59回戦 合宿-11
「……」
練習を終えたボク達の前で、
その両目はにらみつけているとまでは言わないが、
あまり
「……」
ボク達もまた、うつむき加減で
と、ふいに
「……お前達は悪くない生徒だ」
「
トレーニングにしっかり付いて来る根性もあるし、
技術を吸収するスピードにも目を見張るものがあるし、
試合をするたびに工夫や改善をして強くなっているのが見ていて分かる。
と続けて再び両目を開いた。
それを聞いた何人かは、ホッとした様子だ。
少しばかり空気の
「一番良い線まで行ってたのはお前だね。
何か言うことはあるかい?」
言われた絶は、
「はい……、そうですね……」
と少し考え
「海中では水の
あとは、
もっと強くなってから、またやらせてもらいたいです」
と答える。
「……お前は何かあるかい?」
「ワタクシは、相性の悪さというものを再認識しましたわ。
海の中では火球はもちろん、
火と風属性しか使えないワタクシが海の中でモンスターと戦うとしたら、
海の外に引きずり出すような戦い方をする必要がありそうですわ」
「あ、それアタシも思いました」
と色葉選手も
「実戦だったら、前衛の
今回みたいに1人で戦うんだったら、
上半身に
と続ける。
「……お前も何かあるかい?」
「そうですね……。
絶くんも言ってた通り
自分は
『モンスターとの実戦となると練習の通りには行かないんだな』と……。
なので、もっともっと練習します」
天賀選手は言いながら
「……お前はどうだい?」
「オレは……、
まだその……、あんまりモンスターと戦ったことが無かったっつーか……」
「……いや」
と
視線をキッ!と上げて意を決したように
「正直、ビビって動けませんでした!
なので、もっと精神面を
あと弱いモンスターとかで、なんつーか経験を積んで!
そんで強くなってリベンジしたいと思っ……、思いました!」
と強い口調で言う。
「……お前は?」
「ボクは……」
ボクは、そこまで言ってからその先を言うべきか迷い、
「ボクは……」
と再び言いながらうつむき、視線を自分の足元に向ける。
だが、言わなければならない気がした。
「すみません……、ボクは
ボクは、うつむいたまま言う。
「ボクは、『これがもし、
と考えていました……」
ボクは続けた。
「!」
「ボクは家の近所に出る弱いモンスターと戦った経験があったので、
『きっと何とかできる』と戦う直前までは自信があったんです……。
でも実際は全然ダメでした……。
そしてズッコンに
『これがもし、
ボクは泣きそうになるのを、
「ボクがもし、
結果的にボクだけじゃなく、助けようとした
ボクはもしそうだったらと思うと……、とても……、
とても
そして、とても
ボクはそこまで言うと、思わず両手を
「……顔を上げな」
口元は少し笑みを
だが、
「私はね。
死体と話す
と
ビクンとボクは、思わず
自分でも考えていたことだが、他人から言われると改めて思い知った気がした。
今のボク達は、死体も同然だ。
モンスターと戦って負けたら、死ぬことだって当たり前のようにあるのだから。
「だが、お前達は
だから質問しよう。
お前達は、何となく
「(ボクは……、
いや……、ボクはプロの
ボクは、頭の中で
「あるいは、強くなってプロの
じゃあその先は?」
「(!)」
考えを読まれたような気がして、ボクは
「『生きたい』って本能がある。『生存本能』ってやつだ。
自然界で言えば、勝ち負けは生きるか死ぬか。
だから、生存本能に従えば負けたくないのが
つまり、
そこまでは当たり前のことなんだよ」
「でもね。
同じ負けでも死なないで済む負けもある。
それが『
「じゃあ問題だ。
目の前でとても強いモンスターが人を
この辺りだと例えばソウキュウが出ることがあるが、仮にそいつだとする。
そして、近くにいるのは自分だけだ。
さて、どうする?」
「……」
「海でソウキュウと戦って勝てるかい?
ズッコンとバッコンにさえ負けたのに?
じゃあ、負けて死ぬね。
何なら助けようとした人もろとも死ぬよ」
「それなら見捨てて
そうだね、それが正解さ。
今のお前達ならな」
と続け、
「だけど、プロになったらそうは行かないよ?」
と言った。
「まさか、
『自分はまだ弱いので、もっと強くなってから助けようと思ったんです』
って見捨てて亡くなった人の遺族の前で言い訳するかい?」
「つまり、お前達オタマジャクシには、プロと呼ばれるカエルになるのに
足りないものがあるんだ。
1つ、常に本気で向き合うこと。
1つ、常に最高のパフォーマンスを出すこと。
1つ、『次』なんて無いものと思うこと。
分かるかい?
『
「そして、玉木会館で口を酸っぱくして教えてることがある。
1つ、できるだけチームで行動すること。
1つ、それでも『
「プロの世界は厳しいよ?
私は、
大ケガしたり死んだりした人間をたくさん見てきた。
それでも人を助けなきゃいけないんだ」
「今のお前達は、
カエルになるなんて、プロなんて無理さ」
ボクは、厳しい現実というものを
だが、
「……でもね」
と、さらに続ける。
「最初にも言った通り、お前達には
「反省、工夫、改善。
今どきの言葉で言うならPDCAかい?大いに結構さ。
あとは本番、ここ一番で実力をきちんと発揮できるように、
常に最高のパフォーマンスが出せるように、これからしっかり
そして先へ行くんなら、プロになりたいんなら
特に1、2年生。
来年また来ることがあったら、その時にその成長ぶりを私に見せてご覧よ?
期待して待っててやるさ」
と大きくうなずいた。
「!」
ボク達も思わず笑みをこぼす。
「オラ!お前ら気をつけ!
……礼!」
美安先生が声を
「ありがとうございました!」
とボク達一同は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます