紹介しようと思う。



 俺の朝は早い。朝5時半には起床し、30分かけて身だしなみを整えたり、学校に行く準備をしたりする。

 前世では身だしなみはかなり適当だったけど、今世では母(血縁上の叔母)にみっちりと指導されたんだ。「せっかく素材が良いんだから!」と口が酸っぱくなるほど言われ、髪のセッティング、お肌の管理、そしてファッションについて学ばされた。そのおかげで、ある程度カッコよくセット出来るようになった。

 その結果、身だしなみって想像以上に大事なんだなと痛感するようになった。髪型を整えてスキンケアをするだけで、清潔感のある男子に早変わりだ。



 そして6時になったら、ジョギングを開始する。迷宮攻略において、持久力は重要だ。この学園の時間割で体育の割合が多いのも、体力をつける為だしな。

 で、持久力を付ける為には有酸素運動が良いとネットで読んだので、1時間ほどジョギングをするつもりだ。コースはフォルテメイアの外周だ。フォルテメイアの外周は約3kmあるので、1時間で3周できる計算となる。(身体強化を使えばもっと走れると思うが、暫くは使わずにトレーニングする予定)


 学校指定の靴を履いていざ出発。流石はこの学園と言うべきか、学校指定の靴も迷宮用に設計されたスポーツ向けの靴である。グリップ性能は非常によく、また通気性もばっちりで汗をかいても蒸れない。ちなみに、素材はオバケダコの粘液から作った繊維とクロスゴートの革を使っているらしい。流石はゲームの世界、靴もファンタジーだぜ!


 俺のいる第2寮から西に走って、突き当りを左に曲がる。外周には遊歩道があり、ランニングにもってこいなのだと、陸上部に入った友人から聞いた。


「相変わらずお洒落な道だなあ」


 フォルテメイアは山の中にある学園であり、周囲は森で覆われている。遊歩道はその中を通っているので、まるで自然公園の中を走っているような感じなのだ。前世も今世も都会暮らしだった俺にとってこのような光景は珍しい物。これなら走るモチベーションも続きそうだ。


 かなり朝早いけれども、俺以外にも人はいる。例えば先生方。健康志向なのか、ウォーキングをしている先生がちらほらいる。体育教師や迷宮攻略の教官、そして陸上部はものすごいスピードで俺の横を駆けていく。あんなに速く走れるようになるのに、一体どれだけの苦労をしているのか……。気が遠くなるな。


 変わった形の木を見て「どう育ったら、ああなるんだろう?」と思ったり、道端に咲いてる花をみて「春だなあ」と感じたり。あと、途中にある小さな渓流をのぞき込んで魚が居ないか見てみたり。そんな風に楽しみながら、俺は一時間のランニングを終える。



 シャワーを浴びてから、みそ汁とお米、漬物も添えて頂く。朝はやっぱり和食だよな! 異論は認める。

 そしてお弁当を準備する。昼休みにフードコートまで行く時間的余裕は無いし、売店で売っているお弁当を買うには行列を並ばないといけない。だから、こうしてお弁当を用意する人は多い。ほとんどの人は事前に買ったコンビニ弁当だが。


 そんなこんなで準備を整えるのに一時間ほどかかる。そして、8時に部屋を出て教室に向かうのだ。





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