LIVING BY NECK HUNTING sidestory 未完成のラニアガス

SEN

LIVING BY NECK HUNTING sidestory 未完成のラニアガス

LIVING BY NECK HUNTING sidestory 未完成のラニアガス

台本:SEN  男1:不問1 所要時間約40分




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登場人物



ラニス(男・14歳/34歳)

奴隷市で働く奴隷。生まれた時から腕に力が入らず痩せ細り力も無い。世の全てを呪い生きているがエンスに会い運命が変わる。


エンス(?歳・不明)

自称【古の魔女】自称女。華奢な体付き、身振り素振りも異様。人を真似たような喋り方をする。ラニスに目を付ける。






本編↓





ラニスN

僕は、どうして産まれた······


どうして産まれたんだろう···


使えない両手をひきずりながら···賑わう街を、路地裏から眺める


立つ力も無い······路地裏で這いずりまわり···残飯を漁りながら何故か生きている


誰にも愛されず···嫌われ···ただ死ぬのを待つ······近くに居たはずの弟はどこに···いや、弟なのかもわからない···どこかで死んだのかな···僕もいずれ······嫌だ······生きたい···でも


なんの為に···人の為に?苦しむ為に?···嫌だ、死にたい···けど······死ねない


人と話すのは苦ではない、むしろ好きなのに…好きなはずなのに···人の放つ気配が嫌だ···棘があって嫌······優しく寄り添って来るのは必ず裏があった······どこにいてもそうだ



