1-5 自己紹介マーケティング

 さて、お次は生徒たちの自己紹介です。一人一人立ち上がって喋るのを繰り返しながら、テンポよく進めていきます。

 サッカー部に入りたい人、絵が描ける人、友達作りが上手い人等々、個性豊かな面子が揃っていますが、一人クセの強そうな人がいますね。ええ、彼です。

「俺は林堂太介といいます。趣味は映画はゲームとか。特技は折り紙とか。父は飴の会社やってて、うちの会社の飴を学校の友達に売り込むように言われたので、飴が欲しくなったらいつでも言ってください。手始めに皆さんの机に試供品を置かせてもらいました。ぜひ食べてください。よろしくお願いします。」

 静かだった教室がまたちょっとだけザワザワし始めてました。

「これお前が置いたやつだったのか。なんで飴が置いてあるのかと思ってびっくりしたぞ。ご実家で作ってる飴だったのか。」

 小野寺先生が教卓に2つ置かれた飴の包みのうち1つをつまみあげながら訊きました。

「そうです。」

「へ〜すごい! あ、ちゃんと先生のも2人分あるんですねぇ。私もあとでおいしく頂きますね。」

 父の言いつけの1つはこれだったんですね。生徒だけでなく購買力のある大人の先生にも営業をかけていくところは目ざといです。さすがは飴屋の息子といったところでしょうか。

 先生だけでなくクラスのみんなの反応も上々。前の席の男子が太介に話しかけてきました。

「お前面白いな。あとでもう一個くれよ。」

「いいよ。現金払いで大丈夫そ?」

「金取るのかよ。」

「なははっ、まぁまたあとでな。」

 太介は冗談混じりにそう承諾すると、表情をフラットに戻してみんなの方に向き直しました。

「あと俺は、人助けの部活を作ろうと思ってます。入りたい人はぜひ言ってください。俺がいいと思った人は俺から勧誘します。以上です。」

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