いけいけ、たくしぃ~ 7

 四家紋・東西南北。

 それぞれ、共通して言えることは、青龍の守護者だということだ。


 教育・教養・知識の、神の使いである。


 人、一人の一生では、到底、得ることができない知識を、龍は、おさめており。

 その知識を更新、検索する能力を。

 北大陸の守護者達は、龍紋を経由し、使うことができるそうだ。


「ナビィ。つまり、すごくアナログな、インターネットなの?」


「……。 言い返す言葉が、見つからないぐらい、その表現で、あってますねぇ~」


 教養は、ひどく伝わりにくいモノだ。


 同レベルか、それ以上の知識、教養をもった者にしか。

 相手が頭が良いのか、悪いのかの判断が、つかないからだ。


 人間性は、別の話である。


 誰もが、そんなことは、できないと言ってる中。


 一人だけ、そんな事はないと、言ったところで。

 ただの変人・奇人の類と、思われるのと、同じだ。


 だから、守護者には。

 守護者だと、分かりやすく、証明する方法が与えられている。


「それが、あの力って、わけなんだね」


「そういうことだよぉ~」


 この世界の魔導士は、大地にある魔力を「魔法」によって、形にするものだ。


 そして、魔術師とは。

 己の持っている魔力を使い、「魔法」とは異なる「術」を使う者たち。


 「魔法」は、扱いを覚えれば、制限こそあれ、誰でも使えるが。

 「術」は、素養のある個人にしか使えない。


「うん。話そうとしている、ベースは、理解した。

 それで、あの力は、なんだって言いたいの?」


「その二つを、こえるものだよぉ~」


「ん? アリサ、そろそろ普通に戻ったの?」


「え、なんでぇ~?」


「バカにしているでしょ? 普通に」


「ち、違うもん!」


 魔導士は「魔法」が、あれば誰でも使え。

 魔術師は「術」を、編み出していけば、可能性は無限大だが。


 二つに共通して言える、絶対のルールが存在する。


「人は、人以上に、なれないんだよぉ~」


「その口調で言われると、すごく、腹が立つね」


「私は、さっきから。

 コトあるたびに、頭をなでる二人のシーンを、見せつけられるたび、ですけどね」


「え、えぇ~?」

「えらい、えらい」

「えへへぇ~」


「そろそろ、琴誇のお顔を、お叩きして、よろしいですか?」

「僕なのか…」


 一定以上の力。

 一定以上の規模の魔法・魔術を行使するには。

 それ相応の準備と、リスク・犠牲が、付きまとうらしく。

 そう簡単に、アリサが放ったような規模の魔法・術は、使うことができない。


 だが、四家紋である、龍紋・所持者達は、この限りではないのだ。


 体を、人以外の龍とすることで。

 人には、越えられない境界線を、いとも簡単に、こえていき。

 高度な「魔法」や「術」を、息を吐くように実現させる。


「で、その代償が、コレなわけですね。

 もうイイから、早く終わらせる方法を、教えてくださいよ」


「ナビィが、かなり、ご立腹だから。

 もう少し、駆け足でよろしく」


「はぁ~い」


「その、少し不機嫌そうなのが、また、腹が立ちますねぇ~」


 龍の守護神としての役目は、教育・教養・知識を広めることだ。

 けして、力業で、人を、ねじ伏せるコトじゃない。


 四家紋を証明する方法として、分かりやすい「力」が、与えられているが。

 戦闘を行うことは、良しとしていない。


 良しとしていない行為が、必要な時もあるだろう。


 だが、乱用は、青龍の目的から遥かに遠ざかり。

 戦いは、赤龍の領分だ。


 乱用させないため、ブレーキ・ペナルティ・リスクを。

 四家紋、龍紋所持者四名には、与えられている。


「私は、ねぇ~」

 ナビィは、冷たい目線をアリサに向け。


「もう大体、分かりますよ。

 子供の頃から、押さえつけられた。

 甘えたい気持ち・褒められたい心・わがままが。

 我慢できなくなるんですよね?」


「琴誇~。ナビィちゃんが、冷たいぃ~」


「かまってちゃん、落ち着こうか」

「えへへぇ」


 撫でれば、上機嫌になる、チョロインに。


「琴誇、ツバ吐いて良いですか?」


「ダメだけど。 良いって言ったら、どうする気なの?」


「リアルに、唾液を吐き捨てますが」


「自ら、車内を汚しにかかって、どうするの!?」


「もう、泥だらけだから、少しぐらい汚したって、かまわないじゃないですかぁ~」


「本気で言ってる?」


「私のツバなら、喜んでなめ取れば、イイじゃないですか?」


「笑顔でなにいってるの? 僕に、そんな趣味はない」


「私の裸体も?」


「よしアリサは、一旦、落ち着こうか」


 アリサは、しゃぶった自分の人差し指と、琴誇を見比べ。


 ゆっくりと。

 琴誇の顔に向かって、人差し指が、進行を開始した。


「ちょい、ちょい、ちょい!」

 

 琴誇は、ベッタリと運転席側のドアに体を張り付け。

 指先が触れる、すんでのところで、回避に成功する。


「何しようと、してるのかなぁ?」


「なんか、楽しそうだったからぁ~」


「なにが!? なにが、そんなにお気に召さなかったの?」


「ツバ、舐めるんでしょ?」


「そこ、拾っちゃったの? 拾わなくて良いからぁ~」


「楽しそうなんだもん!」


「早く、そのテラテラに光ってる指を、引っ込めなさい」


 と、アリサの伸ばしきった手は。

 体を使い、再度、進行を開始した。


「なんでぇ!?」


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