嫁 ヨシエ （オリジナル地元言葉 バージョン）

威圧

　今度、家族だけで法事をすることにした。

　檀家になっているお寺にお願いするといつものように伴僧と二人でいいですか？と言われその時は承知した、が、法事の１週間前になってヨシエが会社で、「身内だけの法事なら伴僧いらんがでない？」と言われメールを送信してくる。

　かくかく云々、最初に確認されたので「わかりました」と言った経緯を説明したら、「何でその時、“一人でいいです” って言わなんだが！　伴僧代で焼肉行けたがに！」

とキツイお叱り。

　そんなとき弟から電話がかかってくる。

「何年か前の法事の時、ヨシエさんに『あんただけやわ、あれだけ大きい50回忌でご仏前がたった１万円やったが！』いうて言われたけど、今度はどうすればいい？」

と相談してきた。

　まあ、家族だけやし、今回はお座敷もないし、記念品もないけど、だからいうて手ぶらも何やし、今度こそ１万円くらいでいいがでない？ と言いながらも不安になってヨシエにお伺いを立てたところ、

「今回は身内だけやからご仏前はいいちゃ」

と言う。そうか、それならアンタから弟にメールして安心させてやってくれと伝えたら、ＣＣで

「私 50回忌に何言うたか覚えてないけど、今回は内輪でお経あげてもらうだけで御膳も引き出物も何もせんからご仏前はよいから。いつになくお気遣いいただいてありがとね。でも御膳以上にいつもおもてなししとるしね」

と遠慮しながらも安心ではなく威圧感たっぷりの内容。

　さらに３日後、隣町の菓子店に、会社帰り、お寺のお茶菓子を買ってくる指令が出たので訪ねたところ店の明かりが消えている。ここで帰ったら

「なんでダメもとで電話してみんが！ 子供の使いじゃあるまいし！」

と言われることが目に見えたので

「つかぬ事を伺いますがお店の営業時間は何時までででしょうか？」と電話したところ、５分くらいしか超過していなかったこともあり

「よろしければ今から開けましょうか」

と親切な応対。帰っていきさつを話すと

「信じられん！　自分、いったい何様や思っとるが！　私やったら何も言わんと出直すわ」

　２人はどこまでも噛み合わない。