助けてやると近づくと拘束され売られる···

奴隷と扱われ蔑まれ、見下され辱めを受ける


人の殺気が嫌だ……人の放つ気配が嫌だ


僕はもっと······愛されたかった…愛が欲しかった···このまま死ぬのかな


神様は何て無情なんだろう


元々神様何ていないからこうなるのかな


憎い···人が······神が······この世界が···憎い





◆SEヒールの音が近づいて目の前で止まる


エンス

「ねぇ坊や、世界が憎い?」


ラニス

「……憎い」


エンス

「生まれ変わりたい?」


ラニス

「……うん」


エンス

「その為には死すら、問わないかしら?」


ラニス

「……産まれた時から······僕はいない···死はもうすぐ傍まで···来てる」


エンス

「気に入ったわ……もっと詳しくお話しましょう?」


ラニス

「行けない…僕……ここの、奴隷」


エンス

「こんなチンケな店の?」


ラニス

「残飯処理係」


エンス

「あら、なら買うわ?あなたいくらなの?」


ラニス

「5」


エンス

「5?5レル?そんなに安いの?」


ラニス

「シン」


エンス

「5シン?······ホグ1個と同価値か······人間の価値がわかってないわね。交渉してくるわ。待ってて」


ラニス

「……」



●間3拍



エンス

「交渉成立。死にかけのドブネジミを買うのかって、言われちゃったわ?」


ラニス

「…似たようなものだから」


エンス

「恥やプライドは全く無いのね」


ラニス

「ある…わけがない」


エンス

「その腕······腐ってるみたいだけど」


ラニス

「物心ついたころから役にたたない…だから切り落とそうとして······こうなった。もう痛覚も無い」


エンス

「なるほどね…それもあなたの個性だとは思わなかった?」


ラニス

「?······思わなかった…皆と違うと嫌われた……役立たずと家族から···雇い主から···ご主人様から···追い出され続けてきた」


エンス

「そう。生まれはどこなの?この大陸でしょ?」


ラニス

「わからない…たぶん···この大陸」


エンス

「そうなのね……まぁどこでもいいわ。アナタを買ったのは私。もうアナタは私の物よ」


ラニス

「奴隷として?」


エンス

「違うわ……その身体で更によかったとまで思ったわ」


ラニス

「この身体で···良かった?……異質者が好きなの?」


エンス

「アナタの様な子は生まれてすぐに殺されるか溺愛されて世に出てこないかのどちらかだから。······あなたで······試したいことがあるの」


ラニス

「試す?」


エンス

「私はこの世界を変えたいと思う者よ」


ラニス

「?」


エンス

「この世界は嘘に囲まれている……あなた、あの雲と風の壁の向こうがどうなってるか知ってる?」


ラニス

「何もないよ……ずっと雲と風があるだけ」


エンス

「そう思う?誰か行ったのかしら?」


ラニス

「ううん……僕がそう思うだけ···だって···あんな壁は人には作れないもの」


エンス

「私はその向こう側を知っているわ」


ラニス

「嘘」


エンス

「嘘かもね?でも本当かもしれないわよね?」


ラニス

「……何が言いたいの?···僕をどうしたいの」


エンス

「アナタの命を頂戴。向こう側に対抗できる力を生み出したいの…このフリューガスの舟は護らなきゃいけない。その手伝いをしてほしいのよ」


ラニス

「舟?向こう···側?この僕に?こんな僕に······どうやって」


エンス

「うふふっ……とりあえずあなた、お腹すいてるでしょ?何か食べたいものはある?」


ラニス

「っ!?……何でもいいの?」


エンス

「ええ、好きな物食べさせてあげるわ」


ラニス

「ホグの丸焼きが食べたい……一度でいいから」


エンス

「……そんなものでいいの?ついてらっしゃい、私の屋敷に案内するわ」


ラニス

「······うん!」



●間5拍



エンス

「ここよ、入って」


ラニス

「うわ······お姉さん······貴族ですか?こんなに従者も居る」


エンス

「そう見える?ありがと。シェフ、ホグの丸焼きをこの子に。あとは······手の治療と着替えね」


ラニス

「え······あ···ちょっ」


エンス

「綺麗にして頂戴」


ラニス

「あ······え······はぃ」



●間5拍



ラニス

「あの………どうでしょうか」


エンス

「いいわね!見れるようになったじゃない」


ラニス

「そう…ですか······綺麗な服を···ありがとうございます」


エンス

「あぁ…まぁその腕は治らないわよね。腐ってるものね」


ラニス

「……はい」


エンス

「それも治せると言ったら驚くかしら?」


ラニス

「…そんな事…できるわけがない」


エンス

「再生力の向上と反射神経の向上…力の向上が全て叶う魔法みたいな物があれば欲しい?」


ラニス

「それこそ神様ですよそれは…絶対できない……そんな魔法みたいな」


エンス

「私はその研究を続けているの……この世界にしか無い物をいくつも発見したから。アナタには被験者になってもらうわ」


ラニス

「……被験者······わかりました。どうせもぅ···死んでるような毎日ですから…構いません」


エンス

「ありがとう。まぁ断っても強行するけどね?アナタは私の奴隷なのだから」


ラニス

「…はい」


エンス

「今日は十分に睡眠を取って頂戴。明日から、寝れると思わない方がいいから。じゃ」


ラニス

「……はい」


◆SE扉閉まる


ラニス

「……なんだろ······毒薬の実験かな……明日死ぬのかな………怖いな」


ラニスN

その夜、僕はふかふかのベッドに横になれたのにも関わらず···寝れなかった



◆SE朝


エンス

「おはよう。よく寝れた?朝食は済ませたのかしら?」


ラニス

「はい、いただきました。あと···寝れませんでした」


エンス

「結構。……そういえば名前聞いてなかったわね?あるの?」


ラニス

「ありません…奴隷と呼ばれておりました」


エンス

「そぅ……では……···ラニス…これからはそう名乗りなさい。今日から生まれ変わるのよ、アナタは」


ラニス

「ラニ……ス……」


エンス

「そぅ。では……ラニス。これを食べて頂戴」


ラニス

「……」


エンス

「大丈夫。死にはしないわ……死にはしないだけ」


ラニス

「……はい。いただきます」


エンス

「残さず全て飲み込むこと、いいわね」


ラニス

「はい……はぐっ」


◆SE何度も噛む→無理やり飲み込む


ラニス

「んぐっ」


エンス

「偉いわ。アナタ、凄い覚悟ね」


ラニス

「……あ……身体が熱い……なんだこれ…うぅぅうぁぁ!?」


エンス

「……」


ラニス

「ぐぅぅぅぅうううううううぁぁあぁぁぁぁあああああああ゛!!」


エンス

「凄い熱量ね……血が沸騰してるのかしら」


ラニス

「ぐぁぁぁぁぁぁぁあああああああ゛!!!」


◆SE倒れる


エンス

「あら…ダメかしら?」



ラニスN

何だこれ何だこれ!?……身体が熱い、熱い、熱い!?全身火に焼かれているようだ!痛い痛い痛い痛い痛いぃ!!意識が保てない…助けて!誰か!!助けて!!!


……助けて…母……さん



◆SE倒れる



エンス

「気絶したか……まぁ……起こすけど、ね!」


◆SE蹴る


ラニス

「ごほぉっ!?…ゴホッゴホッ……うぅぅ···ぐっ!?ぐぅぁぁぁあああああ゛っ!!?」


エンス

「気絶しても無駄よ?何度も繰り返すからね?気絶したら蹴り起こすからね?耐えなさい」


ラニス

「ぃぃぎぎぎぃ……ぐぁぁぁぁあああああ゛!!!」


エンス

「……おかしい···おかしいおかしい。何かが足りない……何が足りない?材料は全て揃っている。世界樹の根、火竜の心臓、百年花、火の氷、魔族の涙、ヤマギの実!これだけ揃えば間違いないはずだわ!?何が足りないの?何?また実験は失敗なの?!」


