第14話 お得意様は大事
「リリ、誰かいる」
「うん。しかも、なんか変」
「そうだね。ゆっくり近づいてみよ」
リリと意識合わせすると、気配を消しながら近づき、視界に人影が映ると木の上に飛び乗り観察を始めた。
人数は4人で、男性3人、女性1人。
格好から全員が冒険者だと分かるが、どうにもおかしい。
男性3人が女性を取り囲み、剣を向けているのだ。
更に少し離れた所には、関係している者かは分からないが4人の反応もあった。
「お前達、どういうつもりだ!!」
「へへへ。お前が邪魔なんだよ」
「ランクAもお飾りなんだろう」
「俺達のランクBが霞んじまうんだよ」
男達の話を聞き、嫌悪から寒気がした。
隣にいるリリは、女性の方をずっと見ている。
「あれ、お得意様」
「えっ?」
「いつも、ポーション買っていく」
「あっ!!確かにポーションを買っていく冒険者のお姉さんだ」
女性冒険者は、お店にポーションがあるのを驚きながらも、毎回2本買っていくお客様だ。
襲われているのがお得意様だと分かった所で、男達が一斉に女性に襲い掛かった。
「死ねーー」
「貴様達に遅れは取らん」
3人の男達が振るう剣を次々と受け流し、女性は隙を見て反撃を行なっている。
「うぁぁぁーー!!」
女性は1人の男の首を切り落とす。
私とリリは動じることなくその光景を見ている。
たくさんの魔物と戦い、時には盗賊と戦ってきたことで、何ら見慣れたものだった。
それにしても、ランクAというだけあって多勢に無勢だと思われた戦いも優勢になっている。
だが、『千里眼』スキルに少し離れた所にいた4人がこちらに向かってくる反応があった。
「リリ、来てる」
「やばかったら、加勢する」
私は静かに頷くと、いつでも戦闘に入れる準備をする。
「おらぁー、やっちまえー!!」
「なっ!?」
「悪いな。まだ人数がいるんだわ」
突如現れた4人に対し、女性は何らかの剣技を繰り出そうと構えるが、額から大量の汗を流し始め、手が震え出した。
「く、やはり、私は・・・」
「はっーはっはは!!死ねーー」
「お得意様は、大事」
「私は女性の味方」
木の上から飛び降り、地上に着地すると、リリは始めからいたランクBの冒険者2人を自慢の大剣で斬りつける。
魔物相手では直ぐに折れてしまう剣も、人間の首元を狙えばスパッと首が切り落とされる。
因みに、練習も兼ねて、リリはプラチナの大剣を相当数ストックしている。
私は後から来た4人に対し、右手を一閃して魔法を放った。
【デス・ピテイト】
闇を纏った光線が放たれると、4人の首を切り落とした。
「よし」
「終わったね」
全員倒したことを確認すると、呆然としている女性冒険者に歩いて近づいた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫だ。助けてもらってありがとう」
「お得意様だから」
「お得意様?」
女性冒険者は、首を傾げながら私とリリの顔を交互に見ると、何かに気づいたように目を見開いた。
「まさか、ポーション屋の?」
「そうです。正確には違うけど」
「そうだったのか。ポーション屋のかわいい少女達がこんなにも強いとは思わなかったぞ」
「私達は、強い」
リリは女性冒険者に向かってピースをする。
そんなリリの姿を見て笑みを浮かべる女性冒険者だったが、未だに右手を抑えて痛そうにしていた。
「右手はどうしたんですか?」
「なーに、情けない話だ。2年前、今のような輩に怪我をさせられてな、思い切り剣を握ろうとすると全身に痛みが走るのだ」
「冒険者ギルドは、やはり傍観ですか?」
「その通りだよ」
女性冒険者は悲しく微笑むと、悔しそうに唇を噛んだ。
「そういえば、名前は?私は、リリ」
「私は姉のミミです。2人は姉妹で」
「名乗ってなかったな。私はアルネだ」
「アルネ、なぜ狙われる?」
いつも通り、何も考えていないのか、もしくは相手を不快にさせない自信と才能があるのか、リリは躊躇なく聞いた。
「分からない・・・。人付き合いはしてこなかったが、誰かに恨まれるようなこともしてない。だが、襲って来た輩はいつも言っている。私が女で、高ランクなのが気に入らないと」
「そんな理由で・・・」
「アルネ、冒険者続けたい?」
「ああ、続けたい。私には、これしかないしな」
アルネさんは力強く答えた。
どんな理由で冒険者になったのかは分からないが、ここまでくるのに相当な苦労をしたはずだ。
魔物と戦い、同じ冒険者に命を狙われ、誰も助けてもらえない。
そんな中で、ランクAまで上り詰めたのだから。
私とリリは目を合わせ、頷く。
「アルネさん。今夜、お店に来て下さい」
「お店に?」
「絶対に、来る」
「ふふ。こんなにかわいい子から誘いを受けたら行くしかないな。分かったよ」
アルネさんと約束した私達は、いったんその場で別れた。
私達はこの先の山に用事があるのと、アルネさんは今回の件を騎士隊と冒険者ギルドに報告へ行くために。
冒険者ギルドに報告する理由は分からないが、一応、義務らしい。
アルネさんと別れてから直ぐにお目当ての山に到着する。
山道などない標高の高い山を、私達は普通に斜面を走りながら進むと、しばらくして山頂に着いた。
山頂は大きな噴火口となって窪んでおり、中央には白竜が体を地面にくっつけ、寝ていたた。
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