第58話

「良かったんっすか? 地下遺跡で」


「ああ、問題ねえ。そこにオルサスがいるなら戦う、いなけりゃファンドリールに行ってキョーカに話を聞く」


「そうなんですか? まあ俺はハルキさんについていくだけなんで、何でも大丈夫ですよ」


「覚えてるか? キョーカの時の黒髑髏」


「あのでかいやつ!」


「ああ、あの時、いつもとは違うって言ったよな?」


「はい! 覚えてないっす!」


「だよなあ。まあいいや、んでな、そもそもあの黒髑髏も普通の憑き者じゃねえからな」


「どういうことっすか?」


「お前に言ってもどうせ覚えてないだろ?」


「はい! そうっすね、はい!」


「じゃあいいんじゃないか? 言わなくて」


「なんでそんなこと言うんっすか! 聞きたい時が言い時っすよ!」


「なんだよそれ」


 そんなことを言いながら二人は地下遺跡に向かって歩き、遺跡に到着する。


「ここか? 地下遺跡」


「ハルキさん、ここ、ヤバいっすよ」


「ああ、いつもの事だけどな。んじゃあ、ここに空いた穴から奥にってちょっと待て、ニッタ」

 ハルキはニッタを止める。


「なあ、ここってジンスレールの乱の時に作られたってトーコが言ってたよな?」

「はい、そう言ってましたねえ」


「ちょっとおかしくねえか?」

「何がっすか?」


「こいつは違うぞ、ニッタ。これ見ろ」

 そう言うとハルキは壁に近づき指をさす。


 そこには何かのマークがあった。


 よく見ると蜘蛛のような形をしていた。


 ハルキはその蜘蛛を指さしながらニッタに伝える。


「こいつは古代帝国の紋章じゃねえぞ、お前、旧王国の魔獣大災害の伝説知ってる?」


「もちろんっすよ、有名な話ですからね。旧王国で起こった大事件、ただ資料なんかがほとんど残ってないので本当は自然災害だったんじゃないかって言われてますよね、オレは魔獣が大襲撃したほうがロマンがあっていいと思いますけどねえ」


「ああ、まあ伝説だな。その時の魔獣を操ったってのが実はカタデリー教団だって話も知ってるか?」


「ええ? だからカタデリーって禁教なんっすか?」


「ああ、まあその他もあるんだけどな、それはいいや。だけどな、この形、蜘蛛だよな?」


「はい、蜘蛛っすねえ」


「どういうことだ? 蜘蛛はカタデリーの崇拝する地の神の化身。んだけどここに蜘蛛の模様がある、って事はここは元々カタデリー信仰だったことになる。おかしくねえか? 古代帝国はカタデリー信仰じゃなく、今も続くオルドゥアズ教だったんじゃねえのか? どうなってんだ?」


 ハルキは腕を組み考え込み、ニッタもそれにつられて考える。


「わかんないっす」

「だよなあ。まあ今考えても仕方ねえか。そこも気になるけどな、ここ、カタデリーの奴らが狙ったって聞いたから武器庫かと思ってたけど、それも違うな」


「ええ? 違うんっすか? じゃ何を置いてたんっすか? ここ」


「ああ、武器庫に見せかけてるけどな、ここは聖櫃だ」


「聖櫃? ってなんすか?」


「ミヤモトミヤが見たいって言ってたろ? 帝都でさ」


「え? どういう事っすか?」


「あー、もう、めんどくせえなあ。ここもミヤモトミヤが見たがってた聖石の本当の置き場所だって事だよ!」


「マジっすか?! え? じゃあカタデリー教団はその聖石を狙ってたって事っすか?」


「ああ、たぶんな」


「ヤバいじゃないっすか! どうすんっすか?!」


「まあとりあえず、先に進むしかねえな、奥に祭壇があったよな? あそこに行ってみるしかないな」


 そう言うと二人は地下遺跡の奥に進んで行った。

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