第30話 優しい主従関係
僕の唇は狼男に奪われていた。次第に舌は口の中に侵入している。
「ん……ちょ……」
舌を絡ませ深く口づけをしている。初めてのキスに僕は体の力が抜けてしまう。
「はぁ……はぁ……」
「お主………やらしいな」
吐息がいやらしく吐き出される。息をするのもやっとで、体がゾクゾクとする。
ぼーっとしているからか、誰かに話しかけられている。聞いたことない声に戸惑いながらも何を言っているのか文字を頭に羅列させる。
【契約が結ばれました。今日からあなたの召喚獣となるものに名前を与えなさい】
「名前?」
確かに聞こえたのは、名前を与えるということだ。
「そうじゃ、わしに名前をくれ」
名前とは僕の初キスを奪ったこの狼男の事だろう。前世でもキスをしたことないから、好きな人とすると決めていた。
「名前ね……。んー、真っ白だし狼だから――」
「シロ以外で!」
「シロ!」
僕達は同時に答えた。狼男には何を言っていたのか聞こえていたのだろう。ジト目で僕を上から眺めている。
「えー、シロがダメなら……似たような名前にすると
狼男に逆らえなかったが、名前も出てこなかったため人の名前をつけた。どこか日本人ぽいが、本人が付けてほしいって言っているなら仕方ない。
「仕方ないな。代わりにこれをもらっていくぞ」
シロウは軽く唇に触れると、そのまま頬に両手を添える。また、キスするのかと思い、目を閉じると額に優しい感触が触れる。
「これで契約終了だ」
「えっ?」
僕は恥ずかしくなり俯く。勝手にキスされると思ってしまった。
「くくく、我の契約者は照れ屋だな」
シロウはそんな僕を見てクスクスと笑っていた。
「あまり口づけしすぎると魔力を奪ってしまう。だから、また今度してもらおうか」
召喚獣は魔力で契約しているため、体液に含まれている魔力で契約する必要があった。一般的には魔力が濃い血液を使って契約することになっているが、シロウは僕の唾液から契約した。
そもそも召喚獣の契約は、魔法陣と血液を媒介として、召喚された獣と契約する仕組みになっている。
僕はまだこの時、契約の仕組みも分からず、シロウに丸め込まれて契約することとなった。
「では、また何か必要になったら魔力を込めて私の名前を呼べばいつでも手伝い来よう」
シロウは再びジリジリと近づくと、僕の股間に優しく触れる。
「うっ」
「こっちの手伝いも大歓迎だ」
「もう!」
まだ成長途中の僕の体は反応しないが、前世の記憶で何を言いたいのかすぐにわかる。
僕がすぐにシロウを突き飛ばすと、彼は笑いながら小さく爆発する。
「えっ?」
気づいた時にはそこには誰もおらず、残されたのは中身がなくなったお弁当箱だった。
シロウはちゃっかりお弁当箱の中身を空にするまで食べて行ったのだろう。
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