19回戦 部内対抗戦-2

 翌日の剣魔けんま部の朝練。


 ボク、たてる、絶が男子の部室に顔を出すと、

部室のかべに人だかりが出来ている。


 部内対抗たいこう戦の試合の組み合わせが、紙でり出されていたのだ。


 紙は全部で4枚。


 シングルスの2枚の紙は、

3人か4人をまとめた総当たり戦の表と、

その各試合がいつ行われるかのスケジュール一覧。


 ミックスダブルスの2枚の紙は、

ペアの組み合わせの一覧と、

その各ペアの試合がいつ行われるかのスケジュール一覧だった。




 ボクのシングルスの相手は、

3年生で部長の鬼頭先輩きとうせんぱい

2年生の申清、

1年生の陰舞かげまい

の3名だ。


 鬼頭先輩きとうせんぱいと申清は、どちらも団体戦のレギュラーで、

ボクは過去の対戦では1度も勝てたことが無い。




 ダブルスのペアのほうは、

2年生の岩舌さん、

1年生の宇目さん、

1年生のりん

との組み合わせだった。


 ダブルスの相手のほうは、

岩舌さんとのペアでやるのは、2年生の倉見と2年生の慈亜じあさんのペア。


 宇目さんとのペアでやるのは、1年生の鳥鼓とりこと1年生の茂名須もなすさんのペア。


 りんとのペアでやるのは、

これまた2年生の申清と2年生の相武さんのペアだった。


 相武さんも団体戦のレギュラーである。




 結果から言ってしまうと、

なんとボクは団体戦の補欠としてメンバーに入ることができた。


 ダブルスは全勝。


 特に、りんとのペアで、レギュラーの申清と相武さんのペアを圧倒あっとうしたのが

かなり大きかったらしい。




 絶、りんは、共に団体戦レギュラー。


 ただし、りんは基本的にシングルス専門になる形だ。


 結局、りん合体ジョイントできたのが、

ボク、絶、鬼頭先輩きとうせんぱいの3名だけだったためである。


 残念ながらたてるは、団体戦のメンバーになることはできなかった。


 と言うか、1年生で団体戦のメンバーになったのがりんだけだったので、

仕方ない部分もある。


 だがたてるは、


『3年生が引退していなくなったら、絶対レギュラー取る!』

と意気んでいたので、今から楽しみだ。




 ここからは、ボクの試合について、かいつまんで述べようと思う。


 まずは、シングルスだ。


 シングルスの最初は、いきなり部長の鬼頭先輩きとうせんぱいとの試合だった。


 鬼頭先輩きとうせんぱい聖剣せいけんは、

絶にはわずかにおよばないが長くて太い片刃かたばで、

いわゆる巨剣きょけんに分類されるタイプだ。


 戦い方も絶にけっこう近い。


 ボクは大振おおぶりをさそって、それを回避かいひしつつ攻撃こうげきする戦法で戦ったが、

前半に1ポイント取るのが精いっぱいだった。


「(ワンチャンス、

  ボクの聖剣せいけんかたさで鬼頭先輩きとうせんぱい聖剣せいけんを折れないか?)」

とも期待したのだが、そううまく行くはずもなく。


 結果は、3-1、3-0でボクのストレート負けだった。




 シングルスの次の相手は、初めて対戦する1年生の陰舞かげまいだった。


 陰舞かげまい聖剣せいけんは、普通ふつうの刀のような感じの片刃かたば聖剣せいけんで、

やや左に曲がっている。


 たてると同様、剣魔けんまを始めたばかりでほとんど素人なかれには、

ボクのフェイントを駆使くしした戦い方の相手はまだまだ厳しかったらしく、

最後までボクが試合を優位に進めた。


 結果は、3-0、3-1でボクのストレート勝ちだった。




 シングルスの最後の相手は、同じ2年生の申清だ。


 かれ聖剣せいけんは、なんとが全く無い。


 木刀を全体的に長く、

さらに太さをかなり太くしたような感じの、

真っ直ぐな聖剣せいけんだ。


 巨剣きょけんに分類されるサイズではあるが、

が全く無いということで、

ボクは一方的にかれ聖剣せいけんにシンパシーを感じている。


 申清は、身体のほうもたてるや絶よりも大きくてかなり太り気味で、

俊敏性しゅんびんせいや技術を使うよりは腕力わんりょくだけでねじせる感じの、

いわゆるパワープレイヤーである。


 かれにリーチでもパワーでもおとるボクは、

かれ聖剣せいけんを何とかガードできたとしても、

そのパワーで大きく体勢をくずされてしまってなすすべがない。


 見た目的にも、他の聖剣せいけんほど簡単には折れてくれそうになかった。


