第12話 後編 生徒会長と柊薫
金曜日になった。結局、智樹はヘタレで告白は今日まで引き延ばしていた。
「今日絶対告白する!!!」
智樹はやる気に満ちている様子だった。いやでもこいつ昨日も一昨日もこんなこと言って結局やんなかったからな。そろそろウザくなってきた。でも、今回の問題はお前がどうするかでハッピーエンドになるかならないか決まるからな。最後まで諦めるなよ。
「ああ。めっちゃ応援してるよ(棒)」
「ああ、ありがとう。そんな事よりどう告ろうかな。」
「決めてないのかよ。まあ壁ドンだけはやめろよ。痛いセリフやくさいセリフも駄目だ。」
「ええ~。じゃあさ僕の太陽になってくれないかは?」
告白舐めてんのか
「お前それでよくOKもらえると思ったな。NGな」
「まじかよ。」
「ああ。そうそういつ告るんだ?」
「放課後に体育館で一発やるぜ。」
「あっそ。じゃあちゃんと最後まで諦めるなよ。」
「勿論だぜ。」
どこかこいつには妙な魅力を感じる。男らしさというかなんというか、俺が女だったらおちてたかもしれない。ひゃっ智樹エンドはやだよ。
「あとさ一人じゃ怖いから見に来てくれるか?」
前言撤回だ。魅力って何?美味しいの。
「了解。ってか元々そのつもりだったし。」
「え、あ、そうなの?」
「お、おう。」
え、なにこいつ。嫌な顔してるよ。はあ?
「じゃあ放課後で。」
「じゃあ。」
そろそろ最終準備しますか。もしもの可能性にかけて俺はやることがある。
はいはい来ましたよ。もう慣れたものですね。
3年教室です。ひゃっほーー
まだ名前を知らないけどあの先輩どこにいるかな?
「柊くん?こっちだ。」
明るい声の主はやっぱりあの先輩だった。
「じゃあこれを。」
例の物を俺は貰った。
「はあ、ありがとうございます。本当に先輩には感謝しかないです。」
本当に俺何してるんだろ。これ先生にバレたら退学決定だな。ていうか、バレたらあの先輩推薦取り消しになるところだったのによく協力してくれたな。気になったので質問することにした。
「メリットもないし何ならデメリットしかないのにどうして協力してくれたのですか?」
「なんか可愛い子の秘密を握りたいというかなんというか弱みを今のうちに掴んでたいの。」
うっわ。はあ~。こいつも駄目なタイプだなおい。俺の周りには変なやつしかいないのかよ。俺がめっちゃ引いた顔をしたのがわかったのか先輩は
「冗談だよ。クラスで人気なあの子の秘密を知りたいの。」
と言ってきた。いやいや変わってねえよ。それにしてもその理由だけでよくこの訳もわからんギャンブルにのっかったな。
「まあ本当に感謝しかないです。貸しはまた今度返します。」
うんわかったとだけ言って先輩は帰っていった。これを何に使うかは聞かなくてくれて本当に良かった。戸惑いが出てしまうからな。本当にありがとうございます。先輩。
放課後
授業のチャイムがなり全ての授業が終了する合図が学校中に響き渡る。みんなはこれから何をするのだろうか?自分の席に座わって窓を見ながら思考していた。多分帰って勉強したり友達とでかけたり部活をしたりそれぞれの青春を楽しむのだと思う。彼女も俺もみんなと同じような青春をおくりたかったと一度は思っただろう。しかし逃げて失ったものはもう戻らない。後悔したってもう遅いのだ。
だから取り返すしかない。時間がもうないのなら。一刻も早く。
俺はすぐさま体育館に向かう。息を切らせながら無我夢中に走り続ける。
あんなに短い距離の廊下なのに今日はなんだかとても長く感じる。体育館は運がよく今日は貸し切りだ。さあ、もうすぐだ。
「俺と、、、」
智樹の声が聞こえる。来るの早いなあいつ。なんなら全部が早い。告白も早い。
「どうしたの?智樹」
ああ、生徒会長は俺が一番嫌いな顔をしている。ってか俺が知らないうちに名前呼びじゃ!!言ってくれよ智樹。
そして場を覆す悪のジョーカーが放たれる。女神に暴れてこいと言われてるように。
ここで、ヒーローカオルの登場!!ヒーローじゃなかった魔王でした。テヘペロ
「ちょっと待ったあ!!!」
全体の空気が凍る。
シ
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ン
「あっれれれ。おかしいな。あんまり歓迎されてない感じ?」
二人の口がポカーンと開いている。
「ど、どうして、見てるんじゃなかったのか?」
