閑話 彼女の涙は彼には届かない。

彼女が泣いた。

空はもう、橙色に染まっており、気がつくともうそろそろ最終下校時刻を回ろうとしている。


もう、夏も本番に差し掛かっており、ムシムシとした肌触りだが、ときたまにくる青風がとても気持ちがいい。  


校舎の屋上、彼女と俺の二人だけ。


対極した二人にはもう、幼馴染なんていう称号はなく、何にもないただの他人になってしまった。


彼女のすすり泣きの声だけはやけにゆっくりに聞こえる。彼女は泣いていた。


俺が歩いて近寄ろうとすると彼女はそれを拒否し、関わらないでと一言で追い返す。


夏のミシミシとした声や下校寸前の生徒たちの騒々しい声だけは響き、その涙は俺の中には何も伝わらず、困った表情を浮かべる。



彼女が泣いてる理由は露しれず、彼女の泣き声も泣き止まらず。


俺は彼女が一人孤独に泣いてる姿を俯瞰的に見ていた。




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