第27話 筋肉のサンドイッチ ※フローラ視点

 今日の遠足は騎士が好きな私にとって大事なイベントだった。


 今もカイトとクラインニコニコとじゃれ合いながら話していたが、私の視線は彼の父親に向いていた。


「まぁ、騎士団団長ってかっこいいけど、命の危険もあるから大変だろうね」


「それが仕事だからな」


 少しずつ近づいてくる存在に私の胸の鼓動は早くなる。突然隣からの大きな笑い声で前の二人は驚いていた。


「ははは、そんなに私を褒めてくれるとは中々良いやつだな」


 私達の周囲を護衛していたのは第三騎士団団長および推しであるクラウスの父のオリーブだ。


 乙女ゲームでもこのイベントはあったが、騎士団長の顔はちゃんと描かれていなかった。推しの父親に会えるってだけで、神様に会っているようなものだ。


「やっぱ、近くで見ると大きいですね……」


 カイトはオリーブの体の大きさに驚いていた。確かに隙間から見える筋肉は隆々としている。


 クラウスは細マッチョだが、オリーブはゴリマッチョなのだ。


「騎士はみんなこんなもんさ。体だけじゃなくて下も大きいぞ! ははは!」


 オリーブの急な下ネタに、推しの父親は現実に生きている人だと認識してしまう。だがカイトには伝わってなかった。


「下?」


「おい、馬鹿親父! カイトに変なこと教えるなよ」


「同じ男だから別に良いだろ。もしかして、お前……」


 オリーブはクラウスを見てニヤニヤとしている。ああ、親子での絡み――。


――尊い


 私は全力で目の前で繰り広げられている親子劇に祈りを捧げる。


「あなた何をしてるのよ?」


「これは最強イベントです。もう死んでも良いです」


 私の脳内では親子筋肉が戯れている状態だ。ぜひ、カイトには筋肉と筋肉のサンドイッチをしてもらいたい。


「これはもうダメな状態ね」


 チ○ポッコン先生マリアはどこかため息をついていた。きっとあなたも推しのレオンの絡みを見たら、脳汁が溢れ出るだろう。


「違う、カイトとは友達だ!」


 一方、クラウスはオリーブにおちょくられ必死になっていた。


「友達のカイト・マーブルです。いつもクラウスくんとは仲良くさせてもらってます」


 カイトはすぐにオリーブに自己紹介をしていた。今日は彼の美形は輝きを放っていた。


「いつもクラウスと仲良くしてくれてありがとう。まだ友達・・だと思うけど仲良くしてあげてな」


 オリーブはカイトの頭を軽く撫でた。小柄なカイトは手の大きなオリーブからは撫でやすいのだろう。


「気持ちいい……」


 撫でられていたカイトは無意識にオリーブの手にスリスリしていた。どこか猫のようなカイトの姿に私とチ○ポッコン先生マリアは震えが止まらない。


「やりてー」


 オリーブはボソッとつぶやいていたが、私達には何を言ったか聞こえなかった。だが近くにいたクラウスには聞こえていたようだ。


「おい、カイト」


 クラウスはすぐにカイトの手を掴み、自分の方に引き寄せる。


 空中に残ったオリーブの手は寂しそうに戻った。


 ああ、これこそ筋肉サンドイッチだ。


「親父は早く仕事に戻れよ。団員に示しがつかないだろ」


「そうだな。じゃあ、カイトくんも遠足を楽しんで」


 そう言ってオリーブは自身の護衛ラインに戻っていった。


「まぁ、親父はあんな感じだ」


「良い人だね。でも、撫でてもらってすごく気持ちよかった」


 そんな中、カイトは若干ウットリしていた。


「花子最高ね」


「ええ、チ○ポッコン先生」


 無意識な彼は私達にとって最高なパートナーだ。腐活動が彼の存在によって高まっていく。


「いつでも俺が撫でてやるよ」


 クラウスはボソッとつぶやいた。今度は私達の耳にも聞こえた。だが、カイトには聞こえてなかった。


「ん?」


「俺がこれからもずっと撫でてやるから大丈夫だ!」


 クラウスはカイトの顔を見つめて、必死に告白のような気持ちを伝える。


「ん? 楽しみにしてるね?」


 それでも無自覚のカイトにはやっぱり伝わっていなかった。



「あなた、もうちょっと頑張らないとお父様に負けるわよ」


「うっせぇよ!」


 隣にいたチ○ポッコン先生マリアにクラウスは慰められるのだった。


 まだ目的地にもついていないのに、すでに私の心の巨根はバキバキになっていた。

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