第18話 彼と俺

また普段と変わらない平凡で同様で凡庸な朝が来たようだ。しかし時間はゆっくり着実と進んでいるようで外に出るとむしむしとした肌触りで正に夏を感じる。青春と言えば夏と思い浮かべるほど夏は刺激的で、ある意味暑苦しい。そう意味ではもしかしたら、感じ方によっては非凡で不同な日々と思う人もいる。まあ俺が言いたいのはとても単純で、要するに人の考え方は十人十色ということであり、見え方によって感じ方が変わってくるということだ。授業でも習うだろう。人の意見を尊重しなさいと、、。といっても出来ないのが人間である。人間というものは同調圧力などの集団に関係するものにはめっぽう弱く、そういうことを理解しているあるいは、理解しないようにしてる人達はそういう集団に関する武器を使い数的不利の弱者の敵になる。そしてそういうものに破れた人間は、また集団を作り前記と同じことをする。そういうサイクルなのだ、、。

············じゃあ、いつになったら、人間は自我を持てるのだろうか。

 


そんなことを考えながら、俺は学校へ向かっていく。今日も普通に登校していきたいぼくチンは、何も起きないでくれと若干フラグっぽいことを願いながら、今日も足を動かす。しかし、そういう訳には行かないのが神様で、それはもう非情で何食わぬ顔で面倒事を持ってくる。そういった意味では神様は悪魔なのではないかと思う。っと、神様はまたなにかやってきたそうだ。



「薫。」

後ろから可愛らしい声で名前を呼ばれる。


「はあ~。何だ赤塚?」

また神様が何かをしたのか。っと思いきや、ただの幼馴染みだったことに一気に不安がなくなる。いつもみたいに、一緒に登校しようとかなんとかの誘いだろ。ヤダ僕モテモテ。


「きょ、今日も一緒に登校しよ。いい?」

若干強張ったような、何かを隠しているようなそんな声に戸惑いを隠せない。いやだってこいつ、こんな不安そうな声をいつも出さないし、誘うときなんて大体大声だからこの近所は全員俺らは付き合ってるっていう認識がもうついちゃってるんだよ。なのに今日はこんなありさま。何かがおかしい。


「一緒に、登校するのは全くもって問題ないんだが。それはともかくお前いつもみたいに元気がないみたいじゃないかどうしたんだ?」



「い、いや何でもないよ。…………って。言おうとしたけど。学校行ったらどうせわかると思うから、言うね。」

やっぱ何かあるそうだ。ひょっとしたら、、。また問題面倒事でしょうか。神様さんや。


「でも最終確認ね。薫のクラスって何組だっけ。」


「B組」


「だよねー。はあ~。じゃ薫クラスで嫌われてる人っている?」

だれか。思い当たる人物を脳裏に思い浮かぼうとしたけれど、残念なことに以外に思いつかない。というか、俺は一部の女子に意味もわからず嫌われてるから。理由もわからない。なので、俺が教室に入ると舌打ちするのは結構心に来てしまうのでやめていただけたら幸いです。


「俺とか。」

自分でいうものはとても虚しいが、実際本当に俺しか思いつかない。まあそれも一部だからな。本当に少人数に過ぎない。


「自分で言ってて虚しくならないの。」


「余計なお世話だ。」


「一応、幼馴染みだから喋っていたけど私の株もあるし薫と喋るのやめようかな。」

なに。こいつ。え、友情ってこんな形で崩れるなら。僕は友情なんていうガラクタはいりません。というか結局何が言いたいのだこいつは。内容がさっぱりわからなく、俺は混乱していた。



「はいはい。とてもさみしいな。はあー。そんなことはどうでも良くて結局何が言いたいんだお前は?」


「いいから。本当に最後の質問。薫が最近話していた男友達は?」

はあー。面倒くさいな。何が言いたいのか、何を伝えたいのか。頭が大変優れている御方の考え方はわからない。たぶん頭にパソコンとかついていて、因果関係とかも簡潔にわかってしまうのだろう。実際こいつ定期テストで俺を抜いて一位だからな。そう俺たち幼馴染みは高スペックなのである。パソコンだけに。すいません。


