第4話
校舎は普段鍵がかけられているだから、玄関が開くはずはない。
「しかし、オートロックじゃなくてよかったなあ」
案の定しっかりと施錠されているのだが、父はお構い無く玄関のドアのぶに触れる。すると扉の向こう側に忽然と手のひらサイズほどの小人が出現した。小人というと白雪姫に出てくるようなかわいらしい生き物をイメージするが、桃志朗の目の前にいるのはどちらかというとおじさんといったほうがいい。いわゆる“小さなおじさん”だ
“小さなおじさん”はちょこちょこと床をあるいてこちらへ近づくと扉をよじのぼる。
ちょうど鍵がある付近にたどり着くと動きを止める。体を斜めに傾ける。
カチャン
“小さなおじさん”の動きに会わせるかのように鍵が開く音が聞こえた。
父が扉をを開けると同時に“小さなおじさん”はどこかへと消え去った。
「ねえ、さっきのはなに?」
桃志朗が尋ねた
「座敷童みたいなものかな。学校を守っている」
「座敷わらし? あれが?」
「座敷わらしだからって子供の姿とはかぎらないってことさ」
そういうものなのかと桃志朗は素直に納得する。
父に続いて校舎へとはいると異様なほどに殺風景に思えてならない。
しばらく廊下を進んでいると、先ほどの“小さなおじさん”が何度もこちらのほうへと視線を向けたかと思うと、背を向けて走り、
また、後ろを振り返るという動作を続けている。
「どうやら、道案内をしているらしい」
「そうなの?」
「ああ。あの子たちも気になるみたいだな。」
あの子達?
“小さなおじさん”は一人しかいないのに、ほかに誰のことなのかなと思いながらも桃志朗は父に遅れをとるまいと“小さなおじさん”を追いかけていく。
やがて理科室の前にたどり着くと“小さなおじさん”はドアに吸い込まれるように消えていった。
ほどなく、カチャンと鍵の開く音が聞こえてくる。
「親切なものだな」
そういいながら、父はためらいもなく扉を開すと理科室へ入っていく。桃志朗はそれに続いた。
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