ラニス

「いいいいぃぃぃ······ぁぁぁあああああ゛!!」


エンス

「わからない!わからないわラニス!痛がってるだけじゃ何もわからない!教えて?ねえ?何が足りないの?」


ラニス

「っぐごはぁっ…ごほぉっ、ごぼっげぼぉっげほっ」


エンス

「まぁまぁ!今朝食べた物全て出たわね!でも関係ないのよそんな事!!アナタは何を望むの?何が嫌?嫌な事を跳ねのけれる力?」


ラニス

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」


エンス

「耐えれない?やめる?苦しい?もぅ死ぬ?死にたい?自害する?それとも殺してあげようか?」


ラニス

「こわ…い……」


エンス

「ん?なに?怖い?」


ラニス

「あなたも……人も……人の考えてる事が…ごほっごほっ」


エンス

「そう……じゃぁそれを退ける力を得る事ね。そうでないと…このままだと死ぬわ?いえ…私が殺す」


ラニス

「っ!?……っぐぐっ」


エンス

「お?……そうか…そうよ!あなたの欲望を望むのよ!その実は望みを叶えてくれる物なんだから!」


ラニス

「ぅぅぅうう!!」


エンス

「良いわ…良い!そのまま望み続けて!?種の力に!」


ラニス

「力……ちから……チカラ」


エンス

「死にたくなければ力を得るのよ。ラニス」


ラニス

「……ぅぅぅぅぅうぁあ゛あああああああああああああああああ゛っ!!!」


◆SE倒れる


エンス

「………あら………また気絶したのかしら」


ラニス

「……」


エンス

「ん?あれ?…なんだ、起きてるじゃない」


ラニス

「……」


エンス

「ラニス?ほれ、おい!大丈夫?痛みは?」


ラニス

「………無い」


エンス

「あら……もしかして…取り入れたの?力を……」


ラニス

「わからない」


エンス

「……吐き気は?痛みは?無いの?」


ラニス

「無い……ねぇ…これ」


エンス

「っ!?……あなた…腕が…再生してきてるじゃないの」


ラニス

「……うん·····これが……力なの?」


エンス

「そうよ。見事取り入れたのね……他には?何か変わったことはない?力は?」


ラニス

「今は…特に」


エンス

「そうね…完全に再生しきってから試すとしようかしら……体調の方はどう?」


ラニス

「……気持ちが悪い」


エンス

「そう、水を持ってくるわ…待ってて」



◆SEドアが閉まる



ラニス

「………これが…チカラ?……気持ち悪いだけじゃないか」


◆SEドア開く


エンス

「お待たせ……逃げなかったのね?はい、水」


ラニス

「ありがとうございます………助けてくれたのに……逃げるわけがないです」


エンス

「……良い子ね……さて、無事に種を取り込めたあなたから聞きたいことはあるかしら?質問、何でも受け付けるわよ」


ラニス

「うん……えっと……その···僕が呑んだ種とは…何なのですか?僕が呑み込んだ」


エンス

「簡単に言えば……色々な物を交えて作った物、かしら?古の秘薬よ」


ラニス

「古の秘薬······この腕を治したのも」


エンス

「そう···種の力。···試しにそこの水が入ったコップ。持ってみなさい?握力が少ししか無かったアナタでも持てるはずよ」


ラニス

「っ!?······はい······ぅ、ぐっ···」


◆SE落とし割れて水がこぼれる


エンス

「······何故なの」


ラニス

「握力の回復は······ん……ダメみたい···です」


エンス

「······そこまでは再生しない、と言う事ね······まだまだ未完成かもしれないわね」


ラニス

「腕が治らないのは生まれつきだから···かもしれません」


エンス

「なるほどね···あなたから教わるとはね。他には?」


ラニス

「······こんな僕に···その······何を護れと言うのですか?」


エンス

「そうねぇ······その様子じゃあ、何も護れないかもしれないわね。実験は失敗だわ」


ラニス

「え?」


エンス

「いらない。死んでちょうだい?」


ラニス

「っ!?」



◆SE手刀



ラニスN

·········あれ······なんだこれ···凄くゆっくりだ···いきなり攻撃してきた?……でもそんな遅い攻撃じゃぁ……


◆SE避ける→風が起きる


エンス

「······は?……え?あれ?避けた?あなた今の避けたの?」


ラニス

「あ······はい。凄く遅かったので」


エンス

「······多分だけどね?人には見えないぐらいの速さだった···ハズだけど」


ラニス

「いえ?凄く遅かったです」


エンス

「······実験していい?もう一度···ね?」


ラニス

「はい」


エンス

「もう一度アナタの心臓を一突きしようとするわ。人の条件反射ではまず追いきれず避けれないハズだわ」


ラニス

「はい···どうぞ」


エンス

「良い覚悟ね」


◆SEビキビキと筋肉が鳴る


エンス

「ッ!!!」


◆SE手刀



ラニスN

まただ······凄く鈍い······避けてくださいと言われてバカにされてるみたいだ······この手刀をこの手で払って返せないかな······こう···こうかな?