「いったな。本当に最後だからな。アンサー出したらお前もアンサーだせよ。赤塚。」


「はいはい。だから答えをどうぞ。」


「最近な。最近は、、。」

っと俺が思考の海に飲まれていると、、。


「テンポが悪い。こういうのは直感が大事なの。はいどうぞ。」



「谷口拓哉だな。」



それを聞くたび彼女はやけに暗い雰囲気を演出した。そこが暗く閉ざされて何もない空間みたいな。脱出口はなく。一生迷子になった幼い子どもみたいな。要するに怖かった。

いつもみたいなバカらしさがなく、いうなればなかったのである。しかし、それも本当の彼女であった。



「お、おい。おまえもテンポわりいぞ。何が言いたかったか。どうぞ」




長い沈黙が流れた。


この沈黙が意味するものはわからない。だが、良くないものということはひしひしと感じる。そんなの誰だってこんな反応みればわかるだろう。震えてるんだぜ。


「本当にその谷口ってひと?薫と仲いい人って」



「そうだが…………拓哉になんかあったのか?」




「言いにくいのだけど、、、。その人ね。XXXXXXXXXXXXXXX。」


は?


「だから私からの依頼はそれを止めてほしい。」













トントンと俺は肩を叩かれた。


「薫。」


「どうしたんだ。拓哉。」


「いや、まあ暇だったから声をかけてみただけ。忙しかったか。」


「俺のどこを見ればそんな印象を抱くのか疑問だけれど、、暇だよ。」


「なんか面白い話でもしようぜ。」


「面白い話ねえ。いきなり言われてもなあ。」


「じゃあさ、心理テストやろうよ。」


「あんなん、バーナム効果の一種だから、俄かに信じがたいのだが。」


「いいからさ。ねえ。やろうぜ。」


彼はやけに強く俺を誘う。


「もしも結果が悪かったら俺が嫌な思いするだけじゃん。良いことが微塵も感じられないゲームにわざわざ参加する野郎はいるのかよ?正当な理由を言え。」


「薫ってそんなこと言う人だっけ?まあいいや。正当な理由だろ。」


「例えば、そうだな。正当な理由ねえ。特にねえな。まあ薫と一緒に楽しめることかな。」






「はあ~。気持ち悪いな。お前って。なあ拓哉。お前ってただ薫の人気度に縋って自分の好感度をあげようとしているだけだろ。だから薫とつるんでいるんだろ。」


どこか薄暗く若干の嫉妬がこもったその声にクラスの全員が驚く。俺だって怖かった。これから起きることが、この先の将来がとても怖かった。


「ちっ違う。ただ単純に薫が好きだからだ。」

強く彼は否定する。


「気持ち悪っりいな。男子なのに男子のこと好きって言ってるぅ。」

どこか彼を嘲笑うようなその嘲笑は、クラス全員の空気をぶっ壊し、喰った。


「ふっ。それはねえー。」


「そうだねー。」


「「ちょっと気持ち悪いもんねえ。」」


何処かから漏れるその声は彼の心を突き破った。


「薫も、なんか言ってやれよお。」


「そうだぜ。ちょっとね。突き放した言葉とか。」


「いいんだぜ。親しき仲にも礼儀ありって言葉もあるんだから、ちょっとわからせようぜ。あ、もしかしてそんなに親しくなかった?」


クラス全員が嗤いの渦に巻き込まれる。




「イケメンの薫くんはやくうううううう。」





「テンポが悪いって。薫。早く言えよ。」





「ノリ悪いなあ。本当にせえの。」




「え、もしかして薫の方も。満更じゃない感じ?」




「マジでキッモ。」


「まあ薫にかぎってそんなことないよねええ。」


「いいから言ってやれよ。かおる。」


 


「分かった。言ってやるよ。」



「ふううううううううううう。」



クラスが拍手に包まれる。この感覚はすごく気持ち悪い。何故ってこれをおかしいことだと思わない連中がクラスの大半を締めているからだ。大半じゃねえーわ。俺と彼以外の全員だった。











俺は言われた通り背中を












彼ではなく

















彼らに向け、言ってやった。



「人間としての成長が追いついてないクソガキなお前らは、いつになったらこんな同調圧力みたいなものをせずに立派な大人になれるんでしょうね。僕チンは君たちの将来が心配だなああああ。あ、お前らにとても似合ってるというかそんなことわざを送るよ。それは」








「類は友を呼ぶっだ。ああ、ってかもう個人自体が腐ってるから別に意味ねええか。すまん。」









恥の多い生涯でした。





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