あれ、俺の精神年齢って……
ウォーターリリーの攻撃を避け続けるのは、なかなかスリリングで楽しい。楽しいのだが、正直疲れてきた。まだ一分経たないのか?
「も、もう無理だ……」
俺は途中離脱を選択した。賭けに負けてもいいから、とにかく休憩したい。はあ、持久力を付ける必要があるなあ。毎朝ランニングでもしようかな?
「せ、先輩。今、何秒くらいでした?」
「え? あ!」
「え、まさか測ってなかったとか……?」
「測ってはいるよ! え、えっと……ね。3分です……」
「はい? スミマセン、ヨクキコエマセンデシタ」
「さ、3分だったわ」
「一分って話でしたよね? どういうつもりです?」
「ご、ごめんね……。あまりに華麗だったから、つい見惚れちゃったの! だから許して!」
「まあ、別にいいですよ」
ぱあ~っと先輩の顔が明るくなる。分かりやすいな、この先輩。
「ところで、一分耐えたら僕たち三人にスイーツバイキングを奢ってくれるって話でしたよね? 三分耐えたわけですし、スイーツバイキング奢りも三回分って事で良いですか?」
さーっと先輩の顔に影が落ちる。ほんと分かりやすいな、この先輩。
「なーんて、冗談ですよ。一回で良いですよ」
少しほっとした様子だが、それでも顔色が優れない先輩。
「あ、あの。私達はいらないんで」
「わ、私も奢ってもらう必要ないので……」
あ、二人が辞退した。それでもなお、先輩の顔色は優れない。
「あー、先輩? そんなに奢るの、嫌なんですか? 先輩が嫌なら僕も別にいらないので……」
「ほんと?」
涙目の先輩が、俺を見上げてくる。あざといのか? それとも本気で泣いているのか?
「それに僕、スイーツなら自分で作りたいですから。お気になさらず……」
「はあ……。ご、ごめんね……。な、なにか別の形でお詫びするね……。ほんとどうしてこうなったの……。赤木君に奢ってもらう予定だったのにい~!!」
「……普通に自分で食べに行けばいいのでは?」
「この前、赤木君にステーキ定食奢ったことで、もう残金が……」
「え? 奢って貰ったって言っても、4000円を4人の先輩に出してもらった訳ですから、一人頭せいぜい1000円でしょう?」
「うんん。この前の件は私が言い出しっぺだし、全部私が払ったの」
そうだったのか……! この人、ちょっと調子に乗っちゃうタイプっぽいけど、律儀ではあるんだな。先輩に対する好感度が少しだけ上がった。
「あー、そうだったんですね。で、それを取り返してやろうと思って、さらに自爆したと。あれですね、えっと。ギャンブルで負けて、その金を取り返そうとまたギャンブルに手を出して、みたいな」
「はい。なにも言い返す事が出来ません!」
あーこの人の金欠は俺のせいでもあるし……。先輩にスイーツバイキングをごちそうしてあげようかな。精神年齢的にも、俺の方が年上だし。
あれ、そう言えば精神年齢の算出って前世の分と今世の分を足し算するのかな。とすると、俺の今の精神年齢って……。もしかして、俺と暁先輩って親子くらいの年齢差なのでは……?! うん、これ以上考えるのは辞めておこう。
「なんか申し訳ないですし、ここは男の甲斐性を見せますよ。俺がそのスイーツバイキング、奢ります」
「え、ほんと?!」
わあ凄い。先輩の顔が今まで見た事もないくらい明るくなった。輝いている。先輩の周囲にキラキラエフェクトが出ているように見える! ゲームかよ! ……そういやゲームだったわ!
「でも、スイーツバイキングなんてフードコートにありましたっけ?」
「うんん、隣駅まで行ったところにあるの」
「なるほど、そうなんですね。じゃあ、今週末にでも行きます?」
「え、いいの? 本当にいいの?」
「いいですよそれくらい。俺自身、スイーツバイキングって物に興味ありますし。あ、二人はどうする? もちろん奢るよ」
「え? 私達も?」
「え?! そんなの申し訳ないですよ!」
「や、お金の事は気にしなくていいよ。というのもさ、このまま暁先輩と二人でスイーツバイキングに行くのは気まずいというか……」
「そうなの? 今も気さくに喋ってるじゃない」
「いやだって……」
休日。男女二人っきりで。スイーツバイキング。それってデートじゃん!
恋愛経験皆無の俺に、それはハードルが……!
と馬鹿正直に言うのは恥ずかしいなあ。何か誤魔化す方法はあるかな?
「確かに、私達二人だと、なんかデートみたいで気まずくなるかも?」
あ。暁先輩が代わりに言ってくれた。それに便乗して俺も二人きりは気まずいと説明する。
「なるほどね。うーん、どうせ週末は暇だしー、スイーツバイキングって言う物に興味もあるし。え、ホントに奢ってくれるの? 結構高いんじゃない?」
「それくらいはね。というのも、小学校の頃から色々やっててさ。それで、お金に余裕がある方なんだよね。学生にしては、だけど」
言うまでもなく、前世で培ったプログラミング技術を使ったソフトウェア開発で得た資金の事だ。前世の下りは言わずに、「プログラミングが得意だから、それで叔父の仕事を手伝ったりして」と説明する。
「「「すごー!」」」
この後、宮杜さんがとっても躊躇してたが、七瀬さんの説得もあって一緒についてくることになった。なんやかんや嬉しそうにしてたし、やっぱり女の子ってスイーツに目が無いんだなあ。
◆
「その。この恩はどこかしらで必ず返すね!」
「ホントに気にしないでください。でも、今回が特別ですよ? 味をしめて、今後もお金をたかろうものなら……」
「ものなら……?」
「能力研究部で、一日中先輩を的にしますね!」
「絶対にたかったりしません!!! と言うか、私ってそんなに信用ないかな? 後輩にたかるような人間じゃないわよ?」
「「「怪しい……」」」
「誰も否定してくれない?!」
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