智樹どうしてそんな冷たい視線を俺に送るの。生徒会長はまだしも。俺、ヒーローだよ。貴方達の恋のキューピットだよ。ヒーローは遅れてくるのが定石だろ。
「智樹、この人は?」
冷めたような目つきをしている。3人全員が。
「俺の友達の薫です。」
親友って言わなかったのには悪意を感じるなあ。
「僕は生徒会長に用があってきました。」
「薫空気よめよ。いっつも読めないのはわかるけど、今回はえんry、、」
うるせえな。
「黙れ。」
つい遮るような言い方になってしまった。
「うっ。」
「どうしたの?薫くん?」
怒ってるように感じる。
「僕生徒会長になりたいんですけど、。やはり生徒会長って成績良くなければなれないのですか?」
痛いところつかれたのか、顔が強張る。
「いや、別にそんな事は無いんじゃないのかな?カリスマ性というか。そういうのが必要だと思うよ。」
「へえ。じゃあ先輩は何で生徒会長になったのですか?」
「そ、それは社会でもしも前に出て話すことになったときのためにとか。まだいっぱいあるけどね。」
言葉って
本当に薄っぺらい。嘘でもそれらしく聞こえてしまうのだから。
「いや違いますね。あなたはそんな理由でなったとは思えませんね。あなたは自分が特別な人間になりたかったのではないのですか?」
「何で?そういうことが言えるの?あなたに何がわかるの!?」
息を整えて語を発する。
「わかりたくないですよ。はあ、、、。あなたは、元々成績優秀だったみたいじゃないですか?中学では学年トップと高校一年も成績トップ。でも二年生三年生では落ちこぼれになってしまった。まあここは一応進学校でもあるから、成績が落ちることなんて当たり前。でもあなたは許せなかった。」
やめて、やめてそれ以上は言わないでと懇願するように彼女はふるえていた。
「なんでかはもう分かりますよね。あなたは特別な人間じゃなくなったから。」
「あなたみたいなプライドが高い人が自分の自信に繋がるものが絶たれると、どうなるかそれは他人に自分の存在価値を認めて欲しくなる。だからわかりやすくかつ誰もが認める生徒会長という武器を身に付けた。でもおかしいと僕は思うのですよね。」
「何が?」
声はずっと震えている。智樹はただ呆然としている。
「高校生一年の頃は静かだったそうじゃないですか。なのに生徒会長にはなれた。二年生になってどんなに明るくなったっていっても最初の印象というものはあまり消えないのですよ。だから不思議なんです。どうやってたくさんの票を稼いで生徒会長になったのか?」
あのとき先生はいった。『水菜は顔がいいからな。それが関係しているかもしれない。』
理由はこれだけじゃないかもしれない。他にもあるのかもしれない。
「言いましょうか?それは、、」
今だぜ。相棒
「バシン!!!!」
体育館に鈍い音がなる。
痛ったいな。もっと優しくやれよ。
「薫、分かったよ。もうわかったから言わないでくれ。お願いだ。」
覇気がなくなった声がする。
智樹は、続けた
「それでも!!!!!あのとき君は助けてくれた。俺の事を。その事実だけは絶対に揺るがない!」
生徒会長の目には希望の光に見えただろうか。さあわからない。俺は生徒会長じゃないから。まあ俺には‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんてどうでもいい事を思ってしまった。でも智樹の姿が眩しく見えたのは彼女も俺も変わらなかっただろう。
「俺あのとき部活であんまいい成績出せずに病んでいたのです。でも先輩の言葉を聞いて立ち直ることが出来ました。本当に感謝しかないです。」
心が苦しい時にはやさしい言葉は驚くほどぶっ刺さる。
そういえば俺も助けてもらったな。あの時。ぼんやりと記憶に残ってる程度だが。
それでいい。
「あのときからずっと好きでした。俺と付き合ってください。」
やれば出来るじゃん。相棒。
「はい。こちらこそお願いします。」
涙を流しながら吐いた言葉はとても綺麗だった。
どこかの一節に
性格が悪い魔王は転生して神様になった。みたいなことを聞いたことがある。
こいつらにしてみれば俺は大魔王になったかもしれないが、。
誰かの神様になれたらそれでいいが、俺にはそんな身分似合わねーな。
これで問題解決。模範となる答えじゃないのか神様。
そうして俺は殴られた部分をさすりながら下校していった。
第一章終わり True End
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