第28話 天界(わかんないのでX回目と仮定する)

彼女の笑顔は美しいと言っても過言ではない。だが、その笑顔だけで性格の悪さを補えられるかと考えてみたら、また別の問題が発生してくる。

神様だとしてこの凸凹感は否めない。







要するに、この世には完璧なものなんてのは存在しないのだ。

                            柊薫



↑こうしとけばどんな言葉でもかっこよく見えるのである。しょうもねえ。









天国



「薫さん。最近面倒事が多くて大変ですね。まるで、何でも屋さんみたいです。」

アルテミスは厭味ったらしく口を曲げていた。


「こんなことになる原因なんて一つしかないと思うんだが。」


「原因とは?一体何なのですか。気になりますね。」

俺をバカにしたような話し方で聞いてくる。


「お前しかいねえだろ。なんだ、この世にある面倒事俺にふっかけて楽しいの?」

恨めしくそう言うと、アルテミスは


「私のせいじゃないですよ。それは被害妄想です。」

と言い、

バカじゃないの?という目で俺を見てくる。

じゃあ何なの。俺の行動がすべて面倒事を引き寄せてるの?二次元でも見たことないくらいの巻き込まれ体質じゃねえか。俺。俺が実は巨乳好きとかと同レベルのいらない設定だよ。クソ野郎。ちなみに貧乳の方ももちろんイケる。どうでもいいですよね。ごめんなさい。

で、なんの話、してったけ?


「じゃあ何なの?俺が悪いの。」


「まあ、悪いし、別に悪くもないです。」


お前、曖昧なこと言ってねえで、早く教えろよっと言おうとした矢先。アルテミスはそれを切り離して、言葉を繋げた。


「結局は結果論なんですよ。この世は結局なんとかなるの一言に尽きます。だって私達神様がそれを調節してるんですから。」


「なんの話だ。」

話している領域が異次元すぎて内容がうまく汲み取れない。


「要するに、人々に降りかかるトラブルや悩みはすべてその人自身で解決できるようにうまく調節されてるって意味ですよ。レベル1の村人がレベル100の魔王に勝てるわけないじゃないですか。うまくこちら側が調節して人生を楽しめるようにしてるんですよ。」


アルテミスは当たり前かのようにぼそっと言った。


「天国は平等に簡潔にシステムが形成されています。だから、できるやつにしか問題をふっかけない。出来ないやつは些細なトラブルを。ね。簡単でしょ。」


ニコッとアルテミスがウインクをしてるのを無意識に無視をして、疑問点を彼女に伝える。


「ってことは、みんなみんなトラブルを絶対抱えているってことなのか?」


「言っちゃえばそういうことですね。」


「じゃあ神様的能力でそのトラブル減らしてくれればいいじゃねえか。」

っと、俺はぼそっと呟く。これをすれば問題によって死ぬやつなんていないし、お前らの負担が減るじゃねえか。


「無理ですね。私も上に掛け合ってみたんですが、色々な問題があって出来ないと切り捨てられました。」

そう言っている彼女の姿は、大人びた容姿に反して子供っぽい儚さを感じた。


「天界の人ってまあ人間たちがどんなすごいことをしても、がないんです。」


「そりゃーそうか。生き物の種類も違えば、神様たちはずいぶんとお偉いもんな。下等生物である人間に興味はないか。で、それが今の話となにか関係あるのか?」


「興味はないは言いすぎましたが、どうでもいいものなんです。だから、あなた達がいろんなトラブルをくぐり抜けて成功する様はこっちにしてみたらゲームをクリアしたみたいな感覚なのですよ。言ってしまえば娯楽ですよ。」


「ああそういうことね。」

俺はスムーズに理解できた。こいつら神様は、人間が頑張ってクリアする様を見たいがために問題を渡して試す。それで死んだら、死んだで終わり。クリアしたら、したらではいはい良かったねで終わる。

