第11話 可哀想
「え?生田目愛!?ホンモノ!?」
「めっちゃ美人!肌しろーい!」
「大人っぽ!ホントに中学生……!?」
そんな女子を中心とした歓声をもろともせず、俺の席へときた生田目さんは、相変わらず座った目と平坦な声を無鱒名さんの方へ向け、いう。
「それと、ついでに無鱒名さんも。」
「愛!久しいねぇ。」
「そうですね。あなたはいつも直接合わずに電話だけで私に命令しますもんね。久しぶりに会うわけです。」
「え……?」
生田目さんは相変わらず座った目と声だが、無鱒名さんは目が泳ぎだし、声があからさまにうわずっていく。
「愛……今日はどうしちゃったのかなァ?」
あきらかに引きつった笑顔で、無鱒名さんが生田目さんに問う。
だが、それには生田目さんがほんの少し口角を上げたように見える口から、相変わらず平坦イントネーションで返答の言葉が吐かれた。
「いっつもなれなれしく愛、愛、呼んでんじゃねェよ。糞爺。」
「……は?」
生田目さんはおそらく表情筋の固まっている顔で、無鱒名さんを見上げる。
そして、肝心の無鱒名さんはというと、その引きつっているような、とってつけた笑みを顔に貼りつけたまま、固まっていた。
「愛、どうしちゃったんだよ……?お前は弁才天さん以外どうでもよかったはずだろ!?」
「は?当たり前でしょ?私は弁才天様への性欲だけで満たされているんですよ。」
生田目さんはいつもの弁才天様関連の話で時々なる、例の怖い声と顔で無鱒名さんにかみ付くようにいう。
一方、無鱒名さんはというと、そんな生田目さんはもろともせず、いつもの飄々とした調子に戻っていう。
「じゃあ、なおさらなんでなんだ?愛はこんな女顔がタイプだったり?」
「はぁ……。私が愛してるのは弁才天様だけですよ。」
「俺には充分コイツにも、とりいっているように見えるけど?理由は?」
「まぁ、たしかに少しは、とりいってはいますよ。まぁ、くだらないんですけど、理由は━━」
「ふーん。まぁどうでもいいや。でも、仕事に支障がでるのは困るよ。愛。」
さっきの飄々とした風に戻ったかと思った無鱒名さんの声は、だんだん真面目なトーンになっていき、理由を聞いてからの一言は面と向かってない俺でも感じるほど、すごい威圧感があった。
━━というか、生田目さん、俺のせいで仕事に支障出てるの?
「まぁ、実くんのせいじゃないから。気にしないでください。面倒だし。」
「やっぱりこの女顔に依存してるー!もう合わせないようにしようかな!おにーさん!」
「やめてくださいよ。さっきいったじゃないですか……」
無鱒名さんが、最後の「おにーさん」をあからさまに強調しながらいう。さっきの糞爺を気にしているのだろうか。
そんなことを心配する俺をよそに生田目さんは相変わらずの平坦ボイスでいう。
「この人は可哀想だからとりいる━━大切にしたいって。」
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外見特集第三弾書いたんで、よかったら近状ノートをご覧ください!
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