第34話 クラウスルート 俺の決意 ※クラウス視点

 生徒達に知られないようにウィン先生が生徒達を集め、昼食を食べている間に騎士達はカイトを探すことになった。


 俺達は父のオリーブとともに森の中を探索していた。いつでも魔物が襲ってきて良いように、手には剣を握り辺りを警戒する。


 しかし、10分また20分、さらに1時間歩いても見つからなかった。カイトどころか、捜索している人にしか会わないのだ。


 この森には高位の魔物は存在していないし、魔法で位置を惑わすような魔物はいないはずだ。


「父さん……」


 さっきまで灯っていた火は消え始め、僕は立ち止まった。もう探し始めてから2時間は経っている。心の奥でカイトは何者かに襲われていて戻れなくなったと諦めてしまう。


「クラウス諦めるな!」


「でも、もう全然みつからな――」


 弱気になっていく俺を見て、オリーブは大きく腕を上げた。


――パチン!


 頬に走る痛みが俺の脳内を揺さぶる。オリーブの大きな手が俺の頬を強く打った。


「お前はすぐに友達を諦めるのか!」


「えっ……」


 訓練最中は怖いものの直接叩いたことはなかった。いつも剣での訓練も当たる寸前で止めるし、悪いことをやっても口で怒られるだけだった。


「お前の大切な人だろ! 必死に探せ! 自身の守りたいものを守り通せ!」


「父さん」


 肩を掴む手がめり込んでいくような気がした。


「今の自分の弱さを忘れるな。お前は俺の息子だ! デアーグ家の長男だ!」


 いつも暑苦しいほど熱血な父だが、今まで見た中で一番かっこいいと思った。父はただの馬鹿ではなかった。


「俺は諦めない」


 俺の目にはまた火が再び灯る。オリーブはゆっくりと手を離し、背中を強く叩いた。


「よし、まず一回先生の元に戻って確認してから考えよう」


 俺達は一度ウィン先生の元へ戻り、何か情報がないか確認した後に再び捜索することにした。だが、状況はさらに悪くなっていた。


「ウィン先生、生徒は戻って来ましたか?」


「いえ……まだです。ほかの生徒達も戻ってない生徒がいることに気づき出して、マリアさんとフローラさんも見当たらないんです」


 生徒達は隣同士で話しガヤガヤとしている。それを皇太子であるレオンハルトが他の生徒をなだめていた。


 生徒達は自分達も魔物に襲われるかもしれないと恐怖に陥っている。


――ガサガサ!


 草をかき分ける音が聞こえ俺達は警戒した。誰も魔物が近づいてきていることに気づかなかったのだ。


 だが、現れたのはカイト達だった。


「あなた達行ってたんですか! 心配しましたよ!」


 カイトの顔を見たら、俺の中で押し殺していた気持ちが溢れ出て止まらなくなっていた。怪我はしていないが、服は切り裂かれた痕跡があった。


 きっとカイトが回復魔法をかけながら、逃げてきたのだと俺は思った。


「カイト!」


「あっ、クラウス!」


「本当に心配したんだからな!」


 俺はカイトを強く抱きしめた。もうこいつを一生離さない。


 今まで何のために生まれてきたのだろう。


 その答えがやっと見つかった。


「ごめんね」


「もう俺から一生離れるなよ。俺がお前を守るから」

 

 俺は目の前にいる愛おしい存在を守るために生まれたのだ。この日を境にこの気持ちを押さえ込まずに、カイトだけ・・を守る騎士になろうと決意した。

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