第43話
「よかったんすか? 屋敷の地下に行かなくて」
ニッタが心配そうな声を上げる。
「いいんだよ。今はそれより大事な事があるしな。それにな、お前が調べてる遺体消失を先に片付けときたいだろ?」
ハルキはそう言うと、ニッタに向かって
「な、そうだろ?」
と言って笑みを浮かべた。
「確かにそっちの方が大事かもしれないっすねぇ、ってなんかわかったんすか?」
ニッタは腕を組んで考え込むように俯いた。
「いや、それがなぁ。まだ全然」
「えぇー! ハルキさん、それまじっすか!?」
「いや、でも、なんとなく目星はついてるんだけどよ」
「ほんとっすか?」
「いや、だが遺体消失はきっとオルサスが絡んでる。あの黒フード、目撃者は商人って言ったんだよな? んじゃあ行先はってことだよな」
「あー! どういう事っすか?」
「なんだよ、あのな、商人って事はだよ、誰かと商いをしてるっぽいからそう思ったんだろ? この町に道具屋は一軒しかないんだよ、あの道具屋の親父、なんとかだあ、とか言いながら話はぐらかしやがって」
ハルキはそう言って舌打ちをする。
そしてそのまま道具屋へと向かい道具屋の扉を勢いよく開け店主の前まで行くと足を止める。
店主は顔を上げ
「お客さんかい? 悪いね。今日はもう店じまいなんだぁ」
と言いかけたところで、目の前に立つ男の顔を見てハッとした顔で立ち上がる。
「お、おおお、あんた! この間来た……」
「おう、久しぶりだな。ちょっと聞きたいことがあるんだけどよ」
「ああ、なんだぁ」
「おっさん、あんた、あの新しい魔道具、誰に売った?」
ハルキはそう言って睨みつけた。
「そ、そりゃあ」
と口ごもる。ニッタはその様子をじっと見つめている。
「関係ないとは言わさねえぞ、親父。この町であの魔道農機具買っていった家の遺体が消失してんだろ? 怪しいのはあんただけだぜ。まあ、まさかあんたが関わってるとは思わねえけどよぉ。どうなんだ?」
道具屋の親父は諦めたように話始める。
「知ってること全部話すよ。だから頼む。おれぁ本当になんも知らねえんだよぉ」
という言葉に、ハルキはにやりと笑みを浮かべ
「もちろんだ。俺達に任せとけ」
と言った。
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「ふぅ。んじゃあその男はファンドリールの証明書を持ってたんだな?」
「あ、ああ。間違いない。商人なら当然のことだが、商売をする時は必ず身分証を見せるんだぁ。その時にファンドリールの証明書を見せてきたんだぁ。まあ確かにそんな名前のやつは聞いたことがなかったんだけどなぁ。だけどファンドリールともなれば信用しないわけにはいかねえ。ファンドリールの商品を扱ってるのはこの辺りじゃうちだけなんだぁ。それに、その魔道農機具は間違いなく本物だったしよぉ」
道具屋の親父はそう言ってハルキの目を見た。
道具屋の親父が語るには、魔道農機具を買った家は全部で七つ。そのうち五つは町の有力者だった。
そのうちの四つの家に黒いフードを被った男が出入りしていた。
その男は、町の西にある山の麓にある小屋で寝泊まりしていたという。
「そういえばその山の麓に、小屋があったな」
「小屋っていうか、納屋っすね。確かにあったっす」
「そこに行こう。もしかしたら何かあるかもしれん」
「了解っす」
二人は早速、山へと向かった。
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