第37話
ファヴが城壁に衝突した瞬間、
――思い切り踏ん張りながら蹴飛ばした。
そのまま空中で回転。あとは重力の赴くまま地面に向かって落ちるのだが、今度は
脇に抱えられたソフィーは大きな目を更に大きく見開き、俺を見ていた。
「お兄ちゃん、すごい……」
「ケガは無いか?」
「うん」
惚けたような顔で俺を見ているが、今は相手をしている余裕はない。フレッドを地面に下ろし、自分の体を確認。
うん、足が死ぬほど痛い。
壁を蹴った時に無理しすぎて負傷したらしい。
「ファヴ、失敗」
瓦礫の中から素っ裸になったファヴが現れる。ソフィーが「ファヴちゃん、服! 服!」と慌てていたが、ファヴは無視したまま俺に近づいてきた。
「ファヴ、アイン、服、もらった。もう無い。悲しい。ひと、滅ぼす」
「人は滅ぼすな。また飛べるか?」
「しばらく、無理……ファヴ、翼、穴、開いた。許さない。滅ぼす」
「怒ってるところ悪いが、逃げるぞ」
不意にファヴが俺の腕をつかみ、そのまま俺を投げ飛ばした。
光の弾がファヴに直撃し、瓦礫へと叩きつけられる。
「ファヴ!!」
『アイン!
ルリアの声に「
「なんだ、これ……!!」
ソフィーとフレッドが危ない。混乱しているヒマも無い。
ズキリとコメカミが痛んだ。
魔力疲れだ。魔力の枯渇が近い。俺は俺で大きな瓦礫の背後に隠れながら、ファヴのほうへと視線を向ける。ファヴの気配がない。
まさか、先ほどの光弾で死んだのか? 勇者でもいなきゃ倒せないフレイムドラゴンだぞ?
「ファヴ! 生きてるか! ファヴ!!」
叫んだところで返答は無い。
嘘だろ……。
「ファヴ!! 返事をしてくれ、ファヴ!!」
俺を庇ってくれた。
邪竜のくせに俺を――
「ファヴ!! 頼むから返事をしてくれよっ!! ファヴ!!」
「うるさいですねぇ……」
その声に視線を向ける。法衣をかけた甲冑騎士が現れた。右手には短い二股の音叉のような槍らしきモノを手にしている。
あの得物も気になるが、それ以上にあの法衣は……。
「……
どうしてグリムワに
『あれは、まさか……ヴォルフ……?』
その声に視線を向ければ、ルリアが呆然とした顔で、
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