第13話 みんなこどもに

俺は見てはいけないと思いながらも、気づいたら首をその気配の方へとひねっていた。


すると、黒い髪をショートカットにした女の人が口をへの字にして、そこにいた。


おそらくわざとすけさせるタイプの服なのだろう。なかに着ている胸を隠している黒色の布が丸見えだ。それに黒色のスカートはすごく短い。かなりにぶい俺でもわかる大人っぽさかつ色っぽさだ。


えっ!?えっ!?えっ!?


俺の頭はゴチャゴチャし出す。


なんで、こんな格好した人が教室にいるの!?


なんで!?なんで!?


なんでその人が六大妖を名乗っているの!?


「聞いてるのか?誠陵。」

「あ、は、は、はい。」

「うーーん。兄貴とはあんまし似てないな。」

「あっ……!」


そういうと、その人は俺の顔に、これ以上ないほど、自分の顔を近づけ、まじまじと見てきた。俺はさらに動揺してどうしていいかわからない。


「おい!なに喋ってんだ誠りょ……おい!そこにいるのは誰だ?早く席につけ!」


座学中の先生は、クラスの誰かが歩き回っていると思ったらしい。かなり怒った口調で、そういう。俺の席は一番後ろだから、見まちがえるのも無理はない。


「ち、違うんです!先生!この人は!」


必死にこの非常事態を伝えようとするも、この人が本当に六大妖なのかもわからないので、俺はなんといっていいかわからず、とほうに暮れた。


だが、その三十秒後、その心配はなかったことがわかる。


「うるさいな。禿げ爺。」

「な、なんだお前!」


先生がかみつくようにいうも、その子はそれをも圧倒するくらいに、睨みつける。

そして、急に、なにかをいった。


春風化雨しゅんぷうかう


その途端、本当に、その途端だった。


「ママぁ!どこなのー!?」

「おれ、おなかすいた。」

「うぇーーーん。ママぁ!!」


教室中から、声が聞こえてきた。小さな子供のような声が。


「えっ!えっ!?」


俺は二度戸惑った。


一度目は、この謎の幼児のような声たちに。それと、二度目は


「声が、高い……?」


俺の声が明らかに高かったことにだ。

高いといっても、急にヘリウムのような声になったわけではない。むしろ、毎日のように聞いていた声だった。

声変わりをした、中二までは。


まさかと思い、周りを見わたしてみた。すると、一面、子供、子供、子供。

五〜六才ほどの子どもがちょうどこのクラスの人数ほどいたのだ。


「……は?」


俺はその高い声でいった。そして、自分の、のどぼとけを確認する。


━━ない。


たしかにあった、のどぼとけがなくなっているのだ。


俺は、その後はとりあえず、一目散に教室内の窓へとかけ寄り、自分の姿を確認した。


「あっ……!」


なんとそこには、約十年ほど前に鏡の中に写っていた顔があったのだ。

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