第25話 白と黒とグレー 中編
放課後に何をやってたかと聞かれると、そんなのは無論俺が今からする解決策の計画準備をやっている。詳細は。なんて無粋なことを聞いてこないでくれ。
というのも、これが解決法のもう種明かしというものになってしまうからだ。
みんなだって映画のネタバラシを受けたらショックを受けるだろ。そういうやつだ。頭を使ってうまく適応してくれたらそれでいい。叙述トリックなんて俺にはできないからな。
というかあれ、なんでできるの。なんの違和感なく普通の日常を描きながら、その中に答えを仕込ませるなんてそんなのもう天才の粋だからな。というか天才な変態だ。
そんな、妄想、幻覚、短絡的な、バカみたいなことを想像しながら、俺は作業に取り掛かっている。
じめじめしたこの天気にも慣れたかと思えば、もう誰もいないこの放課後は教室のエアコンなんて消されていて、一歩間違えば熱中症になってしまうほど暑苦しかった。
滴る汗が頬を伝り最終的には床に雫みたいに儚く落ちる。泥臭く作業に勤しむ俺の姿はまるで甲子園に挑む、野球部の連中と一緒だ。というか、それしか青春を表現する比喩が思いつかなかった。で、俺のこの状況から青春なんて言葉が適しているのかも怪しい。いやもう、青春、汗、恋愛なにそれ美味しいの。
でもまあ
頑張った末に何も成し遂げれないのが一番つらいし、今まである物事に捧げていた時間さえも疑ってしまう。でも、実際は満足できればいいのだ。自分はこのくらい頑張ったから次に生かせる、などの努力したという圧倒的事実だけが頭の表面上に置かれそれに甘えてしまう人間のほうが多いし、実際俺もその経験の方が多い。
でも、その表面的な壁で遮られ、消えてしまったあることがなくなってしまっていたことに誰も気づかない。
それが諦めた人間の末路だ。その事実だけでは満足できなかった人間だけが、夢を叶えられる人間なのではないかと思う。
そして、そのあることが、その人間の本物になるのだ。
降る雨は止むことを知らず、さっきよりも勢いを増してるくらい。
そろそろ、作業も終盤に差し掛かったところで時刻を確認する。
教室の窓から見える外の景色に懐かしさを覚える。そう俺が、昔手に入れていたものだ。
もう、みんなは部活が終わってる時間。帰り道、仲つつましそうに喋る人たち。
どれも、これもキラキラしていたあの頃。手に入れようとも、手に入れなくなったあの頃。
やっぱ、こんなにすぐなくなってしまうのは、ちょっと惜しいな。
最後の仕上げまで完成させて、俺は扉の外に出る。懐かしいあの頃の空間から弾きだされるように。
俺は廊下を歩く。ザァー、ザァーと降る雨音を聞きながら。
途中、俺は同じクラスメートにあった気がするが、今はそんなことも忘れてぼっーとしていたい。こんな日くらいは休ましてくれよ。神様。
「ちょっと。これどういうこと。」
私はこの机をみて驚く。
部活帰り、忘れ物に気づき教室まで帰ってきたときのことだ。
柊薫の机に数多なる暴言が隅々まで書かれていた。
いま、こいつはいじめられている。
私も、もう加害者でもあるが、しかし私だって被害者でもある。あいつにめちゃくちゃ言われた被害者だ。
今まで、先生がいない水面下で、こそこそいじめというか、正義に順したバツを与えきたのに。どうして、こんなことするのよ。誰かなの。空気が読めないお馬鹿さんは。
私はネープペンで書かれてあるそのものにアルコールをかけて消そうとすると、あることに気付く。
いや、ちょっと待てよ。
さっき私はあいつにあった。
ひょうきんな顔をしたあいつを確かに見た。
ってことは、これはあいつの仕業。
今まで、問題にされてこなかった自分のいじめを、今度こそ表面的な問題しようという企みか。
「そうはさせないわよ。薫。」
彼女も、さぞ賢い子であった。
彼女は賢い子である。でも俺はもっと賢い。
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