第31話 見つけられない裏攻略者 ※マリア視点

 カイトがいなくなってから、私達はカイトを探していた。


 クラウスは父の仕事ぶりを見るためにオリーブについて行き、レオンは国王の息子のため護衛に囲まれながら探すことになった。


 ここでカイトに何かあれば、レオン達も成績に関わるため、必死に探すしかないのだ。


 兄のタンジェは、発狂しながらカイトを追いかけたのか、彼もどこかへ消えてしまった。


 マーブル兄弟ってどこか頭がおかしいのだろうか。


「ほんとあの子はどこに行ったのよ」


「きっと彼なら大丈夫ですわ」


 私達は捜索せずに湖にいたが、なぜか私達の貴腐人レーダーが反応していた。正確に言えば、ただの直感だ。だから、コソッとフローラとともに抜け出してきた。


 実際に私達が知らないBLルートがあるのかも知れない。そう思うと居ても立っても居られない。


「ねぇ、あれってカイトかしら?」


「少し見てみるわ」


 遠くに人影が見えたため、花子フローラに声をかける。彼女も転生した時にスキルを手に入れており、主人公補正だからか私より有能だ。


「えっ……カイト様が逢引あいびきしているわよ!」


「えっ!?」


「しかも白髪のロン毛の超絶イケメンよ!」


 それを聞いた私は全力でカイトのところまで走った。ひょっとしたらずっと見つけられなかった推しに会えるかもしれないと思ったのだ。


「チ○ポッコン先生待ってくださいよ!」


 私は花子フローラに呼ばれていることも知らずに必死に向かった。





「はぁ……はぁ……やっと見つけたわ」


 木影で隠れて見ているとやはり彼は私が推している人物だった。

 突如、攻略掲示板に写真だけ出てきた謎のキャラクター。


 白髪で髪の毛をいつもポニーテールで結んでいるその姿に私の心は一瞬で虜になった。しかも、今はなぜか髪の毛を下ろしており、新しい一面を見ることができた。


 彼の攻略ルートは不明で、謎の白髪イケメン"シロウ"とネットでは言われていた。


「先生……走るのが――」


「静かにしなさい!」


 後から追いかけてきた花子フローラの口を押さえて、カイト達の様子を確認する。


「なんて綺麗なのよ……」


「私達ヒロインより美しいですね」


 森の光に照らされた二人はお互いに色素も薄く、白く輝いていた。どこか儚く消えていきそうな気がした。


 木漏れ日が溢れた森の中でお弁当を食べさせている姿に私達のお腹は大満足だ。


「もうお腹いっぱいね」


「ええ」


 私達は彼らに声を掛けようと立ち上がった。だが、次の瞬間衝撃で膝から崩れて落ちてしまう。


 それは推しの白髪男性がカイトにキスをしたからだ。しかも、直接唇に触れている。


「ぐふふ……初めて生で見たわ!」


「生よ! 生物なまものがここにはあるのよ!」


 私達の口からは涎が溢れ出ていた。今までイチャイチャしているところは見たことがあっても、キスまでは見たことがなかったのだ。


 推しのリアルキス。死んでも良いと思うぐらい衝撃的だった。


「うちの使用人達でもやってくれなかったチューをこの場でやるなんて……」


「チ○ポッコン先生もやらせてたんですか!?」


 どうやら私達は権力を使って同じことをしていたのだろう。


「あー、神様! この世界に転生させてくれてありがとう!」


 あまりの嬉しさに手を胸の前で組み神に祈りを捧げた。隣にいる花子フローラも同様だった。 だが、それよりも衝撃的なことが起きて、私達はぶっ飛んでしまう。


「あー、おおぉぉあああああぁぁぁ!!!!」


 カイトにディープキスをしていたのだ。赤く染まるカイトの頬と慣れない息遣いに私達は壊れてしまった。


「もうダメよ……痛みがないと失神してしまうわ。こんな機会そんなにないのよ。マリア死ぬ気で見守るのよおおぉぉーー!! 」


 私は必死に地面を叩きながら目を大きく開く。衝撃がないと本当に失神してしまいそうなのだ。


 すでに隣にいる花子フローラは倒れていた。


 私だけでもこの場で見守って戦死した彼女に伝える義務があるのだ。


「あっ……」


 そのまま必死に堪えていると、白髪男性が再びカイトの唇に指を触れる。もう一度チャンスがあると思い、目を大きく見開いた。


 だが、それを超えてしまった。


 白髪の男性はカイトの額に優しくキスをしたのだ。二人で見つめ合いながら、恥ずかしそうに微笑むカイト。その様子を見て笑う推し。


「ああああああああ! 尊い!」


 私も額にキスされたと思い、木に額を擦りつける。ああ、もうダメだ。


「生きててよかった」


 私はその場で記憶を失った。

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