◆SE避け→体が地面に叩きつけられる


エンス

「っ!!?」


ラニス

「わ········ごめんなさい」


エンス

「·········私を投げ床に倒すとは……何年振りかしら?私に攻撃できた者は。……ふぅ…理解したわ。アナタはその力を得たのね」


ラニス

「?」


エンス

「言葉にするのは難しいけど……カッコよく言うなら?【絶対回避】ね」


ラニス

「絶対······回避」


エンス

「人の殺気や気配に対してのみ働き自分の身が危うくなると力を出すのよ。私の手刀が鈍く感じたのよね?」


ラニス

「はい···バカにされてるみたいな動きでした…すいません」


エンス

「フフフッ······バカになどしていないわ。だって本気でアナタを殺すつもりだったもの。用済みだから」


ラニス

「そんな······それはあまりに」


エンス

「でも気が変わったわ。アナタは私に相応しい。······ウフフフフッ……まだ力が隠れているかもしれないわね……色々実験するわ」


ラニス(徐々に泣き出す)

「じゃぁ……僕を……殺しませんか?…捨てたりしませんか?」


エンス

「しないわよ!あなたは私にとって大事な右腕になる…私の傍から離れないこと!私の命令は絶対よ。良いわね?」


ラニス

「………はい……ありがとうござい……ます」


エンス

「今日はもぅ休みなさい。また身体に異変があればすぐに教えて」


ラニス

「…はい…ありがとうございます」


エンス

「じゃぁ」


◆SEドア開け閉める


エンス

「材料はもう一つ隠してたけど……憎まないでね、ラニス」



●間5拍



ラニスN(大人ラニス)

あれから二十年が過ぎた。僕はずっとエンス様の傍に居た…ずっと傍に居た。何年も何十年も……この狭い世界の歴史から知られていない外の世界の話まで全て話してくれた。


エンス様はずっと研究を続けていたラニアガスの種…僕が食べたアレだ。あの種を受け継ぎし担い手を探しに旅に出た。僕はとても楽しかった…でも…徐々に…エンス様が弱々しくなっていくのが解った……魔力が弱まり世界が終わる時が来ると、ずっと仰っていた。


エンス

「ラニス……もぅ時間がないわ………終焉が迫っている。私は最後、全ての魔力を使い一時だけど時間を止める。選ばれし者の死者以外の人間を一時消す…。この大陸の覇者となったミアナに託す。世界に種は撒いた……後は開花と血の宿命を待つだけだわ」


ラニス

「はい……では私はエンス様が力を使った後、その覇者を護ればよろしいでしょうか」


エンス

「えぇ……すぐに攻め入られるでしょうからね……頼むわね、ラニス」


ラニス

「はい!エンス様の願い…必ずや」


エンス

「そうだ……あなたにコレを……似合うと思うの」


ラニス

「……これは」


エンス

「ちょっと白すぎたかしらね……私とお揃いだけど……嫌かしら?」


ラニス

「いえ!!とても嬉しいです!ありがとうございます…大切にします」


エンス

「そう、良かった。あ、でもいい事?汚されても怒らないこと…ウフフッ…ラニスは怒ると手がつけられなくなるから」


ラニス

「大丈夫です……こんな大事な時に怒ってなんかいれませんから!」


エンス

「どうかしら……さて………そろそろねぇ……私も」


ラニス

「エンス様……どうか……戻ってきてください」


エンス

「保障はできないわ…あの子達にかかっているわね……か弱き人間に託すのは……今更だけど気が引けるわ」


ラニス

「僕も居ます…必ず」


エンス

「えぇ……じゃぁ………またねラニス……路地裏の少年よ」


ラニス

「っ!?」


エンス

「最後の贈り物よ……アナタの弟に会わせる…時間があまりないから……思いを伝えておきなさい」


ラニス

「……お…とう…と?」


エンス

「ひと時でも……少しの幸福を」


ラニス

「エンス様っ!!!」



◆SE光のオーラ



●間5拍



ラニス(徐々に号泣)

「…………………ア……アガ…ス……ぅ……うぅぅ……ぅぅぅぁぁぁ…ぅぅぅううあああああああああああっ!!!あぁぁぁああああああああああああああ」






























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