第34話
俺は思わずフレッドに駆け寄った。ファヴに「もっと明るくしてくれ!」と頼んだら、火が大きくなる。フレッドの指は全て折られており、爪がはがされ、そのうちのいくつかは切り落とされていた。
左目には眼帯がされ、血がにじんでいる。もしかしたら、目を抉られているのかもしれない。
駆け寄って抱えながら名前を呼んでも、うわ言を繰り返すばかりだ。
「アインのことは……なにも知らな……い……」
もしかして俺のせいで巻き込まれたってことか……?
フレッドは関係ないだろ……? どうして、こんな……。
「
ケガを治す魔術を発動するが、それでは足りない。多少の沈痛効果はあったようで、表情は和らいだが、失った指も目も元には戻らない。
「おい、悪霊。フレッドの指を元に戻すにはどうしたらいい?」
『
「こいつは料理人なんだぞ!! これじゃあ、もう包丁も持てないじゃないか!!」
そんなの、あまりにも残酷だ。
『わたくしの魔術なら欠損の再生も可能ですわ。ただ、急がないと間に合いませんわね』
言いながらしゃがみこみ、俺の顔の真ん前でニコリと微笑んだ。
『
らしい、というのは
『わたくしなら、救えますわよ? ほら、急がないと』
「……
『オススメしませんわ』
「なんでだよ?」
『
「百年くらいかかるってことか?」
『それ以上かかるんじゃなくって? 仮に百年だとしても一日一秒換算で、ざっと35600秒。10刻近くかかりますわよ? 明日の朝になってしまいますわね』
そう言ってから邪悪な笑みを浮かべる。
『さあ、考えるまでもありませんわ。わたくしに、その体を差し出しなさい。あなたに代わって、フレッドもソフィーもわたくしが救ってあげますわ』
こいつ……。
人の弱みにつけこんできやがったか……。
感情的に今すぐフレッドを助けてやりたいのはやまやまだが、流されてはいけない。
「……ファヴ、フレッドを運べるか?」
「ファヴ、余裕」
「だったら運んでくれ」
『あら、この場で助けなくていいのですか?』
「フレッドも連れて逃げればいい。ここで修行は無理でも、逃げた先なら可能かもしれないだろ? それでも無理なら、お前に頼るかもしれないけど、それは今じゃない」
『二人も足手まといを連れて逃げられるとでも? 辺境とは言え、騎士団を舐めすぎですわよ?』
「うるせぇ。やってみないとわかんないだろうが」
そう言って俺は牢屋を後にし、もう一つの反応がある場所へと向かった。その間、ファヴがズリズリとフレッドを引きずっていたので、結局、俺が背負うことになった。
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