第72話

「おい、ハルキ、あいつら、何なんだ?」

「いったいどこから来たんでしょう?」

「あの男の言葉はどういう意味だ」

「どういうことか説明してください!」


「なんで俺に聞くんだよ、わかるわけないだろ、んなこと!!」

 ハルキは怒鳴りながら吐き捨てるように言い、続けて呟く。


(世界を真の姿に戻す? 真の世界ってなんだよ? どういう事だ?)

 頭の中で整理しようとしたが、考えることが多すぎてまとまらなかった。


「ま、とにかく今は、だ」

 ハルキは仲間たちの顔を見て、指示を出す。


「あ、そうだ、イッコ。証拠は出たのか?」


「ええ、ばっちりです。ファンドリールが『アブソス』組織と繋がっていた証拠は押さえました。あとは国家情報保安局に任せてください!」


 イッコは嬉しそうに言うが、ホリは諦め顔で首を振っている。


「よし、んじゃあ、アキとユウジの方はどうだったんだ?」


「ああ、私たちを襲ったのが『アブソス』だって事はわかってたからね、拠点は完全に潰したし、資金源がファンドリールだ、ってんなら壊滅だね。少しは気が晴れたよ」


「ん。まあユウジもたいしたことなくてよかったよな」


「はい。これで借りは返しましたからね、ハルキさん」


「ああ、そうだな。んで、トーコとシゲルは?」


「我々がペイドルで調べていた遺物についてはもう少し検証が必要です。ですが、『アブサス』組織の関与は確実ですね。ペイドルの地下遺跡の調査は継続しますよ。もちろん、今回の件との関連は報告させていただきます」


「そうか、わかった。ありがとな、みんな。助かったぜ。さてと、んじゃあ帰るかなあ」


「ハルキさん! ハルキさんってば、ハルキさーん!」


「なんだよ、うるせえなあ」


「なんでオレには聞かないんすか!」


「あー、もう! だってお前は俺とずっと一緒にいたろ? 何聞くんだよ」


「あ、そっか」


「あ、そっか、じゃねえよ。お前、ほんと締まらねえなあ。ああ、そうだニッタ」


「はい、なんすか? はい」


「みんなな、疲れてて喉乾いてるんだって。お前、買ってきて」


「え? 今からっすか?」


「うん、十秒で。はい、十! 九! はーち!」


「はーい!」

 そういってニッタは地下室を飛び出していった。


「んじゃあ撤収! もう疲れた! 帰るぞ、みんな!」


「いいのか?」

「それはどうでしょう」


「いいんですか?」

 ―――ハルキ


「ハルキさん、まだ説明が」

「ハルキ」


「うるせえなあ、撤収だ撤収! もうここに来ることもねえだろ。早く帰って休みたいんだよ、俺は。いろいろ考えるのは明日!」


 こうして多くの謎を残してしまう事となったが、ハルキたちは任務を終えることができた。


 ――――――


 その頃、イレイサー事務所では、ツノダが一人悩んでいた。


「まずいよなあ、勢いで指令出しちゃったけど、これ、どうしよう。上には言ってないし国家情報保安局にはもちろん言えないしなあ、あれか、またハルキが勝手に、ってそんなわけにはいかないよなあ、どうしようかなあ。アキとユウジとかトーコとシゲルまで行っちゃったもんなあ。うーん、そうだ! 良い事思いついた! ら、良かったんだけどなあ」


 プロデューサーであるツノダの苦悩は続く。

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