第55話

 目を開くと、見知らぬベッドの上だった。ぼんやりとした意識が次第に覚醒していく。


「こ、ここは? シゲルは!?」

 トーコは慌てて起き上がる。


 周りを見るとそこはどこかの部屋のようだった。


 そして、その部屋の中には見覚えのある人物が立っていた。


「目、覚めたか? 急に起き上がろうとするからびっくりだよ。ああ、無事だよ、シゲル」

 ハルキは驚いた様子で答える。


 そしてトーコがふと横をみると、隣のベッドではシゲルが眠っていた。


「よかった。生きてたんですね」

 トーコはホッと胸を撫で下ろす。


「夢じゃなかったんですね。あれは一体?」

 と、声を出して、首を傾げ間をおいてハルキに尋ねる。


「あの、私って、どうしてここにいるのでしょうか?」


「お前ら二人とも、遺跡の奥で倒れてたんだよ。んで、俺がここまで運んできたんだよ」


「ハルキさん、オレも運ぶの手伝ったっすよ!」


「ああ、そうそう、お前も頑張ったな。こっち終わらせて領主館まで来てみたらアルネラさんが慌ててさあ」


「ああ、ここは領主館なのですね」


「うん。あ、ニッタ。アルネラさんにトーコが目を覚ましたって伝えてきてくれる?」


「はーい」

 そう言って、ニッタが部屋の外へ出ていくのを確認してハルキが言う。


「んで? お前ら、誰にやられた?」


「はい、黒いローブのオルサスと名乗る人物でした。手に紫玉の杖を持つ男です」


「なに?! くっそお、そっちが当たりだったかあ。すまねえな、そりゃあこっちの案件だわ」


「え? ハルキさんたちの?」


 そう言うとハルキはこれまでの経緯をトーコに聞かせた。


「そうなんですね。ハルキさん、実は」


「トーコ」

 と、いつの間にか目を覚ましたシゲルがトーコに声をかける。


「シゲル! よかった、目を覚ましたんですね!」


「ああ、心配をかけた。大丈夫だ」

 そう言いながら、上半身を起こす。


「お前の姿見たの、ほんっと久しぶりなんだけど」

「うるさい」


「なんだよ、お前、助けてやったのに、なんだあその態度は。おっさんが人見知りとかシャレになんねえぞ」

「うるさい」


「まあまあ、落ち着いてください」

 と、トーコが割って入る。


「んで?」


「あ、はい。これはツノダさんには口止めをされている話ですが」

 そこまで話すとまたシゲルがトーコを止めようとする。


「シゲル、ここまで来たらハルキさんに話さない訳にはいかないわ。ハルキさん、私達バディが追っていたのはアキとユウジを襲った組織なんです」


「ほー、やっぱそうなのか。まあそうだろうと思ってたけどな。んで?」


「組織の名は『アブソス』、黒いローブと古代文字の刺繍、腕に蜘蛛の紋章をつけています」


「古代文字の刺繍だと?!」


「はい。ですからツノダさんはハルキさんには話さなかったのだと思います。すみません、黙っていて」

 と頭を下げた。


「んじゃあ何か? ファンドリールとそのアブソスは繋がってんのか?!」

「恐らくは」


「まじかよ、その情報どこで手に入れた?」

「私たちはシゲルと二人でアキとユウジが襲われた事件を追っていたんです。その過程でファンドリールとの繋がりが見えてきました」


「おい、待て。そりゃあマジなのか?」

「はい。それで、私たちが調査している最中にペイドルの地下遺跡の情報を入手したのです」

「なるほど、そういうことか」

 ハルキは顎に手を当て考え込む。


「あの、ハルキさん、お願いがあるんですけど」


「どうした? トーコ」


「私達に力を貸してくれませんか? 私達はこれからもう一度、地下遺跡に行くつもりです。そこで、その、もしよろしかったらハルキさんも一緒に来てもらえないかと思って」


「は?! 何言っている、トーコ」

 と、シゲルが横から口をだす。


「まあそう言うな、シゲル、だいぶ繋がったぞ。いいか、ここまで起こった事を整理するとな」

 ハルキは話始める。

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