その4

「へえ、すごいじゃない」


 衝撃波で周囲を破壊しないように、自分の身体だけじゃなくて周囲の空間も魔力障壁で強化させてから、ぎゅんぎゅん風を切って空を飛んでいたら、また遊びにきていたサリー姉ちゃんが感心したように言ってきた。


「ざっとの感覚で言うけど、時速二万四千五百キロはでてたわ。マッハ二十。大陸間弾道ミサイルICBMの終末速度とほぼ同レベルよ」


「それって速いのか?」


「ものすごく速いわよ。ほかの親族たちに自慢してもいいでしょうね」


「天界とこっちの世界を瞬間移動で行き来できる女神様に速いなんて言われてもピンとこないんだけど」


「何言ってるの。私なんて普通に走ったら百メートル二十秒かかるわよ」


 サリー姉ちゃんが空を飛びながら近づき、翼を畳んで地面へ降りた俺の背中に腰かけた。俺の身体をポンポンと叩く。


「それに、身体も大きくなったしね。もう二十メートル超えてるんじゃない?」


「それくらいはあるだろうな」


 俺は自分の両手――というか、両前足を見た。サリー姉ちゃんが族長たちに俺の素性を話したときから合計で六年たっている。その間に俺も成長した。


「まあ、ゴールデンドラゴンはマックス三十七メートルくらいまで行くから、まだまだ成長途中だけどね」


「は? そうなのか?」


「そうだけど?」


 俺は首をひねった。俺の両親は五十メートル、族長は百六十メートルある。


「じゃあ、あの」


「あなたの両親はエルダードラゴン、族長はエンシェントドラゴンって言って、ちょっと特殊なのよ」


「ふうん」


 自転車と自動車と戦車みたいな違いなんだろう、と俺は考えることにした。


 それから一年、俺はドラゴンの姿でこの国の地形を見てまわったり、ひとりでも生きて行けるように、親父と本格的な格闘訓練をしたり、ほかのモンスターの生態を勉強したりした。


 そして十七歳になったとき、俺は人間の世界へ行くことにした。


 偶然にも、俺が前世で死んだのと同じ年齢だった。

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