第26話  -イベント4- 遠足

 今日はいよいよ待ちに待った王都付近への森に行く遠足の日だ。集合場所である魔法訓練場に集まっていた。


 本当にこの日を迎えるまでが大変だった……。


 兄であるタンジェが、とにかく危ないから休めと常に言い続け、最終的には部屋に監禁しようとしていた始末だ。


 ある日を境に許可がおり、なぜかダンジェ自体がニコニコしていた。無事に監禁されずに済んでよかった。


 過保護な兄に困ったものの、そんなダンジェのことは嫌いになれない。


「今日は良い遠足日和です。楽しんできてください」


 学園長の挨拶が済み、そのあと騎士団が紹介された。体は鎧に包まれているが、そこからでもわかるような逞しい体にフローラは隣で唸っていた。


「えー、紹介された第三騎士団団長オリーブ・デアーグだ! 我等第三騎士団が今回皆の遠足に協力することになった。 よろしく!」


 男性は第三騎士団の団長らしい。今回僕達のクラスを守るために配属されたらしく、挨拶をするとすぐに王都の入り口に向かった。


 王都から森まで約30分程度の距離のため、生徒が列を作り、その周りを騎士団が囲むような隊列で森に向かっていた。


「ねぇー、クラウス?」


 僕は横で一緒に歩いていたクラウスに声をかけるが、彼はどこかそわそわとしていた。


「何?」


「騎士団の団長ってなんかかっこいいよね?」


「そうか? 家ではゴロゴロしてるだけだし、すごく熱苦しいぞ?」


「ん?」


 僕はクラウスの話の意味が分からず首を傾げた。なぜかクラウスは騎士団長の存在を知っていた。


「いや、あれ俺の親父だぞ」


「えー!!」


 オリーブ・デアーグ・・・・と自己紹介をしていたが、いつもクラウスと呼んでいるため同じ姓をしていることに気づかなかった。


 きっとクラウスも成長したら、あんな姿になるのだろう。


「まぁ、実力は俺も尊敬するがあんな暑苦しいのはな……」


「大丈夫よ! 貴方も比較的熱苦しいタイプだから遺伝よ」


 その後ろを歩いていたマリアも話を聞いていた。一方、隣にいるフローラはよだれを垂れ流している。


「なんだと?」


「子供の時からそうじゃない? 5歳の顔見せの儀の時なんて女子達から引かれてたわよ?」


「うっ……」


 クラウスは何か嫌な思い出があるのだろう。その時からマリアはクラウスの存在を知っていた。


「挨拶するなり、手合わせしようって男子に言ってたのをみんな見てますからね」


 マリアが話すたびにクラウスは落ち込んでいた。小さい時から熱い性格なのは変わらないらしい。


「まぁ、あの時は親父から一番強い男になれって言われてたからさ」


 デアーグ家の教育方針なんだろう。聞いただけでも暑苦しいとマリアは言っていたが、フローラの目は輝いている。


「それで挑まれた男子から嫌われ、見ていた女子からも嫌われてたわね」


 クラウスには見えないナイフがたくさん刺さっていた。ここは友達である僕が慰めるべきだと感じる。


「でも熱い男ってかっこいいよ? それだけ熱心なんだし、僕はクラウスが好きだよ?」


 僕はすぐにフォローをすると、少しずつ顔を真っ赤に染めていた。

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