 ボクは、できるだけかれ聖剣せいけんを受けないよう、

リーチギリギリのところで大振おおぶりをさそい、

それを回避かいひして一気に接近戦に持ちむ感じの戦法で戦った。


 結果は、3-1、3-2でボクのストレート負け。


 後半にかれがバテてきて、良い勝負になりかけたのだが、

1歩およばずという感じだった。




 続いて、ダブルスである。


 最初にペアを組んだ岩舌さんは、

脇名先輩わきなせんぱいと同じく水属性が得意な魔法まほう使いだ。


 対戦相手の倉見のほうは、

先の陰舞かげまいと同様、普通ふつうの刀サイズの片刃かたばのタイプの聖剣せいけんで、

こちらはやや右に曲がっている。


 対戦相手の慈亜じあさんのほうは、

りんと同じく火属性が得意な魔法まほう使いだ。


 ウチの部の中で、

絶、りん鬼頭先輩きとうせんぱい脇名先輩わきなせんぱいのような部員達をガチ勢とするなら、

この3人はエンジョイ勢に属する部員達である。


 朝練にも顔を出していなかった。


 結果は、3-1、3-1でボクと岩舌さんのペアのストレート勝ちだった。


 ポイントはほとんどボクがうばったものだし、

失点のほうもペアの岩舌さんが回避かいひしそこねただけという感じで、

ボク的にはかなりの快勝である。




 次にペアを組んだ宇目さんは、

土属性が得意な魔法まほう使いだ。


 土属性は、合体ジョイントすると土がかたまりになって聖剣せいけんにくっつくので、

一時的とはいえ聖剣せいけんがかなり重くなるのがデメリットである。


 しかし、すっごく短い聖剣せいけんのボクの場合であれば、それほど問題にならない。


 対戦相手の鳥鼓とりこ聖剣せいけんは、

普通ふつうの刀ぐらいのサイズで、

真ん中辺りから先っちょまでだけが片刃かたばになった、

特に左右への曲がりは無い、真っ直ぐなタイプだった。


 茂名須もなすさんのほうは、

火と土属性が両方得意な魔法まほう使いと聞いていたが、

試合中に使ったのは火属性だけだった。


 その理由は4つある。


 理由の1つ目は、先ほど説明したように、

合体ジョイントすると聖剣せいけんが重くなるというデメリットがあるという点である。


 理由の2つ目は、土属性の発動というのは、

アースに手を付くようにしゃがんだ姿勢になる必要があるという点である。


 ダブルスの場合、合体ジョイントもその姿勢でやることになるので、

剣士けんしがその間は魔法まほう使いを守ってあげる必要があるわけだ。


 理由の3つ目は、土属性のたまはかなり重いので、

比較的ひかくてきおそい水属性の水球よりもさらに弾速だんそくおそく、

飛距離ひきょりも無いという点である。


 このため、土属性以外にも得意な属性がある場合は、

そっちの属性のほうが優先して使われやすいのだ。


 そして最後の最大の理由は、

1ゲーム目をボクと宇目さんのペアがうばった直後の、

2ゲーム目の1ポイント目で、

鳥鼓とりこ攻撃こうげきをボクがガードした際に、

かれ聖剣せいけんがボッキン!と折れてしまったことである。


 このため、3-1、0-0の時点で鳥鼓とりこ茂名須もなすさんのペアは棄権きけんとなり、

ボク達の勝ちで試合が終了しゅうりょうしてしまったのだ。




 最後にペアを組んだりんは、


整理ソートがまだ来ないんですの」


 だそうで、火属性のみを使っていた。


 対戦相手の申清の聖剣せいけんは、シングルスのところで述べた通りである。


 相武さんのほうは、

りんと同様に火属性が得意な魔法まほう使いだ。


 これだけ聞くと、シングルスと同様にボクが不利に聞こえるかもしれない。


 しかし、申清の聖剣せいけんは素早くるのには向かないし、

体型も相まって、

連続してたま防御ぼうぎょしたり回避かいひしたりするのは苦手なわけである。


 そこで作戦として、ボクの射聖ショットりんの火球で申清のほうを

集中してねらちすることを徹底てっていしたのだ。


 申清は、野球で言うバントのような構えをして、何とか食らいついてきたが、

ボクとりんは最終的に、かれはさちにするようなフォーメーションを組んで、

動きのにぶかれ翻弄ほんろうした。


 この作戦が功を奏し、結果は3-1、3-0と、

ボクとりんのペアが大差で勝利することができたのである。

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