　モリタの父の食事は決して行儀が良いとは言えない。カレーの皿はなめるし、ラーメンどころかざるそばのつゆまで飲み干さないと気が済まない。味噌汁･お茶を飲むときは、どんなにぬるくてもズルズル音を立てる。

　ある日の夕食、献立はカレー、ハムカツ、トコロテン（統一感ないなぁ）。テーブルには各自、箸とスプーンが用意されているのに、父はカレーを箸で食べている。嫁･ヨシエが

　「せっかくスプーン出したがに」

　と言うと、スプーンに持ち替えるが今度はそのスプーンでトコロテンをすくう。

　「おじいちゃん、箸あるやろ！」

　「おお、そおやった」

　と言いながら、最後はハムカツを手でつまんで食べた。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2012年8月

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