世界観がごちゃまぜ
私の目的は、世界の脅威を取り除き、神レベルを上げること。
その為には、
だけど、
神様の力は使えなくなるし、この世界についての詳しい記憶も封印される。
これってやっぱり、大神様──私を神様にした神様としては、せっかく自分で作った世界なんだから、その住人になって楽しんでね……ってことなんだと思う。
それに、どれだけ酷い世界になったとしても、ここで取り戻せるチャンスがあるっていう風にも考えられる。
つまり、私が頑張れば、殺伐とした世界を修正して、最初に思い描いていた『夢と希望に満ちたファンタジーな世界』に、変えられるかも知れない。
ホント、できればいいな……
迎えに来た二人──トキヤとゴウに連れられ、仕方なく私は王城へと向かう。
一夜明けたのに、街にはまだお祭り騒ぎの余韻が残っていた。お酒を飲んでいる人たちをチラホラ見かけるので、今日もまた大騒ぎになりそうだ。
私が王都に来たのは、世界に脅威を与えるモノ──
だから、この国のことはほとんど知らない。
途中で聞いた話では……
ここが
……現実逃避をしていても仕方がない。
「ねえ、トキヤ。昨日、聞きそびれたんだけど、なんで私、王城に呼ばれたの?」
「すまない。理由までは聞かされてないんだ。いきなり俺たちに、
「だったら、王都に到着してすぐに分かれたから、どこに行ったか分からない……って、答えればよかったのに」
「俺もそう思ったんだけど、なぜか、宿の世話をしたことまで筒抜けだったからね。惚けても無駄だって思ったんだ」
そこまで詳しいとなると……
「お、おい。なんで俺を見てんだ? 俺を疑ってんのか?」
「えー、だって、そんなことまで知られてるなんて、やっぱり変だよね? 二人のうちどっちかってなったら、やっぱり……ねぇ?」
「言っておくが、絶対に俺じゃねぇからな」
「容疑者はそう言ってるけど、トキヤはどう思う?」
容疑者って……と呟くゴウを無視して、トキヤの答えを待つ。
実のところ、私はゴウが人に話したとは思っていない。
もちろん、トキヤも。
「豪は、報告の時に一緒だったし、その後、すぐ部屋に戻って爆睡してたから、人に話すタイミングはなかったと思うよ。それに、豪の性格だからうっかりぐらいはあっても、約束は守ろうとする男だよ」
なかなか、微妙な評価だ。
「まあ、そうよね。ごめんね、さっきのは冗談。私もゴウを信用してるわよ」
「うっ……」
一瞬、怒鳴り返そうとしたゴウだけど、複雑な表情を浮かべて沈黙した。
生き残った兵士の中には、お祭り騒ぎに繰り出した人もいると思う。
お酒が入って武勇伝を話す人も出てくるだろうし、つい勢いで、私の事を話す人がいてもおかしくはない。
たとえ私の事を話したとしても誰も信じないだろうし、酔っぱらいの戯言だって聞き流すような内容になると思う。
……なのに、それを真剣に受け止め、当日のうちに私の事を探り出した人物がいるっていうのは、少し気になる。
それに、王城に呼ばれたってことは、権力者に近い人物なんだろうけど、そう考えると不安にもなる。
「二人に、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「何かな?」
「ああ、何でも言ってくれ」
本当にいい人たちだ……
真剣に私の役に立とうとしてくれている。
「お城に着くまででいいから、この国のことを教えてもらってもいいかな。お城の偉い人と会うんだったら、何にも知らないっていうのも失礼かなって」
「そうだね」
「おう、任せてくれ」
話を聞き始めてすぐに、私は勘違いをしていたことに気付く。
ここは、水上国の王都なのは間違いないけど……
私は、外壁に囲まれた部分が王都だと思っていたけど、違うらしい。
外壁周辺の田畑が広がる平地も含めた、この安月盆地全体が王都なのだそうだ。
盆地の端の各所に関所があり、そこの内側全てが王都ということになる。
外壁に囲まれた部分は王都の一部で、これを安月京と呼ぶらしい。
つまり、私が発見した時には、すでに
それを倒して、安月京と、その中にある王城を護った……というのが正しい。
その結果、王都が護られた……ってことには、変わりないんだけど。
王様は、第二十四代国王、
漢字で書くと、私の名前とひと文字違いだった。
この国と同じ苗字だったから、ゴウやトキヤにも苗字を名乗らなかったのに、これだとますます名乗り辛い。
だったら偽名でも考えようか……って思ったけど、後でバレて怒られるのも、なんか嫌だし恥ずかしい。
それにしても……
制約だらけの神様だけに、全く介入ができないことなんだけど……
日本風の名前や言葉、風習なのに、城主や当主じゃなくて、なんで国王なの?
お城や城塞は洋風なのに、なんで田園風景は日本っぽいの?
途中で見た小屋や家は和風なのに、なんで宿は洋風なの?
なんていうか……
世界観がごちゃまぜなのが、すっごく気になるし、それを私が作ったんだって思ったら、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
とても、他人(他神?)には、見せられない。
二人の話を聞きつつ、そんな事を考えているうちに、とうとう小高い丘に建つ王城に到着してしまった。
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