そういう感情を手に入れるためにトラブルの減少は避けたいんだな。


俺達人間で考えれば、ゲームがあるのが当たり前の世界で、いきなりゲームが無くなったみたいな感じだ。ゲームがなくなったらどうなるかなんてそりゃ不満が溜まるよな。


「喜怒哀楽を得るためにしか使わなかった人間とよく神様は結婚できたよな。」

俺はあいつと出会ったときの昔話を思い出してそう告げる。


「そうですね。私もびっくりです。なんで。。」

刹那、彼女がさみしい顔をした。勘違いな訳では無いのだろう。


「どうした?なんでってなんだよ。」


「いや、なんでもないです。」

彼女が話を切り出さないということは触れてほしくない話なのだろう。


優男として定評がある俺は、空気を読むこともできるのだ。ベストマン。誰かもらってくれてもいいんだよ


「じゃあ、お前はなんで人が死ぬことということがそんなに嫌なのだ。ゲームに例えるとただゲームオーバーしただけだろ。」

そう優しくつぶやく。


「母の教えなんです。母は人間のことが大好きなんです。」

そう自慢するように彼女は明らかにトーンをあげて喋っていた。

彼女によると母は人間について研究していて、いくつものの謎を解決していた。

書いた本も天界ではとても人気だったそうで、いろんな図書館で保存されている。

まあ、所謂聖母みたいな感じか。マザーテレサ的な。


その時代において下に見るのが当たり前な人間を彼女の母は自分と同列として考えていたらしい。

そのことに若干というか大分、すげえと思っていると、彼女が話しかけてきた。



「母に言われたんですよ。人間というものは謙虚だって、ここ数年でいろんなものを進化させてきたのに、何も威張らない。そして、また進化するために研究するって。その意欲さも賢さも誇るべきものだって母は何回も何千回も言っていました。」


そう楽しそうに喋る彼女が、いつもの彼女と違って何千倍も可愛く、完璧であった。

って、おい。数年って言いやがったなこいつ。時間の感覚がやっぱ違うんやな。


「そうか。すごくいいお母さんなんだな。」


「そ、そうですよ。そうなんですよ。」

彼女は少し冷めた仮面みたいな笑顔を貼り付け、そう答えた。


仮面の先には、どこまでも続く深淵みたいで覗くのを躊躇われる。


お前を何を思ってるんだ。


「まあ話は戻りますが。」


「あなたに降り掛かってる問題は全部あなた自身で解決できるレベルに在るのです。その問題のENDは諦めず探したら必ずあります。生徒会事件や、過去のいじめの事件だって。あなたは色々巻き込まれながら結局end終点には着き、なんとなく敵キャラの行動を抑えました。だから、今回も大丈夫ですよ。多分ね。」


「そこは絶対とか勇気付ける言葉を言ってくれよ。多分ってなんだよ。多分って。一気に不安になったわ。」

っと、笑いながら言ってやった。


「だって絶対は、絶対にないんですから。」

アルテミスも釣られて笑いながら言う。


「私が言えるのはここまでです。問題に直接関わることは言わない主義なんで。」

胸を張って彼女はそういった。訂正だ。彼女の胸は張るどころか、存在しなかった。

ここで、アルテミスが貧乳キャラという設定が付きました。くそどうでもいいわ。


「ちゃんと理解してるよ。お前の口が硬いことも、昔の俺の無神経な発言も。」

わかってるよという口調で彼女に目線を渡す。


「そうですか。わかればいいんですよ。わかれば。」

ホントこいつの発言にはいちいち棘がある。汚い言葉をいつも飲み込んで、耐えてる俺の気持ちにもなれ。いつかどっかから出てきたら責任取れるのかお前。



「では、薫さん。あなたはどんなENDをお望みですか?」

先程の厭味ったらしい笑顔を彷彿とさせるその顔をみて自然と言葉が漏れる。


「出来れば、みんなが助かるHAPPY ENDで。」

俺はそう言った。自然と、反射的に吐いてしまった言葉だからそれが俺の本心なのだろう。


「私、アルテミスがあなたの道を月の女神として照らして上げましょう。ご武運をお祈りします。」


そう、彼女は言ったあとまた、現実に戻る用の演出が出た。


この演出やっぱ気持ちいいんだよな。




追記

初めて神様っぽい行動をしたアルテミスに若干驚きました。















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