第33話 クラウスルート 初恋 ※クラウス視点

 俺はクラウス・デアーグ。デアーグ家の長男として生まれ、騎士になるために育てられた。


 父が騎士団団長っていうのもあり、代々騎士家系のデアーグ家にはそれが当たり前だった。


 毎日朝から晩まで剣と魔法の特訓で将来は国王の護衛をするのが必然的に夢となる。


 レオン殿下とは貴族会に参加することもある我が家は関わりはあった。しかし、ライバルのマートン家の長男の方が同い年で学園の同級生でもあるため、レオン殿下の学園内護衛役として入学時から決まっていた。


 父に言われた時に俺は1日寝込んだぐらい悔しかった。


 父からは守りたいと思うものが、自ずとできるまで己を鍛えろと言われた。だが、殿下のためにここまで頑張ってきた俺の短いが長いような日々が一気に崩れる。


 そんな中やる気もなく魔法学園の中等部に入学した俺は努力の結果もありAクラスになった。


 Aクラスはレオン殿下の婚約者であるマリアなどの知り合いや、数々の名高い貴族家の子供達と同じクラスになった。


 初等部から見慣れたばかりの顔が集まった教室で、また楽しくもない中等部が始まろうとしていた。



「えっと……はじめまして、カイト・マーブルと言います。実家はマーブル商会という商会をやってますので小さい頃からお店の手伝いをしていました――」


 俺は編入してきたカイトの顔を見て、すぐに興味が湧いた。窓側にいたカイトを見た瞬間に心の奥底から何かが溢れ出るようだ。


 小柄でどことなくお淑やかな姿は、窓から入る光で、色素が薄い髪の毛はとても輝いている。

 

 いつのまにかめんどくさいと思っていた気持ちは晴れ、俺の頭の中はカイトでいっぱいになっていた。


 これが俺の初恋となるカイトの出会いだった。


 それからカイトとは仲良くなり、性格を知っていくと性格と容姿のギャップが強くなった。


 見た目は男の中で見たこともないほど美しいのに、普段はモブ・・という聞いたことないものになっているらしい。


 次第にこの気持ちが何かわからないが、必死に押し殺していた。俺はレオン殿下の騎士になる男。そう言って育てられてきたのだ。


 だが、気持ちの変化は遠足で変わった。





 遠足に同行していた騎士団の父の仕事ぶりを見る機会があったため、父に付き添っていた。魔物から生徒を護衛する役目として来ていたのだ。


「クラウスどうだ? 父さんカッコいいだろ!」


「そんなこと言わなかったからカッコいいだろうね」


 父オリーブが付近の魔物を狩っていると、担任のウィン先生が焦った顔で声をかけてきた。


「オリーブさん! 生徒が一人みつかりません!」


「その生徒は誰ですか?」


「マーブル商会のカイトくんです」


 名前を聞いた瞬間に顔から血の気が引く感覚がしてふらっとしてしまう。森の中には魔物がたくさんおり、命の危険もあるからだ。


「父さん、俺探してきます!」


 僕はすぐに駆け出そうとするが、父であるオリーブに腕を掴まれていた。


「待て!」


「ですが――」


「お前が一人で行ってもどうしようもない。むしろお前一人で動いても邪魔だ!」


 僕はオリーブに説得されその場で崩れ落ちた。今回も何もできない自分に腹が立つ。


 自分の実力はまだ学生で、殿下の護衛が無くなったとわかってからサボっていた。


 それを知っていたからこそオリーブは俺を行かせないように止めたと後日言っていた。


 考えた俺はオリーブと一緒ならば、探しに行けると気づいた。


 必死に頼み込むと父は渋々俺の同行を認めた。

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