第21話 BLルートは特別仕様 ※マリア視点
授業が終わりお茶会をするためにラウンジに向かった。基本的に学園のラウンジは貴族の交流の場所として使われている。
今回お茶会イベントは本来であれば、マリア編では初の好感度を上げる、もしくは悪役令嬢の仲間を増やすイベントだ。
フローラ編、BLモブ編では本来はないイベントのため、マリアだけの独自イベントであった。
今回は私達貴腐人とカイトを中心に攻略対象者が集まったお茶会になっている。
お茶会には主人公側はカイト、フローラ、主催側に私マリア。攻略対象であるクラウスとレオンそして、レオンの護衛であるレインの計六人が集まった。
レオンに関しては私が強制的に誘い、無理やり参加させることにした。
間近で推しが絡む機会作らないとBLルートは成り立たない。
「 お茶会! お茶会!」
カイトは待ちきれないのか、足をぶらぶらさせながら待っていた。身長の低いカイトには椅子が大きめのため、足が地面に着かないのだろう。
「カイトはよくこんな話すだけの女の集まりを楽しみにできるよな」
そう言いながらも、ちゃっかりクラウスはカイトの隣に座り様子を見ていた。レオンを隣に座らせようとしたのに、先にクラウスに取られてしまった。
「くー、クラウスもっと攻めろ! いけよ!」
その結果、私の隣で
「だってみんなでお話ししながらゆっくり出来るんだよ。しかも、僕が作ったお菓子も食べてくれるって言うから楽しみで寝不足だよ」
学園に来るまで仲が良い友達もいなく、あまり外に出たことがなかったと言っていた。初めて友達と遊べることにウキウキしている姿を見てみんな魅力されている。
そんな健気なカイトを脳内で犯すのは最高です!
「前は基本商会の中で手伝いをして、兄さんが遊びに行かせないように邪魔してくるし、家族もモブなんだからひっそりしてなさいって――」
カイトの話にレオンとクラウスは首を傾げていた。親からもモブとしての英才教育をされていた。モブであるカイトはモブとしての運命に逆らえないのだろう。
「モブって、それは本当かい?」
「うん、モブはどうせ目立たないから街の中は危ないって聞いたよ? 基本は誰かと行動しないと踏み潰されちゃうんだって」
それを聞いた私達は納得した。モブだと言っていたカイトは家族に溺愛されているのだと。
カイトの見た目では誘拐もしくは強姦される可能性が高い。しかし、天然なカイトにはそのまま成長してもらおうと、配慮した家族の言い訳なんだろう。
「まぁ、それがきっかけで私達とお茶会が出来たからいいんじゃないかしら?」
「マリアありがとう」
カイトはキラキラした瞳で私をみつめていた。できればその眼差しを殿下に送って欲しい。
お茶会の前置きが長くなってしまい、早速始めることにした。
「では、改めましてこの度はマリア・カーティスがカイト様とフローラ嬢の初めての交流としてお茶会の場を設けさせて頂きました。簡単な軽食を用意したので楽しんでいってください」
「今日はカイトがクッキーを焼いてきてくださったそうです」
今度は招待された人の挨拶に移る。
「カイト・マーブルです。今日はお茶会に呼んで頂きありがとうございます。朝からクッキーを作ったので良ければ食べてください」
カイトはカバンからクッキーを取り出し、自身で毒味をした。サクッとしたクッキーの音が広がり、みんなの注目を集めていた。
「これで大丈夫かな?」
「ええ、カイト完璧よ」
これは事前に私からお茶会の習わしを教えておいた。自分が持ってきたものが、安全だと思ってもらう証拠だ。
「それにしてもなんか良い音がするクッキーだったな」
レオンもカイトが作ったクッキーが気になっているようだ。できればクッキーより作ったカイトに興味を持って欲しい。
カイトはお皿を種類毎に分けてクッキーを取り出す。
「こっちが甘いのが苦手なクラウスのためにハーブを使ったスパイシーなクッキー」
「おお、わざわざ俺のためにサンキュー」
クラウスの好感度はきっと右肩上がりだろう。
「こっちのはマリアとフローラさんのために女性向けの食べ過ぎても大丈夫なクッキー」
「まさかの私達も!?」
私達のために低カロリーなクッキーも作ってくれた。私達の
今すぐにでも嫁に送り出したい。
「それからしっとりしたクッキーとサクサクのクッキーを用意しました」
本来ゲームでは何を作るかで攻略対象者の好感度を上げる仕様になっている。しかし、カイトは全部で4種類のクッキーを用意していた。
「ほぉー、カイトって結構器用なんだな」
「小さい頃から兄さんが褒めてくれてね。家族に作ってたけど全部兄さんが食べちゃうんだ。今日も取られそうになって大変だったよ」
「そうか……」
そして、自ら話を振ったクラウスは若干落ち込んでいた。
「マリアさん聞きました?」
「ええ? 昔から兄弟愛を深めてきたそうよ」
私と
「ここにお兄さんも居たらどうなってたのかしらね」
「あー、そこを忘れていましたわ。私としたことがお兄さんを誘い忘れるなんて……」
「仕方ないですわ。むしろ、こんな間近で観察出来る機会を頂けて感謝します」
「いえいえ、これぐらいは当然のことよ」
貴腐人の中でまた友情が強くなった気がした。
そんな会話をしている中、カイトはレオンに話しかけていた。それを私は逃さない。
「殿下よければクッキー食べてください!」
カイトはレオンにクッキーを渡した。
「ありがとう」
レオンはクッキーを食べた瞬間目を大きく見開いていた。
「うまいな! こっちもしっとりとしていてカイトは料理上手なんだな」
「カイト……?」
レオンの発言にクラウスが反応した。いや、正確に言えば貴腐人も即座に反応している。
「ああ、私もせっかくだからカイトと呼ばせてもらおうかと思ってね。歳の離れた弟達より可愛いからね。ちなみに私のことも殿下じゃなくてレオンと呼んでくれ」
レオンは笑顔でカイトに呼び方を変えるように伝えた。
「良いですか?」
「おお、カイトよろしくね」
笑顔を向けられたレオンは少し顔を赤く染めていた。クラウスは不服そうであったが、嬉しそうなカイトの顔を見て黙っている。
「ぬぉ……ついに殿下がカイトと! うおおおあお!」
「チ○ポッ……マリア落ち着きなさい!」
「はぁー、クラウスさんの落ち込んだ表情でカイトさんをみつめるのも良いわ」
物語では婚約者と接して幸せを感じるはずが、攻略者同士の絡みで貴腐人達は各々幸せを感じていた。
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