第57話
「あの、お二人とも落ち着いて下さい」
トーコが割って入る。
「あのな、ハルキ。上から命令が来てる。これ以上この件に関わるな」
「は? ツノダさん、それを伝えに来たの?」
「う、うん。まあそうだけど?」
「けっ! あんた、俺が聞かないのわかってて来ただろ?」
「え? お前、聞かないの?」
「聞くわけないだろ、そんな命令」
「だよなあ」
「あんたほんとに何しに来たの?」
「え? お前を止めにだよ、ほら、こう、上に止めに行きましたっていう姿勢を見せとかなきゃだろ?」
「もういいよ、わかったわかった。聞いたよ、んじゃもう帰れ」
「よし。そうだよ、それでいいんだよ。そうやってな、上からも止められてるようなとこに行っちゃってまた問題起こしてみろ、今度こそ首だよ?」
「別にいいだろ? 俺がクビになっても誰も困らないだろ?」
「そういうことじゃないだろ? だいたいな、お前はいっつも勝手すぎるんだよ、こないだの、ほら、あれ、玉箸のときもさ、あれもなんだか、付喪神ぃ? みたいになってただろ?」
とまくし立てる。「じゃあどうすんだよ!」
「トーコとシゲルはまだ動けないだろ? こいつらも無茶するからな、お前らが替わりに地下遺跡な」
「んなっ?! ちょっと待てよ! そりゃねえだろ!」
「いいや、これは命令だ」
ツノダが真剣な顔になる。
「ちっ! わかったよ! やりゃあいいんだろ、やりゃあ! その代わりこっち片づけたらファンドリールに行くからな!」
「ああ、先に地下遺跡だ。その後の事はその後で考える!」
「先送りじゃねえか。ってまあいいか、んじゃニッタ! 行くぞ!」
「は―――い!」
ハルキはニヤリとし、ニッタと共に地下遺跡に向かった。
――――――
「はぁ、ハルキさんらしいですね」
「全く、ハルキは」
シゲルとトーコは呆れている。
「お前らはしばらく休めよ。その状態で行くのは許さん」
「はい、ありがとうございます。でもツノダさん、本当によかったんですか?」
「ん? 何が?」
「ツノダさん、今回ファンドリールには手を出すなって言ってましたよね?」
「ええ、はい。言いました」
「さっきまでハルキさんと話してたんですけど」
「はい、なんすか? はい」
「今回の件、ファンドリールと『アブソス』は繋がっていて、関わっているってハルキさんが言ってましたけど、地下遺跡の件って『アブソス』関連でしょ? それなのにハルキさん行かせちゃったら暴走しません?」
「あー! あいつ分かっててわざとやったの?」
「はい、おそらく」
「はぁ、マジかよ。ってことはあれか、もう絶対止まらないな。はぁ、また仕事が増えるのかあ」
ツノダは頭を抱える。
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