第11話 慄く商業ギルド






初日の営業が終わると、私達はミレルさんと一緒に商業ギルドへやって来た。



いつものように埋まっている受付カウンターを素通りし、そのまま以前も案内された個室へ誘導される。




何気なく見たが、受付係は前回の男性から女性に代わっていた。

偶々お休みなのか、もしくは・・・。





「クビにしたわよ。さあ、座って」



部屋に入るなり、私の視線に気づいていたのかさらっと怖い答えを聞いた。




「当然よ。商業ギルドは、国の根幹。売上によって税金、国の資金が変わるのよ。不当に商機を逃す奴はいらないの」



「ほ、ほほう・・・」


「恐ろしいけど、正論」



「それより、大事な話をしましょう」




自ら淹れた紅茶をテーブルに運びながら、ミレルさんは話を本題に切り替えた。


恐らく、お店で言っていたランクBに関する話だろう。





「最初に来た時、魔物の素材を買取して欲しいって言ってたでしょ?」



「はい。ただ、冒険者ギルドでは色々あって登録できなかったので・・・」



「素材、宝の持ち腐れ」




ミレルさんは、リリの「宝」と言う言葉を聞き、目を輝かせる。




「商業ギルドでも、特定の条件がクリアできれば買い取れるのを知ってるかしら?」



「えっ、そうなんですか?」


「初耳」



「ふふふ。その条件をクリアするために、先日冒険者ギルドに行ってきたのよ」




そこまで話すと、ミレルさんは笑いを堪え、肩を小刻みに震わし始めた。


きっと、私が冒険者ギルドの天井を魔法でぶち抜いた話を聞いたのだろう。



けど、笑ってるってことは、怒られないよね?





「愉快だわ。ざまぁーみろよ。日頃から真面目に仕事しないからいけないのよ」



「それで、特定の条件とは?」



「ごめんなさいね。冒険者ギルドの慌てぶりが面白すぎて。そう、条件はね、冒険者ギルドが買取を拒否した場合よ」



「買取拒否?」



「そう。今更、ミミちゃんとリリちゃんを冒険者登録させるって言ってたけど、私は断られた事実を知ってたからね、それを言ってやったのよ」





ミレルさんの話では、素材買取は魔物討伐を主とする冒険者ギルドが優先権を持っているが、冒険者ギルドで買取拒否、もしくは冒険者登録を拒否された場合は、その権利が商業ギルドに移るらしい。



私とリリが魔法が使えると知り、掌を返して何とか冒険者登録させ、素材も買取したいらしいが、最初に拒否した事実は変わらない。



ミレルさんはその事実を元に買取の権利を勝ち取って来たそうだ。





「聞いたわよ。2人とも魔法が使えるんでしょ?どんな素材か楽しみだわー。早速だけど出してもらえるかしら」



「???。ここでですか?」


「部屋、崩壊」



「ああ、なるほど。この前は驚く暇もなかったけど、伝説のアイテム収納のスキルを持ってるのよね?解体はしてなくて、魔物がそのままそこに入ってるからここでは狭いのね」



「う〜ん。少し違いますね」


「半分正解、半分ハズレ」





確かに解体していない魔物もあるが、それは『鳥の唐揚げ』の材料、コカトリス(Sランク)と、『トンカツ』の材料、キングピッグ(Sランク)を狩りに行った道中で遭遇し、仕方なく討伐したもので、数は50匹ほどだ。



それより、お目当てで討伐したコカトリス(Sランク)と、キングピッグ(Sランク)の数は各々500匹程あり、肉を切り取る際に解体もしっかりと済んでいる。





「あの、倉庫みたいなところ、ありますか?」



「倉庫?そんなに数があるの?」



「はい」


「慄くといい」




ミレルさんは顎に指を当ててしばらく考え込むと、突然、立ち上がり、部屋の外に出て部下を呼ぶと何やら話している。




「えっ!!第一倉庫ですか?第一倉庫はこれから来る他国の輸入品の保管用に空けているのですが・・・」




部下の人が困惑し、声が大きくなったその部分だけが聞こえて来た。





「お待たせ。では、倉庫に行くわよ」




話を終えたミレルさんは、そう言うと私達を地下にある倉庫群に案内してくれた。


その中でも特に大きな保有量をもつ『第一倉庫』と書かれた倉庫の前で止まった。





「商業ギルドで1番大きな倉庫よ。気にすることなく、全部出してちょうだい!!」



「ここなら入るかな。分かりました。リリ、出すよ」


「了解と告げる」




私とリリは、まず次いでに討伐した魔物約50体を『亜空間収納』から取り出した。


次々と重なっていく魔物の死体にミレルさんの表情は喜びなのか、恐怖なのか、よく分からないものになっていく。




「う、嘘でしょ・・・。ビックウルフ(C)に始まり、スネークキラー(B)、キングエレファント(A)・・・。はっはははは」



「喜ぶのは、早い」


「リリ、あれは喜んでるのかな?とにかく、次、出そうか」



「へっ??次??」





私とリリは、積み上がった魔物死体の横に、解体済みのコカトリス(Sランク)とキングピッグ(Sランク)の素材を出した。





「コカトリス(Sランク)の羽と爪・・・、キングピッグ(Sランク)の皮と角・・・。全部希少品。しかも、この数は何なの・・・」




解体済みとはいえ、各々500体づつの素材により、倉庫は一気に埋まってしまった。





「ギルマス・・・、これは・・・!?」




先程、ミレルさんと話していた部下の女性が第一倉庫を訪れるなり、尻餅をついた。





「す、すごいわ、凄すぎる!!この商業ギルドの数ヶ月分の売上に匹敵するわ!!」



「ぎ、ギルマス・・・」



「全従業員を招集しなさい。今すぐにね。受付も中止、今日は営業を終了して買取金額を弾くわよ」



「は、はい!!」





その日、私とリリはいったん帰ることになり、後日、買取金額を教えてもらい、金額に応じてギルドランクも見直してもらえることになった。








★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★



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