状況整理

 夕食の後はお風呂に入って寝るだけ。特に穂香も俺も小学生だ。夜更かしなんて良くないだろう。


「それじゃあ、風兎君、穂香。一緒にお風呂に入りましょうか?」


「え?」「入るー」


 嘘だろ? 一緒にお風呂ってそれはまずいのでは……。いや、俺はまだ小学校三年生。親と一緒にお風呂に入っても問題ない年齢……なのか?



 結局、一緒にお風呂に入った。叔母はまだまだ若く、一般的に見れば魅力的な女性であるにも関わらず、俺の体は反応しなかった。「異性の体とは魅力的な物である」と知識では分かっているものの、何故かあまり興味がわかない。それは穂香ちゃんに対しても同様で「可愛い」と感じるけれども、性欲は感じない。これは……。


(そうか、ホルモンの影響か)


 思い出したのは、前世で見たテレビ番組。そこで大学教授が言っていたのだが、「女性ホルモンを打ったら、性欲が減る」「精巣摘出術後は性欲が著しく低下する」らしい。心とホルモンの強い相関に関するテレビ番組だった覚えがある。


 今の俺の体は、八歳の子供だ。確かに人生経験は大人だけれども、身体はまだ子供。ホルモンバランスが思春期前なので、俺の精神もそれに引きずられているのだ。


(転生して初めて、ホルモンの重要性を知ったよ……)



「二人とも、お休み。風兎君も、眠りづらいかもしれないけど、目を瞑っていればすぐに寝られると思うわ。もし、夜中に怖くなったら、電話をかけてね」


「大丈夫! ありがとね。お休み」「お休みー」



 さて。ベットの上で寝転びながら、俺はゲームの事や今後の事について考えを巡らせる。


 赤木風兎と言う名前、幼いころに両親を亡くすという境遇、文明は発達しているにも関わらず魔物や魔法が存在するという世界観。この世界はゲーム『フォルテの学園』にそっくりだ。


(でも、どうやって能力なんて使うんだ?)


 ステータスと唱えてもそんな画面は出てこない。メニューと言っても効果なし。おへその下あたりに未知のエネルギーが無いか探っても、何も分からない。現状は使えないとかだろうか? それとも、俺の精神が入ってしまった事で、赤木風兎は能力を失ったとか? 今は分からないなあ。


 ヤバい。まだまだ考察を始めたばかりなのに、眠たくなってきやがった。そうか、身体が幼くなっている分、必要な睡眠時間も増えているのか。寝るしかないな。おやすみなさい。



 次の日、叔母にスマートフォンを借りて、能力について調べまくった。なるほど、能力を持っていたとしても、使えるようになるのは基本的に高校生以降らしい。稀に小学生の頃から使える人も居るらしいけど。

 そういえば、ゲームでも能力測定のシーンが描かれていたような気がする。「俺はフォルテなのか?! よし、これで仇を討つことが出来る……」みたいなセリフがあった覚えがある。なお、一度読んだストーリーは基本スキップしていたので、ぶっちゃけ記憶は曖昧だ。


 さて、情報収集で分かった事を、ゲームで明かされていた設定と併せて整理してみよう。



能力者フォルテかどうかは遺伝するとされるが、非フォルテからフォルテが生まれたり、フォルテの子供がフォルテじゃなくなったりする事もあり、詳しくは解明されていないらしい。

・高校生前後で、自身に宿っている能力を自覚できるようになる。ただし、いきなり強力な魔法を使えるという訳ではなく、何度も練習する中で徐々に能力を使いこなせるようになっていくらしい。


・全ての国民は中学三年生の時点でフォルテか否かの検査を受ける義務がある。フォルテの人数と動向を確認しておきたいのだろう。

・検査で陽性反応が出た者は、魔物と戦う職に就くべくフォルテの集まる学園「フォルティス=アカデメイア」に進学するように勧められる。

・進学しなかった場合、警察にマークされる事になり、事件を起こせば対フォルテ部隊にしょっ引かれることになる。もちろん、悪いことをしなければ自由に暮らす事が出来る。

・フォルティス=アカデメイアに進学した場合、能力の特訓を受ける事になる。能力を何度も使う過程で、精度と威力は上昇し、魔物に対抗するだけの力を得る事になる。

・どちらを選ぼうと、能力を所定の場所や緊急時以外で使用する事は認められない。攻撃魔法の試し撃ちはもちろん、防御魔法も使ってはいけない。回復魔法に関しては、規則内で使ってもいいらしいが詳しくは省く。


・フォルティス=アカデメイアは全寮制の学園で、能力者の他にも研究者を目指す人もいる。年齢的には高校生が集まるので、フォルティス=アカデメイアは一種の高校であると考える事も出来る。ただ、小中学校と大学も併設しており、一種の学園都市となっているようだ。

・フォルテとしてフォルティス=アカデメイアへ入学する場合、基本的には無試験で入学する事が出来る。ただし、普段からの素行が悪い生徒は、入学拒否されたり、退学処分が下りたりするとか。よって、フォルティス=アカデメイアは治安のいい学園だそう。ちょっと意外。もっと野蛮な学校をイメージしていた。まあ、人類の命運を託された学校だし、規律違反をするような学生はいらないという事か。

・フォルティス=アカデメイアの学生は、魔物との実戦訓練も受けるらしいが、その過程で運悪く大けがを追ったり亡くなったりする事もあるらしい。ひえぇぇぇ。


・フォルティス=アカデメイア卒業後は、基本的には魔物の討伐に従事する事になる。能力の強さにもよるが、給与はかなり良いらしい。


 ざっとこんな感じだ。あと、フォルティス=アカデメイアは長いので、『フォルテメイア』と略されて呼ばれているらしい。フォルテメイア……かっこいいな。


「取りあえず、知っておきたい事は大方調べ上げたし、あとはのんびりと過ごしましょうかね……」






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