第12話 マルヴィン王国の歪み







▷▷▷▷エルマイナ◁◁◁◁






マルヴィン王国の女王、エルマイナ・イヘル・マルヴィン。





私は民のため、国がどうすれば豊かになるか、常に考え行動していた。




全てが順調であった・・・

数日前までは・・・






「エルマイナ女王陛下。商業ギルドマスター、ミライ様がお見えです」



「入れ」



「失礼します」




商業ギルドマスターのミライは、一礼し、執務室に足を踏み入れたところでしばしの間、固まった。




「気にしないで座ってくれ」


「は、はい」





ミライが固まった理由は、執務室の壁際に正座をさせられた大臣達がいるからだろう。


国の非常事態であるにも関わらず、根源はもとより、今起きていることすら分かっていない無能達だ。





「早速だが、これを見てくれ」




私は数枚の紙をミライに手渡す。

そこには、ここ先月のマルヴィン王国への来訪者、収支報告が月別、日別でまとめられている。





「や、やはり・・・」




ミライは、月別の報告を流し見し、日別の報告を見た瞬間、深刻そうな表情で呟いた。



月別の報告には、対前月比が記載されており、確かに収入が落ちているが、季節的な変化や前月に催しがあったなど、言い訳は可能な範囲だ。



だが、日別の報告の最後3日間、そこには見過ごせない明らかな変化が生じていた。



前日まで順調な推移をしていたにも関わらず、最後の3日間は対前月の同日比で50%

減となっている。







「その反応、何か知っているのか?」


「はい。推測ではありますが、あるお店が閉店した影響だと思われます」


「あるお店?ま、まさか・・・」




王都にはいくつもの店があるが、閉店することでここまで影響が出せる店はひとつしかない。





「スウィーツのマルティナです」


「な、何だと!!私は聞いてないぞ!!」


「事の大きさを鑑み、大臣様達には一報を入れましたが・・・」




ミライのその言葉に、私は正座している大臣4人を激しく睨んだ。

大臣は震え上がり、額から汗を流し、顔面が真っ青になっている。





「貴様達。スウィーツのマルティナが国に及ぼす影響が分からんのか?」


「お、お、恐れながら、繁盛店ではありますが、売上は日に700万G程であり、30%の税収は200万G程かと・・・」


「貴様、一度、死ぬか?」


「ひぃぃぃぃ」




私はミライに目配せさ、この馬鹿共への説明をお願いした。

ミライは溜息を吐いてから、説明を始めた。





「確かに、単純な売上からの税収では200万G程でしょう。ですが、スウィーツのマルティナの客層は貴族が半数を占め、近隣の街から訪れています」



「フン。貴族が買っても値段は変わらん!!」




先程とは別の予算管理を主に担っている大臣のガミルが横槍を入れるが、ミライは気にすることなく続ける。





「貴族は街で宿を取ります。それも、高級店です。一泊、最低でも20万Gでしょうか。マルティナの日の来店者数は1,000人で、半数が貴族で宿を利用した場合、2億G・・・」



「なっ・・・」



「3日で6億G、税収は1.8億Gになります。今は宿を例にしましたが、それだけではありません。レストランでの食事、雑貨屋での土産購入、波及効果はいくらでもあったのですよ」



「ぐっ、、、」





月の数字だけを安易に信じ、私の問いに一切答えられなかった愚か者でも、ようやく事の大きさが分かったようだ。




「ミライ、ご苦労であった・・・。して、スウィーツのマルティナは何故、閉店したのだ?」



「それにお答えする前にもうひとつ、気になる事があります」



「申してみよ」



「はい。他国からの速報のため、詳細は正式な連絡待ちなのですが、先程、隣国アスラーニの商業ギルドで商人2人がランクCからランクAへ2ランクアップしたと・・・」



「な、何!?」





商業ギルドは、全世界共通ルールの元、各国で管理している組織。


だが、所属する商人達は国を選べる。


だからこそ、各国共にあらゆる優遇措置を取り、秀でた商人を囲っているのだ。



我が国も万全のはずだが、ミライの話し振りからすると、ランクCからランクAへの2ランクアップという類を見ない成功を収めた商人が今回の件に関係しているのだろう。





「恐らくですが、スウィーツのマルティナの店主、ミミとリリだと思います」



「何だと!!閉店してアスラーニに移住したのか!?」



「はい・・・」




ミライは力無く言うと、握り拳を作り、悔しさを我慢した。


そんな姿を見て、そして、これまでの話を聞き、私の怒りはスウィーツのマルティナを閉店に追いやった者に向いた。



ミミとリリのことは、ミライから何度も話を聞いており、無闇矢鱈に閉店し、他国に移ることなどしないはず・・・。



ならば、必ず裏で手引きした者がいる。





「ミライ、なぜ閉店したのか・・・、誰がそう追いやったのか、分かるか?」



「これも、推測でしかありませんが、エルマイナ様の弟であられるアダミャン様かと・・・」



「はっ??」




思わず間抜けな声を上げてしまうが、ミライはミミとリリの元に罪状も発行者も書かれていない王国印が押された書状が届いたこと、以前からスウィーツのマルティナを疎ましく思っていのがアダミャンだったことを説明してくれた。





「おのれ・・・!!愚弟を今すぐに呼べ!!」









★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



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