日常の一コマ、知識チート(笑)
初めは穂香ちゃんとの関係も「友達以上、家族未満」だったのだが、徐々に距離は近づき、居候を始めてから二か月後には「お兄ちゃん」と呼んでくれるようになった。やったぜ! 前世では一人っ子だったのだが、ずっと弟か妹が欲しいと思ってたんだよなあ~!
そして、俺は常に「いいお兄ちゃん」でいるように心掛けた。宿題の相談に乗ってあげたり、親子喧嘩の際は間に入ってあげたり。俺のシスコンっぷりは世界中のどんな兄にも負けない自信がある。(どんな自信だよ)
また、小学生というのは自由な時間が沢山用意されている。唯一面倒な宿題やテスト勉強も人生二度目の俺にとっては楽勝だ。
という訳で、余った時間は自分のスキルアップに割いた。まずは料理の勉強についてだが、これが意外と楽しく、ついつい色々なお菓子を作るようになっていた。前世ではこれっぽっちも興味を示さなかったのに、どうしてだろう?
「お兄ちゃん~! 何作ってるの? わあ! チーズケーキ?」
「そうだぞ。晩御飯の後、みんなで食べような!」
「わーい!」
穂香ちゃんは俺にとびっきりの笑顔を向けてくれた。仮にこれがゲームだったら、キラキラエフェクトがかかっている事間違いなし。
(そっか。喜んでくれる人がいるから、料理が楽しい……のかな?)
料理の他にも、今後に向けてしておきたいこともあった。それが「資金作り」である。
ゲームでは、敵を倒すとお金が貰えたが、リアルとなった今もそうとは限らないだろう。例えば「ああー、今このドロップアイテムは市場で飽和してるからねえ。買取価格は
あと、それ以前に、自分で自由に使えるお金が欲しい。元社会人の俺にとって、ひと月のお小遣いが1000円しかないのは辛すぎる。
そんな風に悩んでいる時だ。母親が俺にスマートフォンを買ってくれた。小学三年生にスマートフォンは些か早すぎる気がしなくもないが、まあ俺は真面目で賢い小学生だからな!(精神年齢が高いだけ)
そして、スマートフォンを使っている時に気が付いたのだ。「あれ、あのゲームがない……!」「あれ、あのサービスが無い!」と。
この世界では、まだスマートフォンが普及して間もないようだ。丁度俺が小学生くらい、2010年かそれより前くらいだろうか。
前世の俺は、大学卒業後はブラック企業に務めていたのだが、そこはIT企業だったので、システムエンジニアとしての経験を積んでいる。だから、アプリ開発はお手の物。両親にパソコンを買ってもらい、アプリ開発に励んだ。ゲームしたい! スケジュール帳が欲しい! リマインダーくれ!
で、これをリリースすればお小遣い稼ぎになるかなあ、なんて思っていたのだが……。ある日の事、叔父(なんやかんやあって「お父さん」と呼んでいる)にアプリを見られた。
「なんだ、これは? 便利そうなアプリだな。なんてアプリだ?」
「あ、父さん。俺が作ったアプリなんだ。すごいでしょ?」
「……! これは凄いぞ……!」
そして。それが叔父(なんやかんやあって「お父さん」と呼んでいる)の目に留まり、叔父の会社を通じて正式にリリースされることになった。
そしてその結果、俺は叔父から給料……ではなくお小遣いを沢山貰えるようになった。社会人からしたら少ない金額だが、小学生にしては貰いすぎな金額である。
「凄いわね、風兎君! 小学生にして大金持ちじゃない!」
「ああ、本当に風兎の目の付け所、そして技術力は素晴らしいよ」
「あはは。ありがとう……」(……ゲーム世界に来て、初めての知識チートがコレかあ……)
「? 何か言った?」「ゲームがどうしたって? 何か作るのか?」
「いいえー! なんでもー!!」
ブラック企業で培った技術がここで生かされるなんてなあ。
◆
「穂香ちゃん、これ。プレゼントだよ」
「ワンちゃんのぬいぐるみ! 可愛い! ありがとー!!」
集まった資金は全部貯金、というのもありだが、少しぐらい奮発してもよかろう。偶然ショッピングセンターで見かけたコーギー(犬種)のぬいぐるみを買って、穂香ちゃんにプレゼントする。
モフモフなぬいぐるみと、それに抱き着く
こうして撮られた写真は、現像され、リビングに飾られることになったとさ。
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