第二章 幼馴染の問題 後編
第27話 彼女の相談内容と奇跡のルート
灯からの相談をうけ一段落ついたところで、俺は家に帰ってきていた。
手洗いうがいを済ませ、冷蔵庫にあるお茶の入ってる入れ物を取り出す。
「ガチャ」
最近の冷蔵庫はすごく、冷蔵庫の表面に表示されているボタンを押せば、自動で開くようになっている。着々と時間も文明も発達していってるのだ。
しかしながら、一人暮らしの俺にとって冷蔵庫がある時点でありがたいので、進化した冷蔵庫がほしいなんて口に出せない。
食器棚から一つのコップを取り出し、俺はお茶を注いだ。
「チョロチョロチョロチョロ、、、、、、、、、」
一人遊びの達人な俺にとってはお茶の注ぎ方にも面白さを求める。お茶の入れ物を上下に動かしながらコップに注ぐ。これ割と楽しいぞ。なぜか一流のシェフみたいな気分を味わえられる。
コップに入ったお茶の透明さになんとも言えない気持ちになると、そっと口に運ぶ。
焦燥した気持ちを落ち着かせるにはお茶が一番いいのだ。
そして、俺は椅子に座った。
そして、俺は、、、、、、、、、、。
灯から聞いた話をまとめるとこうだ。
俺の過去と同じ事件が灯のクラスで起きたそうだ。花木斗真かなんだかわからんがそいつがまた暴れたらしい。それにクラスの連中が合わせ、二の舞いが起こってしまったとそう言っていた。
それを聞いた俺は自分が情けなくなった。
だって俺はずっと前から気付いていたことに目をそらし続けていたからだ。
なんもあの問題は解決していなかったからだ。俺がしたのは解消。
再三自分に問うて、わかっていたことに目をそらし続けていた自分が、情けなくて仕方がなかった。
「他にも方法があったのではないか?」と、先生が言ってくれた言葉を思い出す。
俺は信用できなかったといった。だけども本当は、本当は信用できなかったのではなく、
自分ひとりでなにかやるその傲慢さに憧れを持っていて、それに気付きたくなかったのではないか。
信用なんてカッコつけた仮面ではなく、もっと剥がした先には自己主張の塊だけ残るのではないか。
と、そんなことを思ってしまったからだ。
わざと自己犠牲をし、その悪のヒーロー的なことをやってみたかっただけなのだ。
俺はただそれをしたかっただけだった。
幾年か経って改めて気付いた。
でも、今の俺ではこの方法しか思いつかない。
他に簡単な方法があると誰かが神様みたいな絶対的な存在を論理的に説明してくれたら納得する。
でも、そんな方法なんてだれも知らないから間違ってるとわかっている方法をするしかないのだ。
そう。
それしかわからないんじゃない。それしかできないのではない。
それが俺の自信のある答えなんだ。
自虐的にその言葉を心のなかにつぶやく。言葉という汚水で俺はまた自分の心を汚す。
元々汚れていた心には何の変化もなく、ぼっーとそこに在る。
なんだか自分の存在を虚しく感じてしまった。こんな気持ちは中学のいじめで引きこもった以来だ。
人間というのはこころも疲れると体も疲れて来るようで、自室のベッドに倒れ込んだ。
できるだけ、現実なんてものには戻りたくはない。
夢という幻想的な世界に閉じ込められて、自分を閉じ込めて、そこにいて大丈夫だよって言ってほしい。
そう思った矢先、俺は、
頭の片隅においてた言葉を自然と思い浮かべていた。
「本当のやさしさ」
「自分が動いた理由」
灯と先生からもらった言葉の数々。
2つの言葉の交点には何が在るのだ。
そして、あの日の、あの時間の、彼女のあの涙。
それらの意図するものとは。
複雑な方程式も必ず答えは存在するが、人生というのは答えはない。
ありえないほどの仮定が存在し、ありえないほどの終点が存在するこの世界に
存在する奇跡のルートはどこにあるんだ。
誰か、教えてくれ。
俺を助けてくれ。
天国
「はぁー。薫さん、あなたってバカなんですか?」
可愛らしく、また大人っぽいその矛盾する声に、閉じていた目を開ける。
「意外と、頭いいほうなんだけどな。でも、あれだ。感情面とか、そんなのわかるわけねえだろって思うだろ。」
「それは、やっぱり国語の勉強が足りてないのでは?」
「お前に言われたくねえよ。気分屋のクソ野郎。」
「私、クソ野郎じゃありません。神様です。一回薫さん神様っぽい扱いしたほうが見のためですよ。いつでもあなたの運気を下げれるんですからね。」
神様っぽいってなんだよ。なに?宗派を変えればいいの?
「どうぞご勝手に。もともと運気はマイナス値だからな。今更下げられても変わらん。変わらん。ってか神様っぽい扱いってなんだよ。」
「呼び方を変えるとか、それとタメ口なのがまずおかしいですよね。下等生物である人間の中のカースト低い人がわたしにタメ口きくとかそれはもう。わたしじゃなかったら、存在自体なくすのは当たり前です。」
こえーよ。それが日常的にあるのか。この天国は。でもサラッと言って受け流したけど、俺割と顔はいいし、勉強もできるからクラスカーストは高いと思うよ。性格がちょっと悪いだけだからな。いやあー。来世は、ゴキブリかなにかに生まれ変わるのかなあ。
「ああ、もう分かった。分かった。そんなことより頼みたいことがある。」
「ものを頼むときの態度を知っていますか?寝ながら言うものではないと思いますが?」
た、確かにそれはそうか、かな。知らんけど。
俺はもちろん知っている。人にものを頼む態度なんて知り尽くしている。土下座もなにもかもも中学生時代にマスターしたからな。や、やってやるよ。
姿勢をお越し、俺はズボンの裾を直し正座で座った。もちろん手をももの上においてある。
「幼馴染をいじめから救いたい。俺を助けてくれ。アルテミス。」
「はい。もちろんです。」
彼女はキレイだった。
やっぱり、お前は笑顔が似合うぞ。気分屋の神様。
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