第2話 性欲の薔薇
生田目さんは、呆気に取られる俺と相変わらず恨めしそうにしている霊なんかそっちのけで、現れた黒髪のおかっぱ頭の、蜜色の目をした青色のワンピース姿の小さな女の子にかけ寄り、そして抱きしめた。
その動作の中、生田目さんは、急に満面の笑みを浮かべる。そして、異常に顔が真っ赤だ。
何かがおかしい。
なにか、言葉にはできないけど、こう、身体がゾワゾワするような異変を感じてた俺の前で唐突にその違和感が正しかったことが証明される。
何故なら━━
「ベンザイテン様、今日も好きです。愛しい。愛してますぅ。」
生きていて一度も聞いたことがないような甘い、艶やかな声で生田目さんがこう言い、頬にキスしたからだ。
俺は突然の出来事に思考が追いつかず、固まる他にやることがない。
だが、そんな俺をそっちのけでこの甘い声を使って、生田目さんはこの女の子、もとい、ベンザイテン様に抱きついたまま、聞く。
「あのぉ。あの霊祓っていいですかぁ?この人……えーとセイリョウさん?が祓って欲しいって言ってるからぁ。」
生田目さんは、あからさまに俺の名前を覚えてなかったのがバレバレだった。
だが、一応俺の意思は伝えてくれたからよかった。
「そう。
「わかりましたぁ。じゃあ行きますねぇ。」
「あと、倒す時は必ず名前を名乗りな。大切なことだからね。」
「はい〜。」とふぬけた返事をする生田目さんを見て、俺は今までの色々もあるから、すごく心配になった。だが、それも束の間。生田目さんが霊に向き合った瞬間、すぐに大丈夫だとわかった。
気の出方が並の祓い屋のそれじゃなかったからだ。
落ちこぼれの俺でもしっかりわかるのだから他とは確実に格が違う。
俺は、この気に悪寒を感じながらも母さんとの会話を思い出し始めていた。
◻︎▪︎◻︎
「
「へ?」
家の居間でだらけていた時に起こった急展開に驚く俺に母さんはいつもの笑顔は消えていた。真面目な表情で告げる。
「この人の所なら術や、気、祓い屋に必要なものが全て鍛えられるのよ。」
「どんな人なの?」
母さんは、待ってましたといわんばかりに、「あなたも聞いたことがあると思うわ。」と前置きしていう。
「私たち、祓い屋の頂点、
◻︎▪︎◻︎
霊に向かい合っている生田目さんが、いつの間にか、無表情かつ平坦なイントネーションに戻って言う。
「性欲の薔薇、
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