お休みなさい
フードコートを後にする頃には、辺りは既に暗くなっていた。今日はもうする事はないかな……? いや、明日の朝食を買っておこう。学内にあるスーパーマーケットによって、手ごろなサンドイッチを購入。それから飲み物も買っておくか。水……は寮の食堂で無料で手に入るし……。よし、牛乳を買っておこう。
買い物を済ませ、寮に到着。特に何か目的がある訳でもなく、パソコンを起動。イラストでも描こうか? それとも、アプリ開発? いや、フォルテメイアの情報収集?
「いや、先に愛する妹とビデオ電話を」
ビデオ通話したいという旨をチャットで送ると、一分もしない内に「いつでもかけてきて!」と返信が来た。早速ビデオ電話をかけてみる。
「もしもし? 久しぶりね、お兄ちゃん! もっと頻繁に連絡してくれてもいいのに……寂しかったよ……」
泣き真似をする我が妹。可愛い。
「うん。今朝、直接話したよな? これ以上頻繁に連絡するのは厳しいぞ? でも、寂しかったのは同感。穂香の可愛い顔が見れて安心だよ」
「もー。私のお兄ちゃんは、本当にシスコンなんだから~。……どう、学校は? ってまだ始まってもないよね」
もーと手をパタパタと振りつつ、頬を赤く染める穂香。可愛い。ヤバい、妹の行動一つ一つに「可愛い」と思っている気がする。重度のシスコンだな。
「そうだな……。でも、結構色々あったぞ? 物理的に衝撃的な出会いをしてみたり、初めて魔法を使ってみたり、クラブに勧誘されたり」
「な、なんだか色々あったみたいだね……」
「ああ。では、穂香には、俺の今日の出来事を聞いて頂こうではないか!」
「うん、聞く聞く!」
「まずは『物理的に衝撃的な出会い』編。……」
七瀬さんと出会った時の事を話す。なお、倒れてきた七瀬を抱きかかえたことについては話さず、思いっきり激突したと言っておいた。
「……という感じ」
「むー。お兄ちゃん、早速女の子に手を出すなんて……。でも、良かったよ。今まで女の子と仲良くする素振りを見せてなかったから、『重度のシスコンなのでは……?』とか『まさか、同性愛……?』とか考えていたのよ?」
「そんなこと思ってたの? 重度のシスコンなのは認めるけど、そっちの
「あはは。シスコンなのは認めるんだね」
「ああ。お前がブラコンなのと同じくらい、俺はシスコンだから」
「私はブラコンなんかじゃないでーす」
「はいはい、そう言う事にしておくよ。それじゃあ、次のストーリー。『初めて魔法を使ってみた件』をば。……」
訓練場で起こった事をありのまま話す。五感が失われた時の感覚や、魔力の感覚。
「凄い……けど無理はしないでよね!」
「大丈夫、大丈夫。たぶん大丈夫!」
「はあ。本当に、自分の体を大事にしてね」
「おう。ありがとな、心配してくれて」
「兄を心配するのは妹の義務であり権利なのです」
「最後に、『クラブに勧誘』編だ。まあ、これは大したことなくてな……という訳なんだ」
「へえ! それで、お兄ちゃんは能力研究部に入るつもりなの?」
「まだ決めてない。最初はゲーム製作の才能を活かすべくパソコン部がいいかなって思ってたんだけど……」
「けど?」
「能力研究部って響き、カッコ良くない?」
「なるほど、それは思った」
「だろ?」
「ふーん。それにしても、一日でいろんなことがあったんだね……!」
「ああ! そっちはどうだ? 何か珍しい事とかあった?」
「うーん。そうだ! 頑張って勉強しようと、参考書をいっぱい買ったんだ! ほら!」
高校受験用の参考書を見せてくる穂香。彼女は、フォルテメイアに入学するつもりであり、その為に勉強を頑張っているのだ。フォルテじゃない生徒も、成績が良ければ「フォルテ、魔法、魔物に関する研究者を目指す生徒」として入学できる。
「凄い! 凄いけど、買ったまま放置って事にならないようにな」
「ギク!」
「自分でギクって言う人、初めて見たぞ。でもまあ、無理はしないようにな。そもそも、俺と血縁関係がある訳だし、穂香もフォルテかもしれないだろ? だったら、勉強関係なく、フォルテメイアへ入学できる分けだし」
「ありがと! まあフォルテメイアに行くかに関係なく、勉強はしておくべきと思うし。実際、お兄ちゃんはすっごい成績良かったじゃない?」
「まあ、意外と勉強も楽しいなって思ってさ」
理数系に関しては元から得意だった。英語はまあ平均以上かな。アプリ開発に英語は必須だから、前世でも今世でも勉強した。苦手意識のあった社会科に関しては、この世界に来たことで印象は180度変わった。
例えば地理。国名の次に覚える事は、魔物の発生状況について。「この辺りでは、こういう魔物が生息しており……」とか教わるのだ。ゲームかよ! ゲームだったわ!
歴史も似た感じ。魔物出現後、人類がどのように窮地を乗り切ったのかについての勉強をするのだが、これはゲームの設定資料集で読んだ内容だった。
そんな訳で、楽しみながら勉強に取り組めたので、成績は良い方だったのだ。
「何度も言ってるけど、お兄ちゃんも無理しちゃだめだよ!」
「ありがとな。それじゃあ、お休み、穂香」
「お休み、お兄ちゃん」
◆
通話を終了した俺は、シャワーを浴びてから、寝間着に着替える。寝間着を着ると、脳が「さあ、寝るぞ!」って気持ちになるのだろうか。昼寝もしたにも関わらず、眠たくなってきた。
最後につぶやいたーをチェックして寝るか……。アプリ開発者用のアカウントには……特に重要な出来事は起きてないな? もう一つのアカウントはどうだろう? あ、七瀬さんがクレープの画像を挙げてる。「よいね」しておこう。
そうこうしている内に眠たくなってきた。ふわああ。
お休みなさい~。
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