第12話 無茶ぶり
……え?
俺はいっていることが理解できなかった。いや、意味はわかるのだが、なぜそんな意味の言葉が出てくるのがわからないといった方が正しいか。
━━可哀想ってなに!?
「まぁ、よくわかんないけどそーなのね。」
無鱒名さんが面倒臭そうな顔でいう。だが、その後すぐ真面目な顔に戻り、「でも」とつけ足す。
「それじゃあ、駄目だ。最近、君は仕事に出れなさすぎる。
「……。」
生田目さんが座った目を下へ向ける。
俺はというと、多分目をこれでもかというほど見開いていると思う。
「い、生田目さん、これ、本当ですか?」
「まぁ、本当です。でもさっきもいったけど、つっこまないでください。めんどくさいから。」
「あ、はい……」
無意識的に、制服のズボンを掴んでしまう。学ラン特有の布の感触がする。
生田目さんのことだから、気を遣っているのではなく、単純に面倒くさかっただけなのだろうが、それでも俺はどうしても、申し訳なくてしょうがない。
「少年、少女!盛り上がってるところいいかい?俺は、早く話して帰りたいのだよ。」
無鱒名さんが、いつもの飄々とした表情を装いつつも、明らかにいらだっている顔をしていう。なお、生田目さんを少女呼びなのはさっきの言葉を根に持っているのだろう。
わりとわかりやすい人だな。
「じゃあ、君には六大妖を祓ってもらう!」
━━は?
俺はさっきの「可哀想発言」の百倍くらいなにを言っているのかがわからなくなった。
霊と妖だと妖の方が圧倒的に強い。
なのに、最強の六大妖をそこらの霊すら倒せない俺に倒せと……!?
「そんなのめちゃくちゃです。」
生田目さんがいつもどおりの平坦ボイスとも、弁才天様をけなしたときと同じような、怒った声ともとれる言葉にできない声質で無鱒名さんにいう。
「いや、だって、人材が足りてないんだから、新たな人材作るしかないでしょ。」
「そんなこといったって、実くんには無理です。まず、六大妖なんてみんな目撃されたのは何十年も前のことでしょう。くる保証なんてどこにも……。」
「いや。絶対くるよ。」
そういうと、無鱒名さんは今までに見たことないほど、怖い━━人を喰う鬼のような目付きに変わった。
◻︎▪︎◻︎
その約ニヶ月後、二月十六日。俺は今日も学校にいじめられにきていた。
今は座学中、真冬の冷気に冷やされた椅子に座りながら、周囲の人間が俺の方を見ながらクスクス笑っている様子を見る。
誰も暴力や器物破損はしてこないから、いいつけはできない。全員、家の格を見て、具体的なことをしたらマズイことをわかっているのだろう。
冷たい。椅子も。身体も。心も。
ああ、ここでバーーンと凄い妖でも祓えればなぁ。身体くらいはあったまるでしょ。
そんなことを考えていたら、呼び寄せてしまったのか、━━きた。
音もたてずに、突如きた気配は、俺の耳本でささやく。女声を限界まで低く出したような声だった。
「六大妖が一人、成長で御座います。」
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