1-17 決着カワイイバトル

 それからしばらくして、

「————というわけで、早乙女リコさんでーす。」

 リコが連れてこられたのは茶道部の旧部室でした。

 (は、初めて会う人……お腹痛くならないかしら。)

 そんな緊張気味の美少女を拾ってきた太介に、

「……なんでお前は犬じゃなくて女の子拾ってきてんだよ。」

 銀時がすかさずツッコみました。

「女の子だからだけど?」

「変態誘拐犯みたいな発言やめろ。」

「……最低。」

 リコが太介を白い目で見つつ彼から一歩離れました。すなわち引きました。

「いや違うぞ? 俺がカワイイと思った女子を連れてきただけであって、断じて女子おなごさらおうなどとは思っておらぬわ。」

「なんで急におじいちゃん口調? ……いや待て『早乙女』って…………まさかプランBって、噂の美少女を連れてくるってことだったのか!?」

「噂? ああそういやクラスの女子が言ってたな。でもあれはきっかけじゃあない。実は一度会ったことがあって、俺が真理愛ちゃんよりカワイイと判断したから連れてきた。」

「ちょ、ちょっと……何の話してるのよ……?」

 リコが髪をいじりながら言いました。いつもならどうでもいい奴に「かわいい」とか言われても何とも思わないのですが、今日はなぜか気恥ずかしい気がしました。もう、なんなのよ。あんま「かわいい」連呼すな。

 太介とリコもみんなと同じように机の周りに置かれた座布団に座ったところで、銀時が話を進めようとそれを真理愛に振りました。

「てか早い話、まりあちゃん的にはどうなの? カワイイマウントバトルのジャッジは。」

「そうねぇ…………」

 真理愛はリコの顔をジロジロと見つめました。

「まっ、あたしと同じくらいカワイイんじゃない? でも女の子は仕草も重要なのだ! ほらこんな風にっ! ん〜ちゅ!」

 そして彼女はウインクをしながら両手で投げキッスをしました。とってもあざとカワイイです。

「ほら、やってみて?」

「は? なんで……?」

「ごめんなさいねぇうちの自称姉が……付き合わなくていいですから……。」

 保護者ポジションに回る望愛をよそに、

「ふーん、できないんだぁ? なら私の勝ち!」

 真理愛が子どものように勝ち誇りました。

「頑張れ早乙女さん! 君の頑張りに俺たちの部室がかかっている! 絶対に勝つんだ!」

 そこに太介が謎のゲキを飛ばします。

「いやなんの勝負よ……? もう、やればいいんでしょ? やれば……。」

 リコは照れながら、

「……………ちゅ……。」

よく分からない勝負に乗ってあげました。というより乗せられました。意外と流されやすいというか、押しに弱いところもそうですが、何より『やるんじゃなかった……』とすぐに後悔して顔を赤らめるところがカワイさ増し増しですね。その様子を見た真理愛は、

「……あ、あたしよりカワイイ……だと!? 何そのカワイイ表情! ずるじゃん! チートじゃん!」

悔しさのあまり涙目で頬を膨らませました。

「わーんっ! あたしもう帰る!」

 そして泣きながら立ち上がると逃げるように部屋を出ていこうとしました。座布団に足を滑らせました。

「ぐへぇ!」

 転びました。

「もぅ〜、何やってるのよ真理愛ぁ……。」

 これには望愛も母親みたいな嘆声。まったく、そそっかしいですね。かくしてカワイイマウントバトルは太介側の勝利のようです。

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