第15話 灯と薫
灯からのいじめの報告を聞いた俺は、何処かおかしく気分がとても悪くなっていた。中学の頃あんなに人気だった灯が高校生になりいじめを受けている。確かに中学と高校では違うところがあるのは勿論知っているがそれにしても灯がいじめを受けることなんてありえない。それは幼馴染の俺が一番わかっている。だけど、、。結果今いじめが起きているのは事実だ。それなのにまだ認められない自分が嫌だ。でも今一番きずついているのは紛れもない彼女自身だ。それなのに俺が、こんなに頼りねぇとかえって迷惑かけてしまうな。俺はちゃんとしなきゃいけない。ああ、もう。あいつと出会ってから色々起きすぎだろっ。クッソっ。
そんなことを考えていると時計はもう十二時半を指していた。こういうときの時間が進むスピードは本当にはやい。俺はすぐさま準備して目的地に向かった。
駅前にて
「ミーンミーン」
「ゲコゲコ」
虫の騒音が耳に届く。どうやら駅前にもこんなに虫がいるようだ。本当にすまない、控えめに言って気色が悪い。
だが、その音は初夏の知らせにもなる。暑さに弱いし、虫なんか大嫌いな俺はこんな日は外になんか出たくないのだが、。実際早く帰って、涼しい場所でゲームとかしていたい。だが、幼馴染の問題なので聞かない訳にはいかない。仕方ないことだ。それに灯には返せない程の貸しがあるからな。絶対にこの問題はハッピーエンドで終わらせなければならない。
そんなこんなで俺は、目的地のカフェに入る。冷房がかかってるせいかほのかに涼しい。
「あ、薫。」
先に店に入ってた灯が俺を呼ぶ。俺はそれに答えるように軽く頭を下げて灯の正面に座る。
さあ、いつも通りにして。
「おう。久しぶりだな。灯。」
わからない。自分でもいつも通りにできたのか。でも今言った言葉は何処か冷たくなってしまったと思う。
「うん。久しぶり。薫。へへっ」
っとはにかむように灯は答える。
良かった。灯の方はちゃんと元気である。
「なんか頼むか。」
「そうだね~。何にしよっかなあ。」
薫は俺が、見ているメニュー表を一緒に覗き込むようにしてみている。距離が近い。
「じゃ、俺はアイスコーヒー、一つ。」
「私は………いや私もそれで。」
「分かった。あの~。」
店員さんを呼ぶように声をあげる。店員さんはこちらに気付いたらしくすぐに向かってくる。
「アイスコーヒー2つで、。」
店員さんはまた何かに気付いたらしく笑顔で対応してくれた。
「はい。分かりました。」
顔もかわいいし、空気も読めるし、なんなら俺の彼女にならないか。そんなことをふと思ってしまった。よししっかり冗談も言える。ここまで順調に行けたけど、ここからが大変だと思う。
「………………………………」
お互い気まずいのか二人とも無言を貫いてる。そう、こっからの空気どうすればいいかわからん。すぐに本題に入るのはなんか気が引けるし、それと灯の問題ってかなりディープだろ。いきなり入っても空回るだけである。あと自分の気持ち的にも慎重にいきたいし。
話すとしても何から話せばいいんだ。今日天気いいなとかいう雑な話題か。でもなんかすぐ終わりそうな気がする。なんか昔も同じようなことあったなあ。あの時は俺だったけ。
色んな事を考えていると、灯がやっと閉じた口を開いてくれた。
「あのさ、」
本当にテンションがお互いに低い。ここだけ空気が歪だな。
「うん。」
「私いじめを受けてるんだ。助けてほしい。お願い。薫覚えてるでしょほら、あのときの集団。」
「まじかよ。まだ、やってるのかあいつら、。」
信じられない。忘れないに決まってるだろ。あんだけいっても直らねえってあいつら本当に変わってねえな。精神年齢が小学生低学年に止まってるのか。ってことは、、。
「あいつらの矛先がお前に向いたってことか。」
あいつらはいじめるなら誰でもいいからな。
「ちょっと違ってね。私が自ら向けたの。」
は?お前それって、、、。ちょっと言葉足らずな気もするが俺にはそれだけで伝わる。だって、、、。
「そのやり方をして失敗したやつがお前の目の前にいるしお前見てただろ。なんで、そのやり方をやったんだ。お前馬鹿かよ。」
語気を荒らげてしまった。どんなお人好しだよ。
「馬鹿ってなに。いじめられる人がいたら助けるのが普通でしょ。実際薫も助けていたじゃん。」
「それは。俺だからだ。俺が、このやり方をしたからってお前がそのまま同じ事をするのは間違ってるし俺が、失敗したんだからそれは愚行だ。」
「仕方ないでしょ。これしか思いつかなかったし、薫は確かに失敗したけど救われた人もいた。だから愚行って呼ぶのは違う。おかしい。」
まだ、そんなこと言ってるのか。お前あの時からずっと、、、。もう。本当にどんだけお人好しなんだよ。はあ、、。
「お前どんだけお人好しなんだよ。全く。でもさ一度間違えれば病むぞ。間違いなく。」
俺このやり方してな、一週間くらい深夜にひとり泣きしてたんだぞ。
「その覚悟できてんのか?」
灯は想定してない返し方をされたのか困っている。もぉ〜。こいつのことだからまた後先考えずに行動したのだろう。
「はあ~。人を助けるのはいいことだけど、やり方を間違えるな。結果的に自分も傷つくことになるし助けた人さえも傷つけてしまうかもしれない。自分が傷ついてるのを見てな。」
分かったか?と聞くと灯はうんと頷くように頭を振った。
「じゃあ、お前の高校では一体何があったんだ。」
俺はこの質問をずっとしたかった。
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これから薫の中学校時代の内容に入っていきます。お楽しみに